Metallica - One 歌詞和訳
今回はMetallicaの名曲である“One”の歌詞の和訳を取り上げました。
“One”の和訳についてはいずれは必ずやりたいと思っていたのですよね。
ただこの曲の和訳をどうしてもしたいと思ったのは別の理由もあって、
それは日本人の間に強く存在するヘヴィメタルに対する偏見でした。
たしか日本のJ-Pop系バンドが問題のある歌詞を書いて批判を浴びたときに、
「海外のヘビメタバンドとかもっと暴力的な歌詞とか書いてるだろ」
みたいな洋楽のよの字もメタルのメの字も知らなさそうなそのグループのファンが
こうした偏見まみれの主張を垂れ流したのを見て強い怒りをおぼえたのですよね。
「メタルやヘヴィロックの歌詞は攻撃的ではあっても、
少なくとも社会への意識が皆無なペラペラな歌詞じゃないし、
社会的なテーマに向き合った歌詞がどれほどあることか、
Metallicaの“One”の歌詞でも1億回読んでから出直してこい」
と心の中で思ったものです。
それだけMetallicaの“One”という曲は
「メタルが社会的に重いテーマと向き合った」象徴とも言える曲です。
まずはその暗く、重い曲と歌詞の和訳を読んでいただきましょう。
Metallica - One (1988) [Thrash Metal / Heavy Metal]
Metallica - One 歌詞和訳
Lyrics by James Hetfield (作詞:ジェイムズ・ヘットフィールド)
I can't remember anything
何も思い出せない
Can't tell if this is true or a dream
これが現実なのか夢なのかすらもわからない
Deep down inside, I feel the scream
心の奥深くで、叫びたい衝動があるのを感じる
This terrible silence stops me
だけどおぞましい無音に襲われて声が出せない
Now that the war is through with me
俺にとって今やあの戦争は終わったものとなった
I'm waking up, I cannot see
意識は戻ったが、何も見えない
That there's not much left of me
俺にはもはや身も心もほとんど残っていない
Nothing is real but pain now
今や現実として感じられるのは痛みだけ
Hold my breath as I wish for death
死を願って自らの息を止める
Oh, please, God, wake me
ああ神よ、どうか俺を蘇らせてくれないか
Back in the womb, it's much too real
再び子宮の中に帰ったかのような感覚に覆い尽くされていく
In pumps life that I must feel
命だけは注がれているがゆえ、感覚だけはある
But can't look forward to reveal
Look to the time when I'll live
だが胎児とは違い、いつか真に生命が宿るときが来ることは全く望めない
Fed through the tube that sticks in me
体に繋がれた管から栄養だけを送られる
Just like a wartime novelty
戦争が生み落とした珍奇な存在
Tied to machines that make me be
ただ生き永らえるためだけに機械に繋がれている
Cut this life off from me
もうこの機械を外して俺から命なるものを切り離してくれないか
Hold my breath as I wish for death
もう死んでしまいたいと祈って自らの息を止める
Oh, please, God, wake me
ああ神よ、俺を目覚めさせてくれないか
Now the world is gone, I'm just one
今や俺の世界は消え失せ、俺は単なる一つの“物体”になった
Oh, God, help me
ああ神よ、俺を救ってくれ
Hold my breath as I wish for death
死ねることを願い、自らの息を止める
Oh, please, God, help me
ああ神よ、俺を救ってくれないか
Darkness imprisoning me
暗闇が俺の世界を覆い尽くし
All that I see
そこにあるのは
Absolute horror
完全なる恐怖のみ
I cannot live
生きることもできなければ
I cannot die
死ぬことすらもできない
Trapped in myself
自らという存在と
Body my holding cell
逃げられぬ独房と化した肉体に縛り付けられているだけ
Landmine has taken my sight
地雷は俺から視界を奪い
Taken my speech
言葉を奪い
Taken my hearing
聴覚を奪い
Taken my arms
両腕を奪い
Taken my legs
両脚を奪い
Taken my soul
魂すらも奪い
Left me with life in hell
命だけを残して俺を地獄へ置き去りにした
◎Metallica “One”の歌詞和訳の解説
歌詞の和訳を読めばおおよそ伝わるかとは思いますが、
これは戦争で地雷によって両腕・両脚・視覚・聴覚・言葉を全て失い、
頭と胴体だけになりながら生き永らえることになった青年の話です。
もちろんこれはメタル的な残酷描写をしたかったということではなく、
それを通じて戦争の愚かさや地雷という兵器の残虐性を訴えています。
またこの曲の歌詞にはモデルとなった作品があります。
「ジョニーは戦場に行った」(原題:Johnny Got His Gun)という反戦小説です。
1970年代に映画化されたので、それで知っている人もいると思います。
小説の概要を見ると、この曲の歌詞と共通性が多くあることがわかるかと思います。
>Just like a wartime novelty
>戦争が生み落とした珍奇な存在
ここだけは少し解説が必要だと思うので、補完的に説明しておきます。
「ジョニーは戦場に行った」の主人公は自身が頭と胴体のみの存在になった後、
モールス信号で自らの意思を担当の看護師に伝えようとします。
そこで彼が伝えたのは「俺を愚かなる戦争の産物として展示してくれ」ということでした。
この歌詞の“wartime novelty”というのはそのことを指しています。
そしてそれを拒否されると「それならもう殺してほしい」と彼は繰り返します。
>Cut this life off from me
>もうこの機械を外して俺から命なるものを切り離してくれないか
この部分はそうした彼が伝えようとしたことと繋がっています。
今回の和訳ではあえて淡々と感情のないような言葉で訳しました。
この主人公の心境を示すにはそれが最も適していると感じたからです。
この曲全体に流れている「無機的な絶望感」をぜひ感じてもらいたいです。
◎まとめ
この“One”は大きなセールスを収め多くの国で高く評価されましたが、
こうした歌詞の曲を日本で出したらまず確実に売れないでしょうね。
「エンタメにこんなクソ暗い歌詞など必要ない」と叩かれることでしょう。
しかし映画や小説がシリアスなテーマが扱われることが普通にあるのに、
どうしてロックが社会的な問題と向き合ってはいけないのでしょう。
そのくせ「どうせヘビメタとか暴力的なだけでしょ」とか思っているわけです。
そんな「日本的エンタメ」に浸かった人にもぜひこの歌詞を読んでほしいですね。
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