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【タコピーの原罪 時系列解説】ハッピー道具をSF目線で考えてみよう

どーもSFオタクです🤓
アニメ版タコピーの原罪最終話みました。
漫画の連載も毎回みてたけど面白いよね。
ちょっと語りたくなったのでガッツリ書きます。

とはいえ、子どもの貧困が!虐待が!タッセルが!などとフィクションと現実の区別がついていないような話をするのも面白くないので、タイムトラベル大好きオタクの私が本作のSF的舞台装置の肝となる「時間を戻す」道具について考察してみたいと思います。
超長文の怪文書を書こうと思うので面倒な人は結論だけでも是非。
※当然最後まで見た前提で考察するのでネタバレします。

「時間を戻す」道具

本作には時間を戻す道具が二つ登場します。

1つ目はハッピーカメラ
撮影した写真を読み込ませることでその時点の記憶を引継ぎ写真を撮影した瞬間まで戻ることができる・・・・・・・・鈍器。
ゲームエミュレータでいうところのクイックセーブ、クイックロードのような機能の道具だということが作中の描写から分かります。

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時計と比べてかなり小型

2つ目が大ハッピー時計
いつでもどこでも、つまり任意の時間と場所を設定して「時間旅行」ができる時計台。カメラとは違い行先を自由に設定できるのが便利ポイント。
ハッピー星にあるため第一話の時点で使うことはできず、タコピーの話や過去の回想にのみ登場します。

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「時間旅行」という表現から行き来が可能なのかも

物語の流れと時系列

2つの道具の機能について考察をはじめる前にまずは材料になりそうな内容を整理しましょう。

タコピー視点(ピンク矢印)で物語を図にするとこんなかんじ。

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作中で描写された情報の整理

次に物語の中で描写された情報を箇条書きにしてまとめる。

  • ハッピーカメラが持ち運び可能なサイズなのに対して大ハッピー時計は時計台のような建物で持ち運びはできない

  • カメラは撮影した瞬間にしか戻れないが、時計は任意の時間に戻ることができる

  • 時間移動をしたのはタコピーだけ(人間が使えるかは不明)

  • ハッピー道具は人間の手に委ねてはならないという掟がある

  • カメラ使用時に記憶を引き継ぐのは使用者だけ

  • 2022年にハッピー星を追放され、時計で時間移動したタコピーは2016年時点でもハッピー星に帰ることができないと言っている(未来の追放が過去にも適用されている)

  • カメラはハッピー星人のもつハッピー力        りょくでも作動できるが、力を使用したハッピー星人は消滅してしまう

  • 力を使い消滅した場合、消滅したハッピー星人に関する過去の記憶も消える(消滅すると存在しなかったことになる)

  • しかし、しずかちゃん、まりなちゃん、東君には消滅したタコピーに関する記憶が薄っすら残っていた

  • タコピー消滅後、2016年時点のまりなちゃんに残っている記憶は2022年にタコピーと過ごした未来の記憶である

太字で書いた重要そうな情報をすこしかみ砕いてみよう。

2022年にハッピー星を追放され、時計で時間移動したタコピーは2016年時点でもハッピー星に帰ることができないと言っている(未来の追放が過去にも適用されている)

つまり、ハッピー星人は人間的な時間感覚(過去から未来に進む感覚)とは別の時間感覚(精神構造)を持っている。あるいは、ハッピー星は地球の時間軸とは別の世界に存在する。

タコピー消滅後、2016年時点のまりなちゃんに残っている記憶は2022年にタコピーと過ごした未来の記憶である

つまり、通常の時間移動と異なりハッピー星人の消滅を伴う時間移動によって人間の精神(記憶)にも何らかの影響が出ている

力を使い消滅した場合、消滅したハッピー星人に関する記憶も消える(存在が消滅するとそもそも存在しなかったことになる)

逆に言うと消滅していないものは記憶に残っている

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まりなちゃんがタコピーと出会うのは2022年だが
2016年時点でタコピーのことを知ってる

カメラ・時計の機能は同じか

さて、ある程度材料は出たので考察タイムに入る。

まず考えるのは時間を戻すハッピー道具の使用時に何が起きているか。作中描写から考えられる仮説として以下の3通りで考えてみる。
①世界中(宇宙中?)の時間が戻る
②使用者が身体ごと過去に飛ぶ
③使用者の意識(記憶)を過去に飛ばす

①世界中の時間が巻き戻る

この場合、時間を巻き戻すことで死んだ人物をシンプルに生き返らせることができる。だが、タコピーが最初にカメラを使ってしずかちゃんの自殺前に戻った際のモノローグで「死者を蘇らせることはできない」とわざわざ説明されるあたり、時間が巻き戻り生き返ったのとは別の事象が起きていると見た方が自然だ。

また、時計の「時間旅行」という表現も自身が別の場所に移動するというニュアンスを含んでいる点も気になるところ。
というわけでカメラ、時計の両方とも周囲の時間を逆行させているわけではない、①は間違いだろうと推測できる。

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蘇らせることはできない、だがやり直すことはできる

②使用者の身体ごと過去に飛ぶ

元の時間軸から使用者が移動するというもの。ドラえもんのタイムマシンをイメージすると分かりやすい。①のように失った命を蘇らせるのではなく、死にたどり着かないよう過去を変えることになるためモノローグとは矛盾しないと解釈できる。
時計を使って2022年から2016年に戻った際の描写ではタコピーが他のハッピー星人達の前から消える描写があるため大ハッピー時計は恐らくこの機能をもっていると推測される。

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時計を使用したタコピーの姿が消えている

一方で、この場合タイムスリップ後に使用者の身体的なダメージも引き継がれるはずである。しかし、タコピーがしずかちゃんに代わってまりなちゃんの呼び出しに応じた際、過激な暴力をふるわれたにもかかわらず、カメラ使用後は泣いてるだけで怪我はない。
このことからカメラの機能は時計とは別のものと考えられる。

③使用者の意識(記憶)を過去に飛ばす

道具を使用した時点の意識を過去の意識に上書きするもの。身体は送られないため②のカメラ使用後に怪我がない点と矛盾しない解釈。写真撮影は受信の用意、写真読み込みで意識を転送するようなイメージ。恐らくカメラはこっちの機能を持っている。
道具を使って意識を飛ばした後の身体がどうなるかは描写されてないので考察の余地はありそうです。

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時間移動後には暴力の痕跡がない

それぞれの機能まとめ

以上からそれぞれの道具の機能は以下のように推測した。

・大ハッピー時計
使用者の身体ごと任意の時間に送り込む機能がある(タコピーのいう「時間旅行」)

・ハッピーカメラ
使用者の意識だけを写真撮影の瞬間に送る機能がある(モノローグで語られた「戻る」)

使用者本人の視点だとどっちも起こる事象はそれほど変わりないけど、使用者以外からみた事象が多少変わることになるわけですね。
また、時計が建物サイズなのは身体ごと送ることができるから、カメラは意識だけを送る簡易的な機能なので持ち運び可能、と考えるとそれなりに筋も通っているように思います。

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余談ですが、時間移動ができるのは一名っぽいので
人間が時間移動するのは掟を破ることに直結するよね

ハッピー星人にとっての死

タコピーは肉体的なダメージに対する関心が低く自殺・他殺といった概念を知りませんでした、一方で痛みは感じるし生物の死は理解しています。

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「殺す」の理解以前に目の前の血みどろ事件現場に
関心ゼロなのはどういうことなのか…

この辺の要因は恐らく
・ハッピー星人は異常にタフで滅多なことでは死なない
 (しずかちゃんに石で殴られても気絶するだけだったし)
・時間移動で回避できるので死自体にあまり意味がない
 (ハッピー星で死んだ場合「死んだ?じゃあ戻すか」くらいの感じで軽く扱われるのかも)
・あるいはその両方、などなど

いずれにせよ時間移動で死を簡単に回避できるハッピー星人にとって肉体的なダメージやそれによる活動停止は「避けようと思えば誰でも避けられる事故」程度の、タコピーのように概念すら知らない奴がいるような些細な問題なんじゃなかろうか。

しずかちゃんやまりなちゃんの死に動揺したのも「この程度で?」とか「時間移動できないのに?」という驚きに近いのかもしれない。

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なんで?(原因)なんで?(目的)なんで?(手段)

作中に描写がないので正確なところは分からないが、ハッピー星人にとって肉体的な死は人間にとっての死と等価値ではないというのは間違いないでしょう。

では、時間移動ができるハッピー星人にとっての死とは何かというと、作中描写からハッピー力の消耗と考えるのが妥当です。
どの場所に行っても会えなくなる、という概念に時間の流れを加えた概念、「あらゆる時間に移動しても二度と会うことができない」
つまり、終盤のハッピー力の消耗による消滅が我々の感じる死に最も近いと推測できます。
時間的な前後に関係なく存在が消える ≒ 誰の記憶にも残らない
となることを考えるとハッピー星人の死の方がより悲しいとも言えますね。(時間感覚が違うハッピー星人は何らかの形で憶えているのかも)

最後の時間移動について

物語終盤でタコピーは自身のハッピー力を使用してカメラを起動し、存在ごと消滅しました。しかし、タコピーに関する記憶がしずかちゃんだけでなくカメラ撮影時には関係の薄かったまりなちゃんにまで残っており、これまでの時間移動とは違った影響が現れています。また、東君に記憶があるか明言されないものの兄とのケンカしたこと、メガネが新しくなっていることから家族関係の改善が示唆されている。
これは何が起きたのでしょうか。

前述のとおり、カメラは使用者の意識(記憶)だけを過去に飛ばす機能があります。しかし、タコピーは使用と同時に存在そのものが消えてしまったため、カメラが過去に飛ばしたタコピーの意識は行き先を失っている。これでは意味がないはずです。

しかし、タコピーはハッピー力を使う際に「ぼくだからきみにしてあげられること」と言っているので何らかの意図をもってカメラを起動しています。

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何が起こるか分かんないッピ、ということはないはず

その後の展開からタコピーの意図は各々が抱える問題に向き合うヒントを与えることで間違いないわけだが、その手段は過去に飛ばしたタコピーの意識(記憶)をタコピー自身ではなく関係した人物に飛ばすことだったと推測される。
タコピーの記憶(冒頭の時系列ピンク矢印)が関係者に断片的に宿ったと考えると2016年のまりなちゃんに2022年の記憶があることにも説明がつきます。
ただ、解決に向けた具体的な手段を見出していた東君に対して、具体的な解決策が見つからなかったしずかちゃん、まりなちゃんには「おはなしがハッピーをうむ」というタコピーの根本的な意識が取り込まれたとみられます。

結果的にこれは成功し、早々に東君は兄や母親と向き合い、しずかちゃん、まりなちゃんは和解し(アニメ版ではカットされましたが)2022年には軽口を言い合いながら一緒に買い物する未来に辿り着きました。

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チャッピーが健在なのでハッピーだよね

タコピーの原罪におけるタイムスリップ理論

では、先述のタコピーの身を挺したハッピーエンドに水を差していこうと思います。

過去に戻ることで生じるタイムパラドックス

タコピーは時間移動で未来の情報を持ち帰り、別の未来に向かうための行動を模索しました。しかし、これは構造的に次のようなタイムパラドックスを内包しています。

タコピーのようにしずかちゃんが自殺してしまう未来(未来A)の情報を持ち帰り、自殺しない未来(未来B)に向かおうとしたとする。
過去に戻ったタコピーの行動で未来Bが確定。その瞬間、未来Aは消滅し「存在しない未来」の出来事になる。
存在しない未来の情報は持ち帰ることができないため、未来Bに向かうことができず元々の未来Aに戻る、というループにはまってしまう。

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「自殺しない未来B」からは
「自殺する未来A」の情報は得られない

これは時間が過去から未来(図だと左から右)に流れる1本の線だと考えたために起こる矛盾だ。

当然だが作中では上記のようなタイムパラドックスは発生せずタコピーは未来Aの記憶を残したまま何度も過去に戻り試行錯誤を行った。
これはつまり、本作のタイムスリップ論が、上述の時間軸が一本だけという理論ではなく、それぞれが平行世界として分岐するように複数存在する、という理論であると推察される。

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未来A、Bは別で存在するため
Aの情報はBと干渉しないで存在できる。

さらに言うと、しずかちゃんが自殺(未遂)してしまう未来を繰り返しながら101回試行錯誤したので未来A1から未来A2、A3、A4…~未来A100までと、しずかちゃんは自殺しない代わりにまりなちゃんが撲殺されるA101、そして最後にタコピーの記憶だけが残る未来Bが分岐して生まれた、ということになる。

時間移動前のことを「憶えている」ということ

さて、ここで思い出してほしい。
本作において、消滅したタコピーのように存在しなかったことなった者は時間的な前後に関係なく登場人物の記憶から消えてしまった。一方で、自殺してしまったしずかちゃんや、試行錯誤した101回分の平行世界のことはタコピーの記憶から消えていなかった。自殺を止められなかった世界が消滅しているならタコピーの記憶からも消えているはずである。

つまり、分岐した平行世界は、存在し続けている。
「なかったこと」になっているのは平行世界を渡り歩いたタコピー視点の話であって、実際はタコピーがカメラを使用するような取り返しのつかない状況になった世界は消えていないし、もっと言うとその先も存在するはずなんですよ。
(その世界でタコピーがどうなっているのかは不明)

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紫矢印のバッドエンドな未来が青矢印と等しく存在している、はず

結論

高1のまりなちゃんがママを刺殺して自害してしまった世界も、
チャッピーを失ったしずかちゃんが自殺してしまった世界も、
チャッピーが保健所に連れていかれてしまった世界(×100)も、
東君に殺人容疑がかかり、しずかちゃんが誘拐犯になり、タコピーが消滅してしまった世界も、
カメラを使ったタコピーの視点ではなかったことになったようにみえたけど、彼女らの未来は何も変わらず平行世界上で等しく存在し続けるというが今回の考察になります。

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救いがない…

まぁこの結論を知ったうえで最後に描かれた「しずかちゃんとまりなちゃんが和解するきっかけがあった世界」が存在することをどう感じるか、みたいなのが四次元的感性だと思うんですよ私。予想するに紫矢印の未来はタコピーが地球に来る前とさほど変わらない結果になってるだろうしね。
結局のところ平行世界論とか多元宇宙論にハッピーエンドは存在しないんですよ。というより一つの世界だけみたときの幸、不幸には意味がないみたいなところに落ち着いちゃう。
(じゃあタコピーが人間を笑顔にしたかったのは何故?という疑問はあるが、その辺含めて人間と感覚が違う存在ということで…)

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明かされることはなかったタコピーの本来の目的と
ハッピー星の掟の謎

他の作品だとひぐらしのなく頃にとかこういう世界観をとってるんよね。アレは時間巻き戻しのトリガーが古手梨花の死だけど、彼女が死んだ後の世界が存在している描写がたくさんあるわけだし。(圭一だけが生き残った話とか、赤坂が数年後に事件を知り後悔する話とか)

こういう形のループものって平行世界まで目を向けちゃうと大体救いがないんだわ。死んだ奴も、生き残った奴も、大体みんな不幸になって世界ごとフェードアウト。
無数に不幸な平行世界があったけど、ハッピーな未来に辿り着いたぜ!っていう主観的な話にしか出来ないんですよね。
まぁ物語は主人公の主観で語らないと意味不明だし、不幸な平行世界もあるし幸せな平行世界もあるよねとしか言えないから仕方ないんですけど。

じゃあどうすれば皆が幸せになったのよ?

2016年時点でしずかちゃん達と出会ったのがタコピーじゃなく

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たけしだったらいいんじゃない?
割とマジで全て解決すると思う

今回は以上!
クッソ長い怪文書を読んでいただきありがとうございました。


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