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煙にまかれた湯治宿「ホテル雲井」の再始動と、その舞台裏

みなさんこんにちは、龍崎です。今まで休館していた北海道・層雲峡温泉の宿『ホテル雲井』を今年の9月から再開することにしました。もしかしたら覚えておられる方もいるかもしれませんが、実は2020年に『東洋医学の療養リトリート』にリニューアルしたのですが、コロナ禍などの影響で紆余曲折があり、学校法人に校舎・寮として使っていただいていました。が、再び宿として営業を再開することになるまでの経緯と、これからのプロジェクトについてお伝えしていきます。

雲の中のリトリート『ホテル雲井』のこれまで

「ホテル雲井」は、北海道・大雪山の麓の深い森の奥、層雲峡温泉という温泉街にあるホテル。旭川空港から車で1時間半、大雪山国立公園という日本最大級の国立公園の中にあり、鬱蒼としげる森、薄墨色の岩肌、立ち込める雲海に、蝦夷鹿の家族...と、まわりには大自然しかないという秘境のような立地にあります。「層雲峡」という名前の通り、あたり一帯が雲海に包まれていることでも有名で、大雪山・黒岳登山や植物採集などのために泊まるお客様がたくさんいらっしゃる山岳リゾートでもあります。

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元々は、私が北海道・富良野でペンションを営んでいた縁で、お世話になっていた方を通じて、当時経営者だった80歳の女将をご紹介いただき、事業継承を提案していただいたのが「ホテル雲井」との出会いでした。当時はまだまだ事業規模が小さかったこともあり何年か迷っていたのですが、2017年ごろについに女将さんが温泉旅館をたたむという話を聞き、微力であっても層雲峡という美しい土地の力になろうと、この温泉宿を引き継ぐことを決めたのです。

限られた予算の中で内装をリニューアルし、夏は世界中から集まる登山客、秋は日本一早い紅葉を楽しむ道内観光客、冬はウィンタースポーツなどを楽しむ海外観光客の方々をお迎えする宿として運営していたのですが、2020年のコロナショックを機に経営を見直しすることに。日々たくさんのお客様をお相手するのではなく、客室数を絞り、4泊5日の滞在に限定し、お客様ひとりひとりと向き合った特別な時間を提供する宿、「東洋医学の療養リトリート」に生まれ変わることになりました。

※詳しい経緯はこちらをぜひご覧ください。

お客様が到着される日には漢方専門家が宿に常駐し、丁寧な体質診断・健康相談を通じて滞在中の過ごし方を提案。体調に合わせた漢方薬の処方や、体質ごとにセミパーソナライズされた食事、毎日の鍼灸・整体のトリートメントに、北海道の自然を感じるワークショップ。1会期(4泊5日)につき10名限定の、濃く深い体験を8会期(2ヶ月間)。この滞在を通じて、多くのお客様が忘れ難い体験になったとおっしゃってくださいました。

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ところが、継続開催に向けて準備を進めていた矢先に再び北海道に緊急事態宣言が発令。そもそも宿泊業自体の継続が困難となり、加えて会社自体の存続が最優先となる状況の中で、後ろ髪を引かれる思いでホテル雲井を休館を決意することになりました。

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なぜ再開することになったのか?

休館期間中、とある出会いに恵まれ、オルタナティブ教育を推進するユニークな全寮制の学校法人が、層雲峡温泉の所在する北海道・上川町でキャンパスと寮を展開することとなり、新築するまでの期間、ホテル雲井を校舎・寮として一時的に使っていただけることになりました。宴会場は食堂に、小広間は教室に、ラウンジは生徒の談話室に。これまで宿として営んできた空間が、若い学生の方々の暮らしと学びの場となっている様子を遠くから興味深く見守っていました。

と同時に、コロナ禍の影響で仕方なかったとはいえ、ホテル雲井を離れざるを得なかったことをもどかしく思う気持ちもありました。ホテル雲井を引き継ぐ時に女将が仰っていた「私はこの宿を営むことができて本当に幸せだったの」という言葉。役場の方々、地域の方々がさまざまな形でしてくださった応援。層雲峡で働いてくれた仲間たちの思い。多くの方々の期待と応援に恥じない宿にすること、層雲峡に新しい風を呼び込み街の価値を高めていくことが、私たち水星の果たすべき役割なのではないか、という思いが胸に去来していました。

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もちろん、経済合理性で言えば、物件を売却する選択肢もありましたし、より収益性の高い都市・物件で展開することに経営資源を集中させることもできたと思います。でも、ただ追い風に乗り続けるよりも、古くからのご縁を大切にすること、世の中に新しく光をあて知られざる価値を生み出していくことに、自分達が取り組む価値と意義があるのではないか、と感じていました。層雲峡の自然と、温泉。その恵みを世の中に伝え、街に新しい風を呼び起こすことこそが私たちの役割なのではないか、と。

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ホテル雲井を借りていただいて3年ほど経過するのを機に、再び宿泊業を営みたいと考えている旨をお伝えし、ご理解と応援をいただくことができ(学校法人さんは当初の計画通り、上川市内で素敵な校舎・寮を新築で建てる運びとなりました)、再びホテル雲井を再始動させることになったのです。

再び始動した「ホテル雲井」の構想

こうして、再び私たちはホテル雲井を再び営み始めることを決意しました。コンセプトは、「煙にまかれた湯治宿」。

川の流れる音、鳥たちのさえずり、木々の手触り、山にかかる霧。ホテル雲井の裏にそびえるのは、大雪山系の雄大な山々。朝、ホテルの周りを少し散歩してみると、柱状節理の岩肌や大雪山から降りる雲が目の前に広がり、まるで水墨画の中に紛れ込んだかのような気持ちになります。

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また、ホテル雲井は温泉も魅力のひとつ。日本でも数少ない、良質な源泉掛け流し100%の単純硫黄温泉で、肌のゴワつきやざらつきを軽減し、くすんだ肌を透明感のある肌へと導く「美人の湯」の効果もあります(毎日温泉に入っていたという女将は80歳には見えないくらいお肌がつやつやでした)。かつて、層雲峡は軍都・旭川の温泉病院があった場所としても知られ、軍人やその家族はもちろん、周辺地域の農家の方々などが寒い冬に1年分の疲れた身体を湯治を通じて癒していた場所。

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手付かずの自然に包まれた空間で、移ろいゆく季節を近くに感じながら、自分の体調や体質、気分、嗜好、悩みなどと向き合い、お湯と共に療養する。そんな旅館としてのあり方がこの場所であれば実現できると確信しています。

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ホテル雲井は、築40年近い建物で、決して新しく綺麗なわけではないし、内装予算を十分に割けるわけでもない。でも、それはそれでいいのだとも思っている。新しいこと、洗練されていることだけが価値なのではなくて、古いこと、繕っていること、垢抜けないことに価値が宿ることもあるのだと思うのです。

空港から2時間近く、人気のない高速道路を走り続けた先に、豪華絢爛な宿は別に必要なくて、灯油ストーブの匂いが立ち込めて、濃い温泉に入れて、暖かい人の気配を感じることができる、年季の入った味わい深い宿があればいいのではないか、と。

具体的なコンテンツは、今まさに設計中。最初の一年はまず温泉宿としての土台を整え、しっかりと1泊単位でもお客様に満足していただける体験を作り込むところから。同時に、徐々に中長期滞在のリトリートのための施設としてのブランドも整えていきたいと思っています。

大きな温泉旅館のような特別なおもてなしや露天風呂、豪華な食事はご用意できないかもしれないけれど、この幻想的で荘厳な景観と、原始の北海道の姿を留めた層雲峡という街の空気感を随所に織り込み、層雲峡を訪れたゲストがこの街のテロワールを体感できるような、そんな山の中の湯治宿を目指したいと思っています。

開業準備室の仲間たち

ホテル雲井の再開に際して、開業準備室の立ち上げを進めています。水星の各施設の支配人を歴任している主力メンバーが開業準備に携わっています。

ホテル雲井支配人を務めるのは、現・香林居支配人の野村ちゃん。層雲峡に行きたいと申し出てくれて、ホテル雲井の支配人に就任することになりました。スモールラグジュアリーから、煙に巻かれた湯治宿へ。その美意識と、丁寧な仕事が層雲峡に宿るのが本当に楽しみです。

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野村ひより
ホテル雲井支配人(現・香林居支配人)
東京出身。大手ホテルや高級レストランのサービススタッフとして従事。20歳で金沢が好きすぎて移住し、1年後に水星の運営するスモールラグジュアリーホテル『香林居』に出会い入社。アルバイトスタッフから正社員登用されたのち、支配人に抜擢。香林居全体のクリエイティブディレクションも担当。


また、統括支配人は、HOTEL SHE,の統括マネージャーを務める岸さんが兼任。関西と北海道を行き来しながら、ホテル雲井の空間編集と体験デザインを進めていきます。

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岸 えりな
ホテル雲井統括支配人(現・HOTEL SHE, 統括支配人)
兵庫県丹波市生まれ。同志社大学文学部美学芸術学科卒業後、住宅設備メーカーで法人営業を行いながらフリーランスでデザイナーを経験。ホテルという手段を通して世の中に新しい選択肢を与える仕事に興味を持ち、水星に入社。現在はHOTEL SHE, KYOTOの支配人とHOTEL SHE, / ホテル雲井の統括ブランドマネージャーを兼務しながら、水星のインハウスデザイナーとして全社的なグラフィックデザイン業務までを幅広く手掛ける。


開業責任者は、HOTEL SHE, KYOTO支配人と香林居支配人を歴任し、今はプロデュース事業部でプロデューサーを務める笠井くんが担当。

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笠井 明
プロジェクトマネージャー・プロデューサー
同志社大学スポーツ健康科学部卒業。2年間のインターン後に2019年に新卒で入社。入社翌年からHOTEL SHE, KYOTOの支配人を経験。2021年から香林居の開業準備室に入りその後も同施設の支配人を務め、高単価施設のレベニューマネジメント、ピープルマネジメントに従事したのち、現在はプロデュース事業部でホテルや企業のブランドプロデュースプロジェクトに参画。


開業タイミングでは、プロデュース事業部の木村ナイルさん(ちなみに私の高校・大学の同級生)も空間ディレクション担当として参画してくれます。

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木村 七音流
プロジェクトマネージャー・プロデューサー
東京大学工学部建築学科卒業後、東京大学大学院新領域創成科学研究科を修了。フジワラテッペイアーキテクツラボを経て、2025年に水星に参画。


また、開業に合わせて水星への入社を決めてくださった方も。大手のPR会社やマーケティング会社を経て、ホテル雲井の再開に共感しエリアプロデューサーとして層雲峡に移住を決めてくださった佐藤さん。雪山登山が趣味という、再始動した雲井のブランド作りに欠かせない一人です。

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佐藤 純平
関西学院大学商学部マーケティング学科を卒業。新卒でアジアNo.1のPRエージェンシーに入社した後、Hakuhodo DY ONEを経て、水星に参画。第一種銃猟免許取得・わな猟免許取得済み。


加えて、私・龍崎も開業前後のタイミングはしばらく層雲峡に滞在して開業に携わる予定です。客室や共用部のアップデートに加えて、飲食の開発など、私自身も生活しながら手ずから関わりながら、宿作りをしていきたいと思っています。

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初春の出張時、街の森林課の保有する木材をいただいた時の写真
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黒岳は一面の雪景色
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地下室から見つけ出した流木と古箪笥
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大浴場内のサイン作成のための計測作業の様子
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レストランのレイアウト変更
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旭川のハーブ農園での勉強会の記録
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自家製の果実酒も製造してお客様に振る舞う予定です


一緒にホテル雲井の再始動を支えてくださる仲間を募集中です🗻

そんなわけで、私たちは今、ホテル雲井の再始動に向けて絶賛準備中。一緒にこの再始動プロジェクトを支えてくださる仲間を募集しています。正社員・インターン・アルバイト各職種で募集をしていますので、まずはカジュアル面談でお気軽にご相談ください。
※住み込み・長期滞在(30日以上)で働いていただける方を想定しています。

ホテルの立ち上げフェーズから運営・経営に携わる経験は、水星の社内でも限られた機会しかありません。ブランドコンセプト設計、空間企画、サービス開発、運営準備まで、実際のプロジェクトに参画しながら、企画と運営の両面を実践的に経験することができます。

またホテル雲井では、以前から、上川町役場、商店街組合、観光協会と共に、層雲峡温泉全体を活性化させる取り組みに参加してきました。ホテル運営業務と同時に、地域活性化や地方での事業創造の経験を積みたい方も歓迎しています。

■募集職種一覧
①ホテルスタッフ(ホテル事業部)ー 正社員


②エリアプロデューサー(プロデュース事業部)ー 正社員


③長期インターン(ホテル事業部)ー アルバイト


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