AI

2025.09.09 15:15

手描き原画と見紛う━━コルク佐渡島氏参画、著名漫画家も使う作画専用「AIxIPツール」

(提供:THE PEN)

「無断学習と無許可利用」というイシュー

また、多くのAIツールは倫理的な問題も抱える。現状の日本の法律では漫画家の作品の無断学習自体は許されているものの、無断で出力し商用利用すれば違法になるからだ。

2025年3月にはOpenAIのサム・アルトマンCEOが写真をジブリ風に加工できるChatGPTの最新画像生成機能を発表した。そして、結果、ジブリ風加工が加わった生成画像が正規ライセンスを得ずに拡散し、IP価値毀損の懸念が指摘された。こうした無断学習と無許可利用の問題は、クリエイターの権利保護と両立できていない。

そんななか「THE PEN」は、漫画家本人の許可と協力を得た上で作家ごとの画風や癖をデータベース化し、漫画家が著作権侵害の不安なく活用できる「権利に配慮した高品質を担保したAI補助ツール」を目指す。つまり、データベースからAIが作家自身の暗黙知を学習することで、オリジナルの作風やキャラクターを高品質に再現する仕組みを開発しているのだ。

「5点」のキャラクターデザインから全体を生成

THE PENの強みの一つは、高度なAIファインチューニング技術で、下書き(ネーム)から完成画までの工程を大幅に省力化できることだ。大量のデータを食わせて「75点」の結果を出す「基盤モデル」ではなく、少しのデータで最後の微調整をし、100点に近い形までファインチューニングするのだ。 

(提供:THE PEN)
(提供:THE PEN)

具体的には作家が描いたわずか5点のキャラクターデザインをもとに、詳細なタグ付けと独自の生成フローによって、生成AIに活用するデータセットを構築する。しかも、許可を得た範囲を遵守し、他の漫画家のデータと混同されないよう管理することで、創作技術の無断複製や濫用を防ぐことができる。 

現在、総計10万件以上のデータを扱いつつ、特許申請中の技術も活用しているという。結果、従来は4回なぞることが通常だがその必要がなくなり、ネームからの作画工程を大幅に省力化し得た。

THE PENの出力品質は商用を前提に設計。汎用AIモデルのように品質が不安定になることを避け、手描きの原画と遜色ないレベルで安定した再現性を実現した。

ある著名漫画家の場合

ある著名漫画家は、隔週連載の約20ページ/回(月40ページ)を執筆するのに13日間/回かけて制作していた。

しかし「THE PEN」導入後は、1日で描いたネームを取り込んでもらうと、約2日でイラストが出力され、手元に納品される。その後約1.5日で線画を微修正して仕上げ、完成だ。

ある著名漫画家が、試験的に「THE PEN」を使用したところ、稼働量は従来の約6分の1以下に減少。

この漫画家は、「もっと描きたい」と意欲が高まり、「THE PEN」の使用による生産量の向上に挑戦したいと思っているようだ。

——Visual Bankは、経産省・NEDOによる国内生成AIの開発力強化プロジェクト「GENIAC」に採択され、15億円の助成金を受けた。

THE PENによれば、「IP産業向けのAIファインチューニング用データセット整備、データライブラリシステム構築、模範的な生成ユースケース創出などを通じ、『IPxAI』のデータエコシステムの創出によって国内の生成AI開発力強化に取り組む」という。

THE PENは新たな産業モデル「IP×AI」を開拓し得るのか。

ForbesBrandVoice

人気記事

サービス

2024.12.07 14:15

グーグルアースで昔の住居近辺を「散策」した男性、未解決事件の遺体を発見

グーグル・アースで実家やその辺りを検索し、懐かしむ。きっとこのような経験のある人は少なくないだろう。しかし、そのような思い出の旅は、とある男性にとって思いがけないものとなった。悲しいことではあるが、ウィリアム・モルトは、グーグル・アースがそのように細部まで観察されたがために、発見されたのだ。彼は1997年、フロリダでの夜遊び中に行方不明になり、ずっとその消息が不明だったのだ。

ウィリアムの失踪事件は当時徹底的に調査されたが、20年以上も未解決事件だった。だが、そんな2019年、グーグルアースを使って昔の近所を散策していた男性がある奇妙なものを発見した。以前住んでいた家の隣にある湖に、水没している自動車があったのである。地元の人とドローンの助けを借りてその事実は調査された。そして、20年以上もウィリアムの骨をその内部に隠していた白い自動車が、ついに姿を現したのだった。

実は行方不明者専門データベース「チャーリー・プロジェクト」が、データ上ではだが、衛星画像ですでに2007年からその車を捉え得ていたという。地元当局は、ウィリアムが車の制御を失い、湖に転落したのではないかとみているが、この仮説を裏付ける先行証拠はない。今回の発見は、ウィリアムの家族にとって、捜査に一旦収拾をつけるものとなったが、ウィリアムの失踪当時の状況は未だに明らかにされておらず、時がいくら経過しようと行方不明者であることが確認されただけであった。警察の広報担当者テレーズ・バーベラは以下のように述べる。「我々が知り得るのは、彼が行方不明になり、そして今、発見されたということだけです」。

この事例は、たとえそれが長らく解明できなかったものであっても、暗礁に乗り上げた事実を明らかにするテクノロジーの力を痛感させるものである。謎が謎のまま解明されないことがある一方で、グーグル・アースの注意深い観察は、時に予期せぬ方面から、奇妙な方向から私たちにヒントを示してくれるのである。



※本稿は英国のテクノロジー特化メディア「Wonderfulengineering.com」2024年5月13日の記事から翻訳転載したものである)

翻訳=大石月子 編集=石井節子

advertisement

ForbesBrandVoice

| あなたにおすすめの記事

人気記事

欧州

2025.09.04 15:15

コロナ第12波? 「変異株ニンバス流行」をスウェーデン在住日本人医師はこう見る

Getty Images

Getty Images

2007年、スウェーデンに移住した宮川絢子博士は、スウェーデン・カロリンスカ大学病院・泌尿器外科勤務の医師で日本泌尿器科学会専門医取得後、スウェーデンで泌尿器外科専門医を取得している。

日本では現在、新型コロナウイルス変異株「ニンバス」流行拡大の報道がされている。スウェーデンの新型コロナウイルス対応は、「都市封鎖せず」と独自路線のソフト対策を貫き、継続して世界な話題であり続けたが、同国では「新型コロナウイルス」に関してその後、どのようなアプローチが取られているのか。

宮川博士に以下、現地よりご寄稿いただいた。

関連記事:スウェーデン新型コロナ「ソフト対策」の実態。現地の日本人医師はこう例証する


「新型コロナウイルス」スウェーデン社会でのその後━━

最近、日本では新型コロナウイルス変異株「ニンバス」が流行拡大中との報道を目にする。強い喉の痛みがあるなどとして注意喚起する医師もいる。第12波の到来という報道もある。それに伴い、マスク着用義務や面会制限などの対応を再開する医療機関もあるという。

しかし、スウェーデンの医療現場で働く筆者の視点から見ると、こうした反応には疑問を感じざるを得ない。少なくともスウェーデンでは、全く異なるアプローチが取られている。

スウェーデン社会では新型コロナウイルスは既に忘れ去られており、ニュースのネタにもならない。感染の波も2022年末から2023年にかけての第5波くらいまでは数えていたようだが、それ以降はない(図1)。

図1(出典:スウェーデン公衆衛生庁)
図1(出所:スウェーデン公衆衛生庁)

新型コロナウイルスは、既に通常のコロナウイルスと同じように今後も流行し続けるという認識であり、したがって、第何波と数えること自体に意義を見出していない。病院でも既に新型コロナウイルスを特別扱いすることはなくなった。

日本で広く行われている新型コロナウイルス検査も、スウェーデンで行われる機会は非常に限られる。以前、街中で売られていた抗原検査キットも見かけなくなった。検査は入院が必要である症状がある場合に限り、大病院で入院時にスクリーニングとして行うか、感染に脆弱な人が住んでいる高齢者施設で有症状者に対して実施するのみで、街の診療所で検査が行われることはない。

Getty Images
Getty Images

風邪症状がある際には、医療機関を受診して検査をするのではなく、常識を働かせて自宅療養がスウェーデンの標準的対応である。発熱外来など存在しない。したがって、抗ウイルス薬の投与もクリニックレベルでは行われず、大病院でさえも、感染に脆弱な感染者のうち限られた患者に対してのみである。

次ページ > 「検査実施料」のほかに「判断料」も払っている?

文=宮川絢子

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事