道鏡顕彰、どう続ける? 「知る会」解散で 西大寺

米田千佐子
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 奈良時代の僧・道鏡(どうきょう)(?~772)の「悪僧」とされる人物像の再評価と顕彰を進め、奈良市西大寺で法要を続けてきた市民団体「道鏡を知る会」(大阪府八尾市)が今月、解散した。寺や関係者は解散を惜しみ、学者や彫刻家、行政も一緒になって、顕彰を続ける方向で検討を始めた。

 今月7日、西大寺四王堂に会員や大松桂右(だいまつけいすけ)・八尾市長ら約30人が集まり、道鏡の1250年遠忌法要を営んだ。同会が始めた法要は今年が20回目。お堂に安置された「道鏡禅師像」は、道鏡を重用した女帝・称徳天皇が西大寺を創建したことから、2020年に同会が奉納したものだ。

 道鏡は、称徳天皇の仏教信仰を通じた厚い信頼によって「法王」になり、皇位継承をねらったとも伝わる。

 同会は「道鏡は本当に悪僧だったのか」という疑問を原点に、道鏡の故郷である現在の八尾市の市民らが1980年に立ち上げた。ピーク時は約60人が活動したが、会員は高齢化し、解散前には5人に減っていた。

 副会長の山丈(やまじょう)明美さん(76)は取材に対して「禅師像を奉納したら法要は終わりにしようと思っていたが、がんばらなあかんと思って遠忌法要まで続けてきた」と話す。

 法要の後、参加者たちは顕彰などをどうするか話し合った。山丈さんら会員のほか、道鏡に関する著作もある京都女子大名誉教授の瀧浪(たきなみ)貞子さん、道鏡禅師像の作者で彫刻家の籔内佐斗司(やぶうちさとし)さん、八尾市職員らが熱心に意見を交わした。

 同席した西大寺の松村隆誉(りゅうよ)長老(74)は「『道鏡禅師像』の魂はお参りされ、あがめてもらってこそ発揮される。お知恵を拝借したい」と呼びかけた。瀧浪さんは「学生にも道鏡を知ってもらう必要があるのでは」、籔内さんは「道鏡のファンクラブをつくっては」などと提案。西大寺での法要を続け、顕彰についても定期的に集まって話し合う方向で一致した。

 山丈さんは、「発信しないと道鏡が忘れられてしまうと思って活動してきた。顕彰が続くことになり、安心しました」と喜んだ。

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