「もっと可愛くなりたい」――。そんな思いで自身のSNSに「垢抜け動画」を投稿していた女は、生徒を正しい道へ導いていく教員という立場でありながら、自らの道を踏み外してしまった。
警視庁赤坂署は8月28日、マッチングアプリで知り合った男性から現金700万円をだまし取ったとして、詐欺と偽造有印公文書行使の疑いで、江東区在住の都立高校教諭、大平なる美容疑者(30歳)を逮捕した。
「現代ビジネス」が取材を進めると、大平容疑者は家庭科教師として勤務するかたわら、SNSで動画を投稿する「配信者」として活動していたことが明らかになった。
カネをだまし取るため「和解調書」を偽造
事件の発端は、今年2月下旬にさかのぼる。大平容疑者は、マッチングアプリで知り合い、定期的に食事をして現金をもらう「パパ活相手」である50代の男性に、「仕事上のトラブルで民事訴訟を起こされた。解決金としてお金が必要だ」などと相談。
「(お金を貸すなら)根拠を示してほしい」と言われた大平容疑者は、その約1カ月後、港区のホテルのラウンジで男性と対面した際、ある「書類」を持ってきたという。
「大平容疑者は、裁判で和解が成立した際に当事者間の合意内容を記録する『和解調書』を提示してきたため、被害男性は借用書を交わし、現金700万円をその場で手渡した。
しかし、後に男性が調書に記載されていた住所を確認すると、大平容疑者が住んでいないことが分かり、和解調書に記された事件番号も架空の番号だったことが判明。訴訟そのものが存在していなかった」(全国紙社会部記者)
不審に思った男性は、3月下旬に警察に相談。その後、被害届を提出したことで今回の逮捕に至った。警察の取り調べに対して、大平容疑者は「和解調書のコピーを渡してお金を借りたことに間違いない。民事訴訟に負けてお金が必要だった」と供述。
その一方で、「お金は返さなくていいと思っていた」などと容疑を一部否認しているが、捜査を進めていく中で新たな事実が判明したという。
「当時、『仕事上のトラブルで民事訴訟を起こされた』と被害男性に相談していたが、実際には仕事ではなく、個人間のトラブルで訴えられていた。大平容疑者は、マッチングアプリで他の男性からもお金を受け取っていて、そのうちの一人が返金を求めて訴訟を提起。その裁判に負けて、大平容疑者には返金命令が下されていた」(同前)