「逆流と沈黙の向こうで — 知覚の奥で触れたもの」
最近、自分の呼吸が逆に流れる感覚を覚えることがある。
息を吸ったとき、普通なら肺が膨らみ、
世界が少し遠のくように感じる。
でもその瞬間、まるで息が自分の奥に落ちていくような、
逆向きの流れが起きることがある。
これを「逆流」と呼ぶことにした。
逆流は呼吸だけじゃない。
考えごとも同じだ。
何かを解決しようと頭を働かせるとき、
いつもなら意識は外へ拡がり、
答えを探しにいくはずなのに、
逆に問いそのものが静かに自分の中へ沈んでいく。
その沈黙の中にいるとき、
世界は少し違って見える。
この感覚を、瞑想の最も深いところで出会った
「誰でもない存在」に近いと思った。
地球の奥底に小さな核があって、
そこから微かな磁場が届いているとしたら。
その核はきっと、
問いも答えもない沈黙そのものなのだろう。
逆流の中で感じるそれは、
宇宙を見上げたときの気配ともよく似ている。
まだ神という言葉を使うには
ずいぶん大きすぎる話だ。
けれど呼吸が逆に引き込まれる瞬間、
わずかにその輪郭に触れたような気がした。
これはただの自分の身体の感覚の話かもしれない。
でも、もしどこかで同じように
逆流を感じたことがある人がいたら、
その沈黙の中でまた会えるかもしれない。


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