107、代官リリスの行政
館に帰ってまずは自室へ。ふぅ。ここは二ヶ月ぶりだけど、やっぱ自分の部屋っていいね。
「それにしても、さっきのスティード君はどうしたことなんだろうね? なんだかむきになってなかった?」
「たぶんカースのせいよ? カースがシュガーバを褒めるものだから。スティード君としては気が気じゃなかったみたいね?」
そうか? 褒めたっけ? そんな覚えはないが……
「でもスティード君の敵じゃないよね。確かにシュガーバも手強いけどさ。」
「それよ。カースから見て手強いだなんてスティード君からすればかなり意外だったんじゃないかしら。むきになってもおかしくないのかもね。」
なるほど。分からないけど分かった気がする。スティード君たらかわいいとこあんのね。
「ピュイピュイ」
おっ、誰か来たの?
あ、ノックの音。呼びもしないのにここに来るのってあいつしかいないよな。
「開いてるよ。」
基本的に鍵かけないしね。
「失礼いたします。お帰りなさいませ旦那様、お嬢様。」
「ただいま。最近はどうだい? 問題ないか?」
「実は問題がございます。女が一人死にまして……補充をお願いしたいのです。」
ん? 一人死んだから補充? 妙なこと言うなぁ。
「そりゃあもちろん構わないけど、どこが問題なの?」
「実はその女なのですが避妊魔法の使い手だったのです。それがいなくなったわけですので……」
あらまぁ。それは大事じゃん……
今のところここの女達が妊娠したとか出産したとかって話は聞いたことがない。理由はもちろん避妊魔法だったってわけね。そこら辺は私ノータッチなんだよね。お任せくださいとしか聞いてなかったからな。
「分かった。今月後半には何とかする。けど、もしかして急ぎ?」
「早い方がありがたいですが、しばらくは避妊薬がありますので持ち堪えられるかと。遅くとも二ヶ月以内にご用意いただきたく思います。」
「分かった。何とかするわ。」
リゼットに相談だな。私はそっち系はさっぱり分からないからな。確か避妊魔法って教会で受けることができるんだったか?
「数日なら私が何とかするわよ。ここにいる間ならね?」
おお、マジかよアレク。使い手だったのか……初耳なんだけど! 私に任せてくれたらいいの、ってそういう意味だったのか。
「ありがとうございます。避妊薬は女の体に負担がかかりますので、できれば魔法の方がありがたいです。早速ですが明日の昼間にお願いできますでしょうか?」
「ええ、いいわよ。」
さすがはアレク。頼りになるなぁ。
あ、今の話で気になるところがあるぞ?
「そういやリリス、その女が死んだ理由は?」
「他の女に殺されました。客の男がその女に乗り換えたのが気に入らなかったようで。」
マジかよ……女同士でもそんなことあんのかよ。
「ちなみに殺した方の女はどうした?」
「いつも通り不死晒しにいたしました。両手足の腱を切って鉄牢に放置した後に餓死。現在はアンデッドと化しております。」
鉄牢で餓死? あ、分かった。ここ最近ずっと治安がよかったから牢の中が空っぽだったわけか。
「ん、分かった。あ、もう一つ。殺された女は避妊魔法が使えるのにわざわざ客をとってたのか?」
避妊魔法が使えるんなら、客なんかとらなくても余裕で生きていけるだろうに。リリスからだって優遇されるだろ。
「本人の意志です。私としましては治癒魔法だけを施してもらえればそれでよかったのですが、本人としては男が欲しかったようで。それもありましてかなり稼いでおりましたが、残念なことです。」
あー……ここでは女達の意志を重視することになってるもんなぁ。帰りたいなら帰っていいことになってるし。それなら仕方ないか。
「分かった。ご苦労だったな。代わりは何とかするわ。任せておきな。」
「ありがとうございます。できれば避妊薬の購入もお願いできますでしょうか。普段は冒険者から買っておりますが、やはり高いもので。」
あらま。だったら早く言えばよかったのに。確かポーションとか売ってる店で買えたよな。
「ああ分かった。あ、そうだ、三人ほど賓客が来てるからさ。気にかけといてやって。」
その三人が将来リリスの配下になるかも知れないことは言わなくていいだろ。
「シュガーバから聞いてございます。スティード様、セルジュ様、サンドラ様でございますね。かしこまりました。」
「うん、頼むね。あ、シュガーバってどう? 役に立ってる?」
リリスに逆らえない契約魔法をかけてあるが、だからって役に立つとは限らないもんな。
「かなり役に立っております。さすがは旦那様の配下だけあります。街の冒険者からも一目置かれているようで。」
いつから外が街になったんだよ……
「それならよかった。ガンガン使ってやってね。」
「ありがとうございます。」
「最後にこれね。」
午前中に領都で買った大量の古着をどーん。シャツ系、ズボン系、上着系、その他とそれぞれ大きな袋に入れてあるぜ。もちろん全て念入りに『浄化』しておいた。
「分けるなり売るなり上手いこと使って。」
「ありがとうございます旦那様。非常に助かります。」
「リリス、私からもあるわよ。はいこれ。
おっ? アレクの魔力庫から何か出てきた。大きめの袋に入ってて見えないが。
「ありがとうございます。あっ、これも助かります。さすがはお嬢様『シャンナール』でしょうか。争奪戦が起こってしまいますね。
ほう? ちらっと見えたけど下着か。私が買った古着の中にも混じってるが、アレクの方は新品なんだろうなぁ。しかもシャルナールとか言ってたよな? 確か高級下着ブランド、オーダーメイドも受け付けてるんだっけ? ここの女達には最高のプレゼントになるわな。やっぱアレクはセンスいいね。
いやぁ楽園は今日も平和だねぇ。リリスの手腕のおかげに違いないね。
いつの間にやら3000話です。
いつもご愛読ありがとうございます。
いつまで続くか分からない異世界金融を今後ともよろしくお願いします!