Waseda Weekly早稲田ウィークリー

「自分の山を築け」インフルエンサー戦国時代 箕輪厚介×津田大介“凡人”対談

“猛獣”使い・箕輪厚介バズるコンテンツの作り方

Twitter、Instagram、LINEなど、今やSNSは生活インフラとして欠かせないものとなっています。この10年あまり、単なるWebサービスという枠を超え、SNSは社会の姿をすっかりと変えてしまいました。

早稲田大学文学学術院教授であり、ジャーナリストの津田大介さんは、黎明(れいめい)期からその発展をリサーチし続け、Twitterで実況することを意味する「tsudaる」というスラングが生み出されるほど、SNSの新しい動きを象徴する人物。一方、箕輪厚介さん(2009年第一文学部卒業)は、堀江貴文さん、幻冬舎社長の見城徹さん、そしてメディアアーティストの落合陽一さんといった先駆者たちの書籍を手掛けてきただけでなく、自らSNSを駆使して次から次へと話題を生み出している、幻冬舎の敏腕編集者です。

今回の対談では、「炎上」「評価経済」「インフルエンサー」などのキーワードを軸に、SNS時代の哲学について伺いました。果たして、このSNS社会を、私たちはどのように生き抜いていけばいいのでしょうか? 対談は、出版社社員であると同時に、オンラインの編集サロンも率いる箕輪さんが、どのように自らの道を切り開いてきたのかというお話から始まります。

左から箕輪厚介さん、津田大介さん
箕輪
今日はよろしくお願いします。普段、無茶苦茶なことを言ったりやったりしているので、ジャーナリストとしてマジメに正義を追求する津田さんを前にすると、緊張してしまいますね。
津田
そんな必要ありませんよ。今でこそ、ニュースに出たりしてマジメな人と思われがちですが、なんでマジメな人間が金髪にしてるんだって話です(笑)。

箕輪さんはこれまでに、幻冬舎のカリスマ社長・見城徹さんの『たった一人の熱狂』(幻冬舎文庫)、堀江貴文さんの『多動力』(幻冬舎)、そして格闘家・青木真也さんの『空気を読んではいけない』(幻冬舎)など、数々のヒット本を手掛けられており、出版業界では「天才編集者」とも呼ばれる存在です。出版不況の時代に、なぜそんなに次々と売れる本を作れるのでしょうか?

箕輪
僕が本を書いてほしいと思って声を掛けるのは、世間から「猛獣」と呼ばれるような異端の存在です。彼らは、どんなにかき混ぜても世間と分離してしまうようなアクの強い個性を持っています。売れる・売れないというよりも先に、まずそんなアクの強い人が好きなんです。そんな個性を料理して、読み物としてどれだけ面白いものが作れるかを考えていますね。

マーケティングの結果ではなく、「売れるかどうか」よりも「面白いかどうか」を優先されているんですね。

箕輪
ただ、本が売れることとアクの強さは、全くかけ離れたものではありません。そもそも「異端だけれども売れない」というような人には、僕は感覚としてあまり興味を抱けない。僕が興味を引かれるのは、類まれなる個性と、そしてその個性が、今の時代に刺さるような人たちなんです。

箕輪さんは「猛獣」たちのどのような部分に面白さを感じるのでしょうか?

箕輪
誤解されがちなんですが、奇をてらったり、過剰なことを発言することばかりが彼らの魅力ではありません。例えば昨年末に出版し、2カ月で10万部以上の発行部数を記録している『お金2.0』(NewsPicks Book)の著者であるメタップス社長の佐藤航陽さん(法学部出身)は、本を作るにあたって「印税はいらないので、宣伝費としてお使いください」と言っていました。

なぜなら印税をもらっても、結局もらったお金は自分の活動や意図を広く伝えるために使うのだから、はなから本の宣伝費としてしまう方が合理的という考え方なんです。…確かにとは思いますけど、世間からすればおかしいですよね(笑)。
津田
「あえてズレる」のではなく「淡々とズレている」ということですよね。
箕輪
まったくその通りです。本人は自分ルールの中で自然にやっているから、それが普通の感覚だと思っているんです。堀江さんの『多動力』にしても、僕が客観的に見て面白いと思うところを取り上げています。彼は、常にスマホをいじっているし、比喩ではなく秒単位で動いている。そういう人たちの「ここがおかしい」「ここがすごい」というところを見つけ、一般化させて、時代と衝突させることによって、バズるコンテンツを作るのが編集者としての僕の役割なんです。
津田
堀江さんは、考え方そのものだけじゃなく、人との距離のとり方やコミュニケーションの仕方も独特ですよね。そもそも、すごい人ってみんな変人なんですよ。僕もライターとして年間300人以上にインタビューしてきた経験からすると、“ガチ”な人というのは第一声で分かる。箕輪さんのような編集者が“翻訳”することによって、そのユニークさを世間も分かりやすく理解することができます。
箕輪
他にも、格闘家の青木真也さん(2006年人間科学部卒業)は、対戦した相手を骨が折れるまで徹底的に攻撃したり、中指を立てて侮辱するような、いわゆる問題児です。そんな、個体として世間から完全に浮いてしまってる彼を“翻訳”し、「空気は読まなくてはいけないものだ」という風潮にぶつけることで、ヒット本となりました。本人がブログに辛らつなことを書いてもバズらないことがあるのは、その面白さが社会の持っている文脈に接続していないから。著者の固有性を世間の空気につなぐのが編集者の役割だと思っています。
世間や炎上は怖くない価値観の崩壊を面白がれ

津田さんの仕事も、箕輪さんのような「編集」という側面があるのでしょうか?

津田
僕の場合、シンポジウムやパネルディスカッションの司会、あるいはインタビュアーなどをするときには、“リアルタイムで編集する”ということを強く意識しています。限られた時間の中で、その人の持ち味をどのように出せるのか考えていますね。

そもそも僕のキャリアは、大学在学中に始めたライターの仕事からスタートしました。パソコンやネット系の雑誌を中心に、当時の出版界の「面白ければ何でもあり」という価値観の中で育ってきたので、箕輪さんの「猛獣に引かれる」という感覚にはとても共感できるんです。正義というよりもまず、面白い人や物事を世の中に紹介したいという思いがあります。

ジャーナリストと編集者という違った領域でありながら、面白い人物に対する貪欲さは共通しているんですね。

津田
普通の人は、知らない人と会ってコミュニケーションを取るのに疲れてしまいますよね。けれども、僕や箕輪さんのような「面白がり」な人間は、面白い人との出会いを続けていても疲れるということがないんです。
箕輪
全く刺激がない同期会みたいな集まりには、トイレに行くふりをして帰ってしまいますけどね(笑)。僕が面白いと思う人のほとんどは、考え方がとてもポジティブだし「世の中をこうしたい」という考えを持っている。そんな発想を聞いていると、とても刺激的なんですよね。

世間とは一線を画す「猛獣」たちが注目を集める一方、SNSを中心にして、同調圧力は強まっているように感じられます。世間とズレた発言をすれば、炎上してしまうこともしばしばです。特に箕輪さんはご自身のことを「放火魔」と言っていますが…。

箕輪
人の主張には前後の文脈があるものなのに、(Twitterの「つぶやき」の上限文字数である)140文字だけを抜き出したら、炎上するのは当たり前です。同じ内容でも、文脈を共有している本であれば炎上しないですからね。僕はこれまで炎上も経験していますし、時には「効率よく注目が集まるから」という思いはなくもないです。でも別に率先して燃やそうとしているわけではありません。だから、過度に気にしてもいませんね。

一方、僕が付き合っている“本物”は、「炎上マーケティング」なんかじゃなく、言いたいから言ってるだけなんです。もうキャラとして狂ってるから、勝ちなんですよ。見城(徹)さんの強烈なキャラを前にすると、こっちの変人さなんて吹き飛んでしまって、自分がいかに凡人かと思い知らされます(笑)。もっともっと狂わないとダメだと焦ります。
津田
よく分かります。でも、そういう“本物”たちも先天的にではなく、ある時期に意識的に「社会的であること」を捨てて、後天的に自分の中の「変人」を育てていっている気がしますね。
箕輪
確かに。ちなみに「放火魔」というのは、そういう炎上うんぬんの話ではなく、世の中に火を投げ込んで、そこに世間が騒いでいるときには、次の火を放っているという意味なんです。具体的に言うと、僕は本を編集することによって、“価値観の断絶”を照らしたいと考えています。

“価値観の断絶”とは?

箕輪
例えば堀江さんの『多動力』では、旧世代の「コツコツやるのが大事」という意見に対して、「とりあえずやってみて、失敗したら次に行け」という次世代の価値観を提示しています。
旧世代が「メールをした後には電話をしないと失礼だ」という価値観を持っている一方、堀江さんは「電話がかかってくるのは仕事の邪魔」として、絶対に電話には出ません。 僕が編集している本は、そんな上司世代と部下世代の間にある価値観のゆがみを照らしているから炎上したり、批判めいたコメントをされることも多いんです。

環境が激変している渦中だからこそ、世代によって価値観がガラッと変わってしまう。それによって、賛同と同時に反発が生まれるんですね。

箕輪
先日出版した『お金2.0』も同様です。この本もまた、フィンテック(※ICT技術を駆使した金融サービス)や、「タイムバンク」「VALU」といったサービスに象徴されるような評価経済などの新しい経済的価値観と、これまでの常識に則った旧来型経済の「継ぎ目」を描いている。この内容の一部分を、NewsPicks(※ニュース共有サイト)の有料会員向けに配信したら絶賛の嵐で迎え入れられたのに、無料で一般配信したときには、上の世代から「評価経済なんて実現しない」と激しい反発を受けました。

佐藤 航陽 著『お金2.0 新しい経済のルールと生き方』/NewsPicks Book

まさに世代間や、コミュニティーによって受け取り方が異なる典型ですね。

箕輪
おそらく、年長世代がこれまで培ってきた確固たる価値観が揺るがされることで、強い反発の感情が生まれるんでしょうね。
津田
箕輪さんは価値観が変わることにワクワクしますよね。けど、反発を覚える人は「価値観が変わることが怖い」と感じてしまうのでしょう。僕自身も、自分が信じてきたものが崩れるのは最高の体験だと思うんですけどね。価値観が崩れることによって、人生を否定された気持ちになってしまう人は少なくありません。年長世代だけでなく、今の学生たちも、炎上とかすごい怖がるんですよ。
『まだ東京で消耗してるの?』(幻冬舎新書)や『なぜ僕は「炎上」を恐れないのか』(光文社新書)などの著作があるイケダハヤトさん(2009年政治経済学部卒業)は「炎上ブロガー」と呼ばれていますが、彼が言っていることを要約すれば「信じていたものにしがみつかない方が自由になれる」ということ。価値観が変わることに対する恐れがないんです。
「はあちゅう」を目指しても意味がない大切なのは自分の「山」を築くこと

多くの人々がSNSを使いこなすのが当たり前になり、芸能人ではないにも関わらず「インフルエンサー」として他者に影響を与える人々も増え、学生の中にも彼らに憧れる人は少なくありません。お二人ともTwitter上での動向が大きな注目を集めるインフルエンサーですが、この状況についてはどのように考えていらっしゃいますか?

津田
まず、インフルエンサーと呼ばれる人たちは、自分が面白いと感じることに対して、衝動的に突き動かされて活動をしている人がほとんど。身もふたもないことを言えば、「インフルエンサーになりたい」と思って、インフルエンサーになった人はいません。評価経済が来るからやっていたんじゃない。何かをしていたら結局そう呼ばれていた人ばかりだと思います
起業したいと誰かに相談する人は、大抵起業しないのと同じですね(笑)。起業もインフルエンサーも、それが目的ではなくあくまでも手段でしかありません。漠然とした憧れではなく、「○○をしたい」という強い衝動にならないといけないと思います。
箕輪
僕自身「インフルエンサーになるには?」という相談を受けることがしばしばあります。サラリーマンという立場ながら、バズを生み出せる人はまだ少ないですし、ちょっと手の届くサラリーマン兼インフルエンサーとみなされているんでしょう(笑)。
そういった相談を受けたときにいつも言うことは「○○っぽい」という時点で、すでにその人の価値はない。インフルエンサーと呼ばれる人は、それぞれがそれぞれの山を築いていて、例えば、はあちゅうさん(※伊藤春香さん・ブロガー)が作った山を今から登っても、意味がありません。インフルエンサーを目指すなら、どんなに小さい山でもいいから自分の山を作ることしかないでしょうね。

特に、学生のうちにはそのような「衝動」や「山」を見つけることが難しいと思いますが、どのようにして見つけられるものでしょうか?

津田
まずは、いろいろな場所に足を運ぶこと。面白いことをやっている人がいたらその場所に行き、勇気を持って話し掛けてみることです。それだけで世界が変わることもあります。特に、僕らのような年長世代は、若い人や学生をむげにすると、罪悪感を感じてしまいます(笑)。学生という立場は特権なので、会いたい人にどんどん会いに行くべきでしょう。
箕輪
僕の場合は、津田さんの意見と真逆の学生生活を送っていました。第一文学部限定のフットサルサークルという閉じられた中でずっと偉そうにしていたんです(笑)。いわゆる「お山の大将」として、外界を全く知らずに居心地よく生きていた。
ただ、そのような毎日を送ることで、根拠もなく個性や自信が肥大化していき、それが今の仕事にも生きているように感じます。外の世界を知り、面白い人と出会って自分が相対化されることも大事ですが、閉じられた中で根拠なく自信を深めていくという方法もありますよね。
津田
そうですね。統計によれば、スポーツ選手には4〜5月生まれが圧倒的に多いんです。小さい子どもだと、同学年の4月生まれと3月生まれでは圧倒的に体格が違うので、4〜5月生まれの人々は周りから「すごい!」と評価され続けてきた原体験を持っている。外の世界を知らないままに、褒められて自信を身に付けるのも有効ですよね。
箕輪
まさに僕はそのタイプです(笑)。今、大学で居心地の悪さを感じているならどんどん外に出るべきだし、大学生活が楽しいならば「どうせ井の中の蛙(かわず)なんだ…」と卑下する必要はない。大切なのは、自分の「山」を作ることなんです。
プロフィール
箕輪 厚介(みのわ・こうすけ)
幻冬舎・編集者。1985年東京都生まれ。2010年双葉社に入社、女性ファッション雑誌の広告営業としてイベントや商品開発を手がけ、雑誌『ネオヒルズジャパン』(与沢翼責任編集長)を制作。2014年から編集部に異動し、見城徹『たった一人の熱狂』、堀江貴文『逆転の仕事論』などを担当。2015年幻冬舎に入社。堀江貴文『多動力』、イケダハヤト『まだ東京で消耗してるの?』、佐藤 航陽『お金2.0』、落合陽一『日本再興戦略』など話題作を作りながら、各媒体でのコラム執筆、講演、オンラインサロン運営、堀江貴文大学校で特任教授、無人島やランジェリーショップのプロデュースなど、“編集者”の枠を拡大し多方面で活躍中。2017年10月合同会社波の上商店を設立。2018年1月末に設立する、株式会社CAMPFIREと株式会社幻冬舎の共同出資会社・株式会社エクソダス取締役に就任。
https://naminoueshoten.com/gyoumu-naiyou/
津田 大介(つだ・だいすけ)
ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。ポリタス編集長。1973年生まれ。東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。早稲田大学文学学術院教授。大阪経済大学情報社会学部客員教授。テレ朝チャンネル2「津田大介 日本にプラス+」キャスター。J-WAVE「JAM THE WORLD」ニュース・スーパーバイザー。一般社団法人インターネットユーザー協会(MIAU)代表理事。メディア、ジャーナリズム、IT・ネットサービス、コンテンツビジネス、著作権問題などを専門分野に執筆活動を行う。ソーシャルメディアを利用した新しいジャーナリズムをさまざまな形で実践。 世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ2013」選出。主な著書に『ウェブで政治を動かす!』(朝日新書)、『動員の革命』(中公新書ラクレ)、『情報の呼吸法』(朝日出版社)、『Twitter社会論』(洋泉社新書)、『未来型サバイバル音楽論』(中公新書ラクレ)、『「ポスト真実」の時代』(祥伝社)ほか。2011年9月より週刊有料メールマガジン「メディアの現場」を配信中。
http://tsuda.ru/
取材・文:萩原 雄太(はぎわら・ゆうた)
1983年生まれ、かもめマシーン主宰。演出家・劇作家・フリーライター。早稲田大学在学中より演劇活動を開始。愛知県文化振興事業団が主催する『第13回AAF戯曲賞』、『利賀演劇人コンクール2016』優秀演出家賞、『浅草キッド「本業」読書感想文コンクール』優秀賞受賞。かもめマシーンの作品のほか、手塚夏子『私的解剖実験6 虚像からの旅立ち』にはパフォーマーとして出演。
http://www.kamomemachine.com/
撮影:加藤 甫(かとう・はじめ)
“猛獣”使い・箕輪厚介バズるコンテンツの作り方

Twitter、Instagram、LINEなど、今やSNSは生活インフラとして欠かせないものとなっています。この10年あまり、単なるWebサービスという枠を超え、SNSは社会の姿をすっかりと変えてしまいました。

早稲田大学文学学術院教授であり、ジャーナリストの津田大介さんは、黎明(れいめい)期からその発展をリサーチし続け、Twitterで実況することを意味する「tsudaる」というスラングが生み出されるほど、SNSの新しい動きを象徴する人物。一方、箕輪厚介さん(2009年第一文学部卒業)は、堀江貴文さん、幻冬舎社長の見城徹さん、そしてメディアアーティストの落合陽一さんといった先駆者たちの書籍を手掛けてきただけでなく、自らSNSを駆使して次から次へと話題を生み出している、幻冬舎の敏腕編集者です。

今回の対談では、「炎上」「評価経済」「インフルエンサー」などのキーワードを軸に、SNS時代の哲学について伺いました。果たして、このSNS社会を、私たちはどのように生き抜いていけばいいのでしょうか? 対談は、出版社社員であると同時に、オンラインの編集サロンも率いる箕輪さんが、どのように自らの道を切り開いてきたのかというお話から始まります。

左から箕輪厚介さん、津田大介さん
箕輪
今日はよろしくお願いします。普段、無茶苦茶なことを言ったりやったりしているので、ジャーナリストとしてマジメに正義を追求する津田さんを前にすると、緊張してしまいますね。
津田
そんな必要ありませんよ。今でこそ、ニュースに出たりしてマジメな人と思われがちですが、なんでマジメな人間が金髪にしてるんだって話です(笑)。

箕輪さんはこれまでに、幻冬舎のカリスマ社長・見城徹さんの『たった一人の熱狂』(幻冬舎文庫)、堀江貴文さんの『多動力』(幻冬舎)、そして格闘家・青木真也さんの『空気を読んではいけない』(幻冬舎)など、数々のヒット本を手掛けられており、出版業界では「天才編集者」とも呼ばれる存在です。出版不況の時代に、なぜそんなに次々と売れる本を作れるのでしょうか?

箕輪
僕が本を書いてほしいと思って声を掛けるのは、世間から「猛獣」と呼ばれるような異端の存在です。彼らは、どんなにかき混ぜても世間と分離してしまうようなアクの強い個性を持っています。売れる・売れないというよりも先に、まずそんなアクの強い人が好きなんです。そんな個性を料理して、読み物としてどれだけ面白いものが作れるかを考えていますね。

マーケティングの結果ではなく、「売れるかどうか」よりも「面白いかどうか」を優先されているんですね。

箕輪
ただ、本が売れることとアクの強さは、全くかけ離れたものではありません。そもそも「異端だけれども売れない」というような人には、僕は感覚としてあまり興味を抱けない。僕が興味を引かれるのは、類まれなる個性と、そしてその個性が、今の時代に刺さるような人たちなんです。

箕輪さんは「猛獣」たちのどのような部分に面白さを感じるのでしょうか?

箕輪
誤解されがちなんですが、奇をてらったり、過剰なことを発言することばかりが彼らの魅力ではありません。例えば昨年末に出版し、2カ月で10万部以上の発行部数を記録している『お金2.0』(NewsPicks Book)の著者であるメタップス社長の佐藤航陽さん(法学部出身)は、本を作るにあたって「印税はいらないので、宣伝費としてお使いください」と言っていました。

なぜなら印税をもらっても、結局もらったお金は自分の活動や意図を広く伝えるために使うのだから、はなから本の宣伝費としてしまう方が合理的という考え方なんです。…確かにとは思いますけど、世間からすればおかしいですよね(笑)。
津田
「あえてズレる」のではなく「淡々とズレている」ということですよね。
箕輪
まったくその通りです。本人は自分ルールの中で自然にやっているから、それが普通の感覚だと思っているんです。堀江さんの『多動力』にしても、僕が客観的に見て面白いと思うところを取り上げています。彼は、常にスマホをいじっているし、比喩ではなく秒単位で動いている。そういう人たちの「ここがおかしい」「ここがすごい」というところを見つけ、一般化させて、時代と衝突させることによって、バズるコンテンツを作るのが編集者としての僕の役割なんです。
津田
堀江さんは、考え方そのものだけじゃなく、人との距離のとり方やコミュニケーションの仕方も独特ですよね。そもそも、すごい人ってみんな変人なんですよ。僕もライターとして年間300人以上にインタビューしてきた経験からすると、“ガチ”な人というのは第一声で分かる。箕輪さんのような編集者が“翻訳”することによって、そのユニークさを世間も分かりやすく理解することができます。
箕輪
他にも、格闘家の青木真也さん(2006年人間科学部卒業)は、対戦した相手を骨が折れるまで徹底的に攻撃したり、中指を立てて侮辱するような、いわゆる問題児です。そんな、個体として世間から完全に浮いてしまってる彼を“翻訳”し、「空気は読まなくてはいけないものだ」という風潮にぶつけることで、ヒット本となりました。本人がブログに辛らつなことを書いてもバズらないことがあるのは、その面白さが社会の持っている文脈に接続していないから。著者の固有性を世間の空気につなぐのが編集者の役割だと思っています。
世間や炎上は怖くない価値観の崩壊を面白がれ

津田さんの仕事も、箕輪さんのような「編集」という側面があるのでしょうか?

津田
僕の場合、シンポジウムやパネルディスカッションの司会、あるいはインタビュアーなどをするときには、“リアルタイムで編集する”ということを強く意識しています。限られた時間の中で、その人の持ち味をどのように出せるのか考えていますね。

そもそも僕のキャリアは、大学在学中に始めたライターの仕事からスタートしました。パソコンやネット系の雑誌を中心に、当時の出版界の「面白ければ何でもあり」という価値観の中で育ってきたので、箕輪さんの「猛獣に引かれる」という感覚にはとても共感できるんです。正義というよりもまず、面白い人や物事を世の中に紹介したいという思いがあります。

ジャーナリストと編集者という違った領域でありながら、面白い人物に対する貪欲さは共通しているんですね。

津田
普通の人は、知らない人と会ってコミュニケーションを取るのに疲れてしまいますよね。けれども、僕や箕輪さんのような「面白がり」な人間は、面白い人との出会いを続けていても疲れるということがないんです。
箕輪
全く刺激がない同期会みたいな集まりには、トイレに行くふりをして帰ってしまいますけどね(笑)。僕が面白いと思う人のほとんどは、考え方がとてもポジティブだし「世の中をこうしたい」という考えを持っている。そんな発想を聞いていると、とても刺激的なんですよね。

世間とは一線を画す「猛獣」たちが注目を集める一方、SNSを中心にして、同調圧力は強まっているように感じられます。世間とズレた発言をすれば、炎上してしまうこともしばしばです。特に箕輪さんはご自身のことを「放火魔」と言っていますが…。

箕輪
人の主張には前後の文脈があるものなのに、(Twitterの「つぶやき」の上限文字数である)140文字だけを抜き出したら、炎上するのは当たり前です。同じ内容でも、文脈を共有している本であれば炎上しないですからね。僕はこれまで炎上も経験していますし、時には「効率よく注目が集まるから」という思いはなくもないです。でも別に率先して燃やそうとしているわけではありません。だから、過度に気にしてもいませんね。

一方、僕が付き合っている“本物”は、「炎上マーケティング」なんかじゃなく、言いたいから言ってるだけなんです。もうキャラとして狂ってるから、勝ちなんですよ。見城(徹)さんの強烈なキャラを前にすると、こっちの変人さなんて吹き飛んでしまって、自分がいかに凡人かと思い知らされます(笑)。もっともっと狂わないとダメだと焦ります。
津田
よく分かります。でも、そういう“本物”たちも先天的にではなく、ある時期に意識的に「社会的であること」を捨てて、後天的に自分の中の「変人」を育てていっている気がしますね。
箕輪
確かに。ちなみに「放火魔」というのは、そういう炎上うんぬんの話ではなく、世の中に火を投げ込んで、そこに世間が騒いでいるときには、次の火を放っているという意味なんです。具体的に言うと、僕は本を編集することによって、“価値観の断絶”を照らしたいと考えています。

“価値観の断絶”とは?

箕輪
例えば堀江さんの『多動力』では、旧世代の「コツコツやるのが大事」という意見に対して、「とりあえずやってみて、失敗したら次に行け」という次世代の価値観を提示しています。
旧世代が「メールをした後には電話をしないと失礼だ」という価値観を持っている一方、堀江さんは「電話がかかってくるのは仕事の邪魔」として、絶対に電話には出ません。 僕が編集している本は、そんな上司世代と部下世代の間にある価値観のゆがみを照らしているから炎上したり、批判めいたコメントをされることも多いんです。

環境が激変している渦中だからこそ、世代によって価値観がガラッと変わってしまう。それによって、賛同と同時に反発が生まれるんですね。

箕輪
先日出版した『お金2.0』も同様です。この本もまた、フィンテック(※ICT技術を駆使した金融サービス)や、「タイムバンク」「VALU」といったサービスに象徴されるような評価経済などの新しい経済的価値観と、これまでの常識に則った旧来型経済の「継ぎ目」を描いている。この内容の一部分を、NewsPicks(※ニュース共有サイト)の有料会員向けに配信したら絶賛の嵐で迎え入れられたのに、無料で一般配信したときには、上の世代から「評価経済なんて実現しない」と激しい反発を受けました。

佐藤 航陽 著『お金2.0 新しい経済のルールと生き方』/NewsPicks Book

まさに世代間や、コミュニティーによって受け取り方が異なる典型ですね。

箕輪
おそらく、年長世代がこれまで培ってきた確固たる価値観が揺るがされることで、強い反発の感情が生まれるんでしょうね。
津田
箕輪さんは価値観が変わることにワクワクしますよね。けど、反発を覚える人は「価値観が変わることが怖い」と感じてしまうのでしょう。僕自身も、自分が信じてきたものが崩れるのは最高の体験だと思うんですけどね。価値観が崩れることによって、人生を否定された気持ちになってしまう人は少なくありません。年長世代だけでなく、今の学生たちも、炎上とかすごい怖がるんですよ。
『まだ東京で消耗してるの?』(幻冬舎新書)や『なぜ僕は「炎上」を恐れないのか』(光文社新書)などの著作があるイケダハヤトさん(2009年政治経済学部卒業)は「炎上ブロガー」と呼ばれていますが、彼が言っていることを要約すれば「信じていたものにしがみつかない方が自由になれる」ということ。価値観が変わることに対する恐れがないんです。
「はあちゅう」を目指しても意味がない大切なのは自分の「山」を築くこと

多くの人々がSNSを使いこなすのが当たり前になり、芸能人ではないにも関わらず「インフルエンサー」として他者に影響を与える人々も増え、学生の中にも彼らに憧れる人は少なくありません。お二人ともTwitter上での動向が大きな注目を集めるインフルエンサーですが、この状況についてはどのように考えていらっしゃいますか?

津田
まず、インフルエンサーと呼ばれる人たちは、自分が面白いと感じることに対して、衝動的に突き動かされて活動をしている人がほとんど。身もふたもないことを言えば、「インフルエンサーになりたい」と思って、インフルエンサーになった人はいません。評価経済が来るからやっていたんじゃない。何かをしていたら結局そう呼ばれていた人ばかりだと思います
起業したいと誰かに相談する人は、大抵起業しないのと同じですね(笑)。起業もインフルエンサーも、それが目的ではなくあくまでも手段でしかありません。漠然とした憧れではなく、「○○をしたい」という強い衝動にならないといけないと思います。
箕輪
僕自身「インフルエンサーになるには?」という相談を受けることがしばしばあります。サラリーマンという立場ながら、バズを生み出せる人はまだ少ないですし、ちょっと手の届くサラリーマン兼インフルエンサーとみなされているんでしょう(笑)。
そういった相談を受けたときにいつも言うことは「○○っぽい」という時点で、すでにその人の価値はない。インフルエンサーと呼ばれる人は、それぞれがそれぞれの山を築いていて、例えば、はあちゅうさん(※伊藤春香さん・ブロガー)が作った山を今から登っても、意味がありません。インフルエンサーを目指すなら、どんなに小さい山でもいいから自分の山を作ることしかないでしょうね。

特に、学生のうちにはそのような「衝動」や「山」を見つけることが難しいと思いますが、どのようにして見つけられるものでしょうか?

津田
まずは、いろいろな場所に足を運ぶこと。面白いことをやっている人がいたらその場所に行き、勇気を持って話し掛けてみることです。それだけで世界が変わることもあります。特に、僕らのような年長世代は、若い人や学生をむげにすると、罪悪感を感じてしまいます(笑)。学生という立場は特権なので、会いたい人にどんどん会いに行くべきでしょう。
箕輪
僕の場合は、津田さんの意見と真逆の学生生活を送っていました。第一文学部限定のフットサルサークルという閉じられた中でずっと偉そうにしていたんです(笑)。いわゆる「お山の大将」として、外界を全く知らずに居心地よく生きていた。
ただ、そのような毎日を送ることで、根拠もなく個性や自信が肥大化していき、それが今の仕事にも生きているように感じます。外の世界を知り、面白い人と出会って自分が相対化されることも大事ですが、閉じられた中で根拠なく自信を深めていくという方法もありますよね。
津田
そうですね。統計によれば、スポーツ選手には4〜5月生まれが圧倒的に多いんです。小さい子どもだと、同学年の4月生まれと3月生まれでは圧倒的に体格が違うので、4〜5月生まれの人々は周りから「すごい!」と評価され続けてきた原体験を持っている。外の世界を知らないままに、褒められて自信を身に付けるのも有効ですよね。
箕輪
まさに僕はそのタイプです(笑)。今、大学で居心地の悪さを感じているならどんどん外に出るべきだし、大学生活が楽しいならば「どうせ井の中の蛙(かわず)なんだ…」と卑下する必要はない。大切なのは、自分の「山」を作ることなんです。
プロフィール
箕輪 厚介(みのわ・こうすけ)
幻冬舎・編集者。1985年東京都生まれ。2010年双葉社に入社、女性ファッション雑誌の広告営業としてイベントや商品開発を手がけ、雑誌『ネオヒルズジャパン』(与沢翼責任編集長)を制作。2014年から編集部に異動し、見城徹『たった一人の熱狂』、堀江貴文『逆転の仕事論』などを担当。2015年幻冬舎に入社。堀江貴文『多動力』、イケダハヤト『まだ東京で消耗してるの?』、佐藤 航陽『お金2.0』、落合陽一『日本再興戦略』など話題作を作りながら、各媒体でのコラム執筆、講演、オンラインサロン運営、堀江貴文大学校で特任教授、無人島やランジェリーショップのプロデュースなど、“編集者”の枠を拡大し多方面で活躍中。2017年10月合同会社波の上商店を設立。2018年1月末に設立する、株式会社CAMPFIREと株式会社幻冬舎の共同出資会社・株式会社エクソダス取締役に就任。
https://naminoueshoten.com/gyoumu-naiyou/
津田 大介(つだ・だいすけ)
ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。ポリタス編集長。1973年生まれ。東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。早稲田大学文学学術院教授。大阪経済大学情報社会学部客員教授。テレ朝チャンネル2「津田大介 日本にプラス+」キャスター。J-WAVE「JAM THE WORLD」ニュース・スーパーバイザー。一般社団法人インターネットユーザー協会(MIAU)代表理事。メディア、ジャーナリズム、IT・ネットサービス、コンテンツビジネス、著作権問題などを専門分野に執筆活動を行う。ソーシャルメディアを利用した新しいジャーナリズムをさまざまな形で実践。 世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ2013」選出。主な著書に『ウェブで政治を動かす!』(朝日新書)、『動員の革命』(中公新書ラクレ)、『情報の呼吸法』(朝日出版社)、『Twitter社会論』(洋泉社新書)、『未来型サバイバル音楽論』(中公新書ラクレ)、『「ポスト真実」の時代』(祥伝社)ほか。2011年9月より週刊有料メールマガジン「メディアの現場」を配信中。
http://tsuda.ru/
取材・文:萩原 雄太(はぎわら・ゆうた)
1983年生まれ、かもめマシーン主宰。演出家・劇作家・フリーライター。早稲田大学在学中より演劇活動を開始。愛知県文化振興事業団が主催する『第13回AAF戯曲賞』、『利賀演劇人コンクール2016』優秀演出家賞、『浅草キッド「本業」読書感想文コンクール』優秀賞受賞。かもめマシーンの作品のほか、手塚夏子『私的解剖実験6 虚像からの旅立ち』にはパフォーマーとして出演。
http://www.kamomemachine.com/
撮影:加藤 甫(かとう・はじめ)
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