茫然自失。
今の私の状況は、ひとまずこの言葉が似合うのではないだろうか。
いざ思考を巡らせようとするも私の頭の中はとうに「何故」だの「どうして」だの、疑問ばかりで埋まっている。
この状態ではいくら考えてもキリがない。一旦この疑問に身を委ねよう。
……。
何故ライムさんがここに?
ライムさんはルミ先生と脱出したはず。
脱出ゲートが閉じるのもしっかりとこの目で見た、これは間違いない。
それに……。
あぁ、そうだった。
今私の目の前には、ライムさんがいるんだ。
頭の中を色々整理させているうちに、どうやら誤解をさせてしまったみたいだ。
私は仰向けの状態から慌てて上半身を起こす。
ライムさんを安心させるため、起こすと同時に微笑みも取り繕う。
脱出したはずのライムさんがここにいる。
それだけで私の中は不安で溢れている。
ちゃんと笑えているだろうか。
声は震えていないだろうか。
少し目頭が熱いのは、先の不安からかライムさんとまた会えた高揚からだろうか。
どれにせよライムさんの私に対する心配は薄れたようだ。
……良かった。
すっかり杞憂が晴れたライムさんはそう言いながら私に手を差し出す。
その手は、いつか私がぞんざいに引っ張ってしまった小さな手。
あなたを、ライムさんを無視してただ強く握ってしまっていた手。
その手は私にとって多大な熱を帯びていて、私が触れていいものなのかわからない。
だって、私は。
躊躇う私にライムさんは小首を傾げる。
……。
………。
私は首を横に振る。
ここがなんなのかわからない。
いつもの休憩所なのか、はたまた一種の走馬灯のようなものなのか。
小さな私にとって、きっとここは大きすぎる。
でも。
でも、もしここが誰かが私に与えてくださったチャンスなのだとしたら。
そうだったら、もうこの子の手を私任せになんてしない。
絶対に。
今度こそは。
私はライムさんの手を。
たんぽぽの綿毛に触れるように優しく取った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。