休日に静岡県の伊豆縦貫道(伊豆中央道や修善寺道路)を走っていると、料金所に「ETCは使えません」と書かれている“ETCっぽいレーン”を見つけた。ゲートに掲げられていたのは「ETCX」というロゴだ。
名前は似ているのに高速道路のETCとは異なり、必ず一旦停止が必要との注意書きも。ではETCXとは何者なのか。さらに“もう一つの仲間”である「ETCGO」と何が違うのかを整理してみた。
ETCXは、ETCソリューションズが提供する「ETCカードを街中決済に広げる」サービスだ。
高速道路のETC車載器とETCカードをそのまま使い、駐車場やドライブスルー、有料道路などで車内からキャッシュレス決済できるようにする。サービス基盤はソニーペイメントサービスらが構築し、運用や会員管理はETCソリューションズが担う仕組みだ。ETC本線のノンストップ課金(本家ETC)とは別のシステムとして設計されている。
使い方は、まず事前に会員サイトでクレジットカードとETCカードをひも付ける。そして、決済時は登録済みETCカードを車載器に挿した状態で“ETCXレーン”に一旦停止して決済する。本家ETCのように走行しながら通過することはできない。伊豆中央道・修善寺道路を所管する静岡県道路公社の案内でも「高速道路のETCとは別サービス」「必ず一旦停止」と明記されている。
高速道路のETCカードと車載器をそのまま使えるといっても、「ETCカードなら何でもOK」でもない点も注意したい。ETCXは「登録するクレジットカードとETCカードは同一発行会社」といった条件があり、対応発行会社は順次拡大してきた。2024年秋時点の公式一覧では、楽天カードを含む複数の発行会社に対応が広がっているが、非対応の券種や発行会社も残る。最新の対応状況は公式の「ご利用可能カード一覧」で確認できる。
冒頭の「ETCは使えません」という掲示は、ETCという言葉が付くものの「高速道路のETC」ではないことを示すためのものだ。見た目が似ていても仕組みが違う。ここが混乱のタネになりやすい。
ETCXは、有料道路では伊豆縦貫道や熱海ビーチライン(いずれも静岡県)や箱根ターンパイク(神奈川県)、鳥飼仁和寺大橋有料道路(大阪府)、松島有料道路(熊本県)に導入されている。なぜこれらの有料道路は、本家ETCではなくETCXを導入したのだろうか。
その理由は導入コストの安さだ。ノンストップ通過ではなく一旦停止型とすることで、アンテナ設備やサーバーの性能、料金所職員の安全確保のための構造を大幅に簡素化できる。
もっとも、伊豆縦貫道は2026年度末を目標に、ETCXに加えて本家ETCレーンの設置も決めている。その際の改修を実施するとしているが、ノンストップ通過を実現するため、車両検知器や無線アンテナ、遮断機、表示機器、中央サーバー改良、新しいETC室、受配電設備の改良、料金所職員の安全確保のための立体通路設置など、大掛かりな工事が必要になるという。ETCXならこれらを省けるというわけだ。
ETCXには、いわばPayPayと楽天Payの関係のような仲間「ETC-GO」も存在する。
こちらはアマノ、日立製作所、首都高速道路、首都高ETCメンテナンスが共同で事業化したサービスだ。ETCXと異なり利用者側の事前登録は不要で、対応ETCカードを挿したまま料金所で一旦停止すれば決済が完了する。
導入は有料道路から広がっており、三浦縦貫道路が2025年1月に本格導入、逗葉新道も続き、埼玉の三郷流山橋有料道路でも対象カードを拡大しながら運用中だ。駐車場などへの横展開も想定されている。
一方で対応カードは現時点で限定的で、楽天のETCカードなども未対応だ。使えるかどうかは出発前に公式情報で確認したい。
まとめると、ETCXとETC-GOはいずれも“本家ETCカードと車載機を使った停止前提のキャッシュレス決済”で、設備を簡素化しやすい分、導入ハードルが低い。一方で、高速道路のETCのようなノンストップ通過はできないし、対応カードにも制限がある。現地ではロゴと案内表示で見分けられる。
ETCXは会員登録が前提、ETCGOは登録不要。ただし対応カードはETCXは充実しているが、ETCGOは順次拡大中でまだ少ない──。といった違いを覚えておくと良いだろう。
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