お腹がとってもすいた時にいただくひと口のみそ汁と真っ白なご飯。「うまい! しあわせ〜!」と、この上ない喜びを感じる瞬間ですね。
ご家庭の食卓にはご家族の健康を気遣ってつくられた、体に優しくて美味しい料理が並んでいることでしょう。ないとうクリニック複合サービスセンターでは、皆さんのご家庭でのその食事に負けないよう、管理栄養士さんが一生懸命献立を考え、プロの調理師さんたちがセンター内の厨房で心を込めて料理をつくり、配達ではない「つくりたてのおいしいお食事」を提供しています。
また、ご高齢の方や障がいを持たれている方の食事で忘れてはならいこと。それは「安全に食べていただくこと」です。当センターでは咀嚼(そしゃく/噛むこと)や嚥下(えんげ/飲み込むこと)の評価、訓練を担当する言語聴覚士が、利用者さまの体調や食べる力をチェックしています。その結果に基づいて医師、看護師、言語聴覚士、管理栄養士が相談して、噛みやすいように食材をやわらかくしたり、飲み込みやすいようにとろみをつけたりしてさまざまな工夫を重ねて適切な調理方法を判断しています。日本摂食嚥下リハビリテーション学会提唱の「嚥下調整食分類2021」も参考にしています。
「いつまでもおいしく食べて、食べられることの喜びを感じていただきたい」 当センターでは、皆さんの“食べる”をしっかり支えていきたいと思います。
こんにちは。在宅訪問管理栄養士の伊藤清世です。
皆さん、一緒に暮らす家族や大切な人が、今までのように食事が食べられなくなったら、誰に相談しますか?
病院の栄養士だった私が在宅訪問管理栄養士を目指すきっかけになったのは、再入院を繰り返す患者さまのご家族の「お家に帰ってからの食事づくりって、誰に聞いたらいいのかしら」という一言でした。退院して大好きなお家に帰ってきたのに、食事が食べられない…そんな時に相談できる場所が不足していることを実感しました。
実際、自宅で介護をしているご家族は、食事づくりや食事介助にたくさんの悩みを抱えており、楽しいはずの「食べること」「食事づくり」がいつの間にか苦痛になっていることもあります。
訪問栄養食事相談では「食を制限」するのではなく「食の幅を広げるためにどうするか」をご家族や関係職種とともに考えていきます。「いつまでも元気でいる食事」「一口でも楽しめる食事」…その方に合った「楽しい食事」を一緒に考えてみませんか?
自宅で過ごす高齢者の方とご家族の食の問題の解決を目指し、気軽に食に関する相談ができる場所になりたいと思っています。
読売新聞の「ヨミドクター」今日の健康レシピに隔週水曜日、簡単にできる介護食のレシピも掲載しております。
訪問栄養食事相談
食事の悩みはありませんか?
●訪問栄養食事相談では、こんなお困りごとに対応しております。
●糖尿病、腎臓病などの治療食のつくり方、
食品の選び方が分からない。
●食欲がなく、食事量が減ってきている。
●床ずれがなかなか治らない。
●ヘルパーに食事づくりのポイントを指導して欲しい。
●食べたり、飲んだりするとすぐにむせてしまう。
●本人の飲み込む力に合った食事が分からない。
●少量の食事で栄養が摂れる方法が知りたい。
●できる限り口から食べ続けたい。
※その他、療養生活にかかわる様々な相談
訪問栄養食事相談とは?
管理栄養士が患者さまのご自宅を訪問し、ご本人やご家族に身体の状況や生活上の都合を丁寧にお聞きし、安心できる食事のご提案と療養生活に必要な食環境づくりを支援します。 訪問栄養食事相談は、外来や入院中の栄養指導とは異なり、療養者宅でより実践的な栄養指導を行えることが特徴です。 ご自宅だけではなく、グループホームなどの施設に訪問することも可能です。
サービス内容
加齢や疾患などで、かむことやのみ込むことが困難になることがあります。
食べるたびにむせる、以前のように噛めなくなった…
食べたくても、食べられないもが増えてくると、食事そのものが楽しくない…
そんな理由で、食べることをあきらめてはいませんか?
食べる機能が低下してに、食事を楽しみたい。
そんな思いに対応できる厨房を、私たちは目指します。
おいしさは見た目から!
ないとうクリニック複合サービスセンターでは、月に1度の行事食を行っています。
どの食形態であっても思わず「食べたい!」と思える内容を心掛けています。
おいしさの要素の8割は視覚からの情報だということを知っていますか?
皆さんは、外食のメニューを見た時に、何を基準に選んでいるでしょうか。多くの場合「おいしそうなもの」つまり、「見た目」で選んでいるのではないでしょうか。
けれど、見ただけでは味も匂いもわからないのに、「食べたい!」と感じるなんて不思議ですね。そこには「食べた記憶」が関わります。私たちは料理を見た瞬間に、その匂いや味を記憶の中から想像しているそうです。「おいしそうな見た目」「食べた記憶のあるもの」という気持ちで食べ物を選ぶこと。それは、どんな障がいを抱えた方でも同じです。
また、おいしいと感じる要素には「食べやすさ」も関わります。おいしそうに見えても、食べてみたら固かった、のみ込みにくかった…。それではおいしさも半減します。食事では、「見た目と食べる機能に合った食形態」を提供することが重要です。
ないとうクリニック複合サービスセンターでは、食べる機能が低下した方にも、おいしく召し上がっていただけるような食事を目指します。
むせや誤嚥のリスクがある「きざみ食」は提供しません!
普通の食事を刻んだだけの「きざみ食」。高齢者にとって食べやすい食事に思われがちですが、実はとても食べにくい食事だということをご存知ですか。小さくしているから食べやすいはず…?では、粉々になったピーナッツやおせんべいを、噛まずにのみ込むことができるでしょうか? 「噛む」という動作は「歯」だけの問題ではありません。
1枚のおせんべいを食べることを想像してください。おせんべいを前歯でかじり取り、舌がせんべいを奥歯へ運びます。そして、唇を閉じ、頬と歯を密着させてすりつぶした後に、唾液と混ぜ合わせることで舌の上で一つのまとまりを作り出します。これが、「食塊(しょくかい)」という飲み込みに最も適した形態です。つまり、噛むということは舌、頬、顎など多くの器官が複雑に絡み合っている運動なのです。きざみ食のように、固いものもやわらかいものも一律にパラパラに刻まれた食事は、飲み込むときにまとまりません。その結果、のどのあたりに残ったり、気管に入ってしまうこと(誤嚥)があります。さらに、のみ込みにくさや見た目の悪さから、食欲低下や食事摂取量の低下を引き起こすこともあります。このように、噛む機能が低下している方にとって、「刻み食」はのみ込みにくいだけでなく、低栄養や体重減少のリスクにもつながります。では、噛む力が低下した方にとって、食べやすい食事とはどのようなものでしょうか? ポイントは、「やわらかい・まとまりやすい・べたつかない」の3点です。例えば、豚の角煮やふわふわのスクランブルエッグ、やわらかく煮た大根や煮りんご。どれも刻み食よりもおいしそうに感じます。当センターでは、その3点に配慮した「やわらか食」を提供し、噛む、のみ込む力を維持することを支援します。
やわらか食とソフト食
当センターでは常食、ペースト食のほかに、食事の時に咀嚼(かみくだいてまとめること)や嚥下(飲み込むこと)に問題がある利用者さまに対して、管理栄養士、言語聴覚士と委託給食業者が協同して「やわらか食」と「ソフト食」を作成しています。
「やわらか食」は歯や頬の筋力低下などの障がいがあって咀嚼しにくくなった方でも、口の中で食材をくだきやすくて、さらに飲み込みやすく一塊にしやすくなるように調理した食事形態です。当センターでは初の試みとしてこの「やわらか食」を、実は食べにくくていろいろと問題のある「きざみ食」に代わる食事として提供しています。私たちが普段食べている「常食」と見た目はほとんどかわりません。しかし、食べてみるとその“やわらかさ”に大きな違いがあり、ほんとうに食べやすくてとても驚きました。
「ソフト食」は咀嚼嚥下機能がさらに低下した方でも、喉につかえたり、まちがって気管に入ったりすることのないように工夫して調理した食事形態です。私も歯を全く使わないで舌だけで圧しつぶして食べる(飲み込む)ことができました。
どちらもひと手間もふた手間もかけて、より安全で美味しい食事を楽しんでいただけるように、お一人おひとりに適した食事として提供しています。
食事を楽しむことは栄養とリハビリの効果を上げます!
病気や加齢で食べる機能が低下すると、「食べるだけで疲れる」「十分な量を食べられない」「誤嚥する(=食べ物・飲み物・唾液が気管に入ること)」などの問題がよく起こります。
そのような方のために、言語聴覚士は食べる機能の回復トレーニングを指導したり、誤嚥しにくい食べ方やその方に適した食形態(=料理の大きさ・硬さ・粘度などの性状)を助言しています。その中でも食形態をどうするかは重要な検討項目です。そのような時に「やわらか食」のような形態があることはとても有用です。
実際、試食したときには、「容易に噛んで飲み込むことができるだけでなく、食感や風味があること」を感じられました。なぜなら、食べる機能が低下する時には「噛み砕く」だけに問題が起こることは少なく「口の中でひとまとまりにして喉へ送り込み、のみ込む」という運動に問題が起こることがほとんどです。食べる機能が低下した方の多くにとって、口やのどでばらける刻み食は食べにくく、誤嚥リスクが高い食形態です。それに比べて、やわらか食は、噛みやすく喉をまとまり良く通過するので、そのリスクも抑えられます。また、見た目や食感も良いので、食欲も湧きやすいのも特徴です。
通所リハビリテーションでもきざみ食で提供されていた方が、やわらか食に変更することで早食べが抑えられたり、以前よりも噛む動作が増えたという変化がありました。
食事を楽しむことができれば、栄養を十分に摂取でき歩行練習などの身体のリハビリもうまく進みます。反対に食べる楽しみが失われてしまうと、低栄養になりリハビリの効果が出なくなることもあります。
いつも食べている昼食が、知らずに体やお口のリハビリの効果を上げることにつながるかもしれません。
きざみ食を提供していた頃より、食事摂取量がアップ!
ソフト食は、きざみ食に比べて「食事」として認識しやすいと感じます。以前のきざみ食よりも食事摂取量がアップしている方もいるようです。
常食と同様のメニューをソフト食の方にも提供しているため、介助するスタッフも「これは●●だよ」など声掛けしやすくなっています。彩りもよいので目でも楽しめるため、利用者さまの食欲アップにつながっていると感じています。
利用者さまとほぼ同じものが提供されている職員の食事。「毎日、おいしくいただいています!」
高齢者向けの食事は味気なく、やわらかくて食べ応えがないイメージですが、そんなことはありません。
毎日おいしく食べられる理由として、1.やわらかすぎず、食感の感じられる硬さで提供されていること。2.塩分に配慮した献立内容ですが、小鉢それぞれの味付けに変化があること。3.上に紹介した行事食だけでなく、日々のお膳も彩りがよく、目でも楽しめる盛り付けになっていることです。