『同盟』(副司令) | hakumotoさんの投稿
『同盟』(副司令)
トワファンがクローズする前に書いてみたくなったので、副司令の物語。
はじまりとそれから。
誤脱があっても許してください。
非公式の個人の二次創作です。ご理解ください。
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『同盟』
始まりはなし崩しだった。
「なにがそんなに面白いんですか?」
ちっともわからない。
そんな本心が透けて見えたのだろう。司令は目線を一度ちらりと寄越すと、すぐに眠る人間の少女に視線を戻した。途端にウグイスは表情を取り繕うのをやめて、その顔全てに不快さを滲ませた。
亡骸に過ぎなかったものに血を与え力を分け与え、命をつなぐ。
ちっぽけな存在を生かすための手段を模索する我が崇高なる主の姿は、これまで見たことのないものだ。異様さがわずかに不安をかきたてる。
「無理してこちらにいる必要はないよ」
ウグイスは咄嗟に返事をし損ねた。この世界はそもそもやり直しが決まっている、もう終わる世界だ。忠誠を捧げた主が残っているから自分も残っているに過ぎないが、帰ればいいと言われるとどこかつまらない心地になる。
その人間より、私の方がよほど役に立つというのに。
みっともない嫉妬が喉元まで出かかった瞬間だった。
「でも君が戻ってしまうと、きっと私は困るだろうね。君ほど有能で忠実な者はいない」
先ほどとなにひとつ同じ調子で続けられて、思わず不満ごと言葉を飲み込んだ。こういうところが、この方のずるいところだ。こちらを見もしないままのくせに、ウグイスが欲しい言葉をくれる。
「有能で忠実……私はそれだけですか?」
「ああ、ひとつ忘れていた。ウグイスほどかわいい子も他にいない」
ようやくウグイスの目を見て微笑みかける。真実のような顔で偽りではない言葉を口にする。
だからウグイスは敬愛する主とともに、悪足掻きのためだけにもう終わる世界とちっぽけで惨めな生き物のそばにいるしかない。
「……帰りませんよ。お側にいると決めたのは、私ですから」
主の掌の上で踊らされているとわかっているからこそ、できるだけ目を奪うように踊ってやろうと企てを胸に秘め、自ら退路を断った。
■
──そうして結局なし崩しのまま、ここまできてしまった。
ウグイスは倦怠感の許すまま、呆然と目の前に広がる海を眺めている。
正直に言えば、永遠の王の一撃を防いだだけでもう体はズタボロもいいところで、カラスとハクチョウを送り届けたのは意地のようなものだった。その甲斐あってか、目の前には青く輝く海が広がっている。
「不滅の王、ホントに帰っちゃった……」
自分でも情けなくなるほど迷子のような声が、波の音で掻き消された。
司令の意図と黒い海の狙いに気づいたトリたちは、反旗を翻した。許されざる行為で、忌々しい。
黒が侵食し後には何も残さず、永遠の王と不滅の王が新しい世界をもたらす予定だった。そしてトリたちは不滅の王の慈悲によって新世界の新たな生命のひとつになるはずだったのに、彼女たちは自らその慈悲を余計なお世話だと払いのけた。まるで不快なものだと言わんばかりに。
カラスとハクチョウは不滅の王から授かった力を使って、異世界と繋がった扉を閉じることにした。ハクチョウを向こう側に捧げることで成功したのだろう。黒かった海は青く変わり、この世界に束の間の退屈な平穏をもたらしたようだ。
そしてウグイスはこちらの世界に残ってしまった。
「……はぁ、もう嫌になっちゃうな」
あの方は、私にこの世界を託した。
いや、後始末を全部投げられたのだろうか。それとも見守り続け、再び訪れるだろう審判の時に証言者として舞台にあがるように求められているのだろうか。どちらにしろ、ウグイスの献身と愛を人質にした策略だったというのに、いまだに憎めないことに思わず自嘲の笑みが浮かぶ。
ウグイスも全て放り投げ、逃げ出してしまおうか。甘い誘惑はそれほど魅力的には思えなかった。その理由を深く考えることすら忌々しく、ウグイスは海の果てを鋭い視線で睨みつけると、視界の隅に黒い影が見えた。
「やはり、生きていましたか」
青い海の際からこちらに向かって迷いなく歩いてくる様子に、ウグイスは呆れにも喜びにも似たため息とともに吐き出す。
黒い海が消えた世界では際立つ黒い塊はひとりの人間の姿をしており、長い髪をたなびかせて、ウグイスと同じような鋭い目つきでこちらを睨むように見据えていた。
目元が赤くなっていなければ、殺意しか感じなかったかもしれない。どちらにせよ似たようなものだ。煮えたぎる憎悪を薪のように心にくべることで、なんとか体を動かしているのだろう。心身共に疲れ切っているはずなのに、瞳だけは異様な光をたたえている。憎悪はきっとウグイスやハクチョウを犠牲にするしかなかったこの世界に、それから彼女自身にも向けられている。
そして同時に瞳に瞬く静かで冷静な光が、彼女を絶望に揺蕩うことを許さず導いているようにも見えた。あれはハクチョウが最後に彼女に託したものなのかもしれない。
そうしてウグイスの目の前まできたカラスは、感情を押し殺してかすれた声を発した。
「ウグイス、話がある」
副司令とは呼ばないことで、個人同士で向き合った話がしたい。だから逃げるな。そう突きつけられている気がした。馬鹿馬鹿しい、どこに逃げるというのだろう。
ウグイスは笑った。カラスは急に笑い出したウグイスに少しも怯まなかった。
「いいですよ、話してください」
互いに心から望むパートナーは他にいると承知の上だが、手を組むのもそう悪くないはずだ。カラスが口を開く。ウグイスは確信にも似た直感を信じてみることにした。
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コメント
- 捗りたい
8月18日
ありがとうございます…!二つの始まりの話、呼吸も忘れて拝読いたしました…!!!本当に司令はずるいお人(?)…!ウグイスという名や欲しい言葉を与えておきながら…!と何回読んでも唸ってしまいます…白本先生の書かれるトワツガイを永遠に噛み続けて今後も生きていきます…。永遠に愛しいキャラクター達を描き続けてくださり本当にありがとうございます…今後のご活躍も心よりお祈りしております!
- パンダんご
8月17日
独り青い海の前で佇むカラスの背中、までで停止していた世界が、確かにまた動き出した瞬間を見せて下さり、ありがとうございます。
ウグイスの目を通して描かれるカラスの姿は、まるで白熱する光のようにも感じました。
そしてウグイスも、ハクチョウと同じく“反対側の世界に独り残された”存在なのですよね……この同盟の行く末を、ずっと見守り続けたいです。
願わくばその機会が、またどこかで訪れますように!!
- はつ
8月17日
あの日の続きのお話をありがとうございます!✨✨✨
副司令、不憫で一生懸命で一途でかわいくて大好きなキャラクターなので副司令視点のお話とってもうれしいです!💚
「司令の側にいる」からはじまった副司令が、「終わるはずだった世界に残る」を決断するまでの葛藤や迷いをもっと知りたいです…!
感情ぐちゃぐちゃなウグイスさん、1番かわいいので…!!!
最後のギラギラカラスもすっごくかっこいいです👏👏👏
副司令と組んだカラスがこれからどう行動してくのか、気になりすぎるしワクワクします!!!!
来たれトワツガイ2部🙏🙏
- QAL
8月15日
まさかメインストーリーのエピローグが読めるとは…!!😭🙏
ウグイスさんって上位存在のはずなのに"惨めな生き物"に嫉妬したりちょっとした言葉で一喜一憂したりとやけに人間臭さがあって可愛いです😊
不滅の王もそういう見てて飽きないところが可愛いと思っていたのかも?
どんなに辛くても前へ進むことを諦めないカラスの姿に希望を見ました。
やっぱりカラスは強くて眩しい太陽なんだなぁ…
カラスなら絶対にハクチョウを迎えに行けると信じています。
手を組んだウグイスさんとカラスのその後がもっともっと読みたいです!
素敵なお話をありがとうございました!!!
- ヒロ
8月15日
始めと終わりのその後の物語…!
まさかこんなに素敵なお話を拝見できるとは思っていなかったので本当に嬉しいです!感謝しかありません…
本当はもっともっと先生の紡ぐ素敵な物語を見ていたいです…それほどまでトワツガイは自分の中で感動した…今でももっと色々なストーリーを見たいと切に願っている作品でした…
こうして二次制作としながらも、あの日の続きを見られて嬉しいです!
- 百合百合星人
8月15日
1番最初といっちばん最新のストーリーを拝読できるとは…!!!!
カラスさんの瞳がしっかりギラギラしていると分かり、心に希望が湧いてきました…本当に本当にありがとうございます😭🙌🏻✨
- マルメロ
8月15日
トワファンがクローズしてしまうので寂しいなぁと思っていたのですが、こんな素敵なプレゼントありがとうございます。
カラスとウグイスしかいないのに、そのやりとりの奥に不滅の王やハクチョウ、他のトリの皆の存在が感じられて、物語の新たな始まりにも見えて色々想像してしまいました。
- タケハタユウ
8月15日
最終節の司令と副司令を見て、副司令が某◯ャ乱でQなバンドの曲を泣きながら熱唱する姿を想像していたのですが……やっぱり司令はズルイ神様ですね🥺 帰るなら自分で扉閉めて帰って😭
あの後の🐦⬛の表情がすごく想像できて、やっぱりこの続きもどこかで見たいと熱望してしまいます。ありがとうございました。
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