「春の次は?」
- 夏
- 秋
正解!
不正解!
夏
十数年前の夏休み、学校の裏山で、僕はその男の子に出会った。彼とは、あの夏にしか会っていない。
「山の次は?」
- 海
- 川
正解!
不正解!
川
この合言葉も、今の子たちには通じないのだろうか。
「君と俺との関係は?」
- クラスメイト
- 秘密の友達
正解!
不正解!
秘密の友達
元来はずれものだった僕は、その見知らぬ男の子とは何故かすぐ仲良くなれた。
「この場所の名前は?」
- 荒れ放題の原っぱ
- 秘密基地
正解!
不正解!
秘密基地
裏山を上ったところの一角、そこを僕らは秘密基地と呼んだ。
「この場所に入るために必要なものは?」
- 秘密の符牒(合言葉)
- カードキー
正解!
不正解!
秘密の符牒(合言葉)
二人だけに分かる秘密の符牒、つまりは合言葉のようなものを共有して、夏休み中はいつもそこで過ごしていた。
「俺の名前は?」
- 忘れた
- 知らない
正解!
不正解!
知らない
少なくとも僕の通う学校にあんな容姿の生徒はいなかった。あんな特徴的な白髪や青い瞳は、学校にいればすぐ覚える。だから彼は顔も名前も全く知らない人だったのだが、彼が何者なのかを聞くことを僕は最後までしなかった。
「君は、何で俺の素性を一度も聞かなかったんだっけ?」
- 聞く機会がなかったから
- 本人から聞くなと言われていたから
- それを聞いたら自分のことも聞かれると思ったから
正解!
不正解!
それを聞いたら自分のことも聞かれると思ったから
僕のクラスや家族との生活のことなんて誰にも言いたくなかったし、あの場所でだけは、そういうことを忘れられた。
「この秘密基地で、俺たちは何を目指していた?」
- ロケットの打ち上げ
- タイムマシンの建造
- ワームホールの構築
正解!
不正解!
タイムマシンの建造
彼は、そこでタイムマシンを作っていると言った。そして、そのタイムマシンの同乗者を探していると。
「この機械で、俺たちは何を欲していた?」
- 過去
- 現在
- 未来
正解!
不正解!
未来
そのタイムマシンを使った人は、望む未来へ行くことができるようになるらしい。
「夏休み、この秘密基地での生活は、どうだった?」
- 楽しかった
- 悲しかった
- 苦しかった
正解!
不正解!
楽しかった
僕の知らない目つきをした彼の細く白い手で、謎めいた大仰な道具がつくられていくさまを、僕はそれなりに楽しく眺めていた。
「今、何問目?」
- 10
- 11
- 12
正解!
不正解!
11
そこは秘密の場所だったから、大人たちに見つからないように、僕たちは問題を難しくしていった。選択肢を増やして、質問の数を増やして。あるいは、その茶番じみた会話自体を楽しんでいたのかもしれないけれど。
「完成間近のその機械は、なにに似ていた?」
- 鉄棒
- 雲梯
- ブランコ
- ジャングルジム
正解!
不正解!
ブランコ
ブランコやロープウェイのように、紐にくくりつけられた板が宙に浮いている、傍目にはお粗末なものだった。
「予備知識と内輪ネタばかりになった僕らの符牒は、例えるならなにに似ていた?」
- 初対面での会話
- 優良企業の面接
- 出来の悪いクイズ
- 名門校の受験問題
正解!
不正解!
出来の悪いクイズ
はずれものだった僕らにはちょうどいい合言葉だった。
「結局、あの機械はいつ完成した?」
- 春
- 夏
- 秋
- 冬
正解!
不正解!
夏
それはそうだ。彼とは、あの夏にしか会っていないのだから。
八月三十一日、夏休みが終わる日のことだった。
「完成した機械には、誰が乗った?」
- 僕だけが乗った
- 君だけが乗った
- 僕と君が乗った
- 誰も乗らなかった
正解!
不正解!
君だけが乗った
その夏の暮れ、彼は「タイムマシンが完成した」と言った。空が真っ赤に染まった夏の夕映えに、あの機械はとても大きな音を立てていて、すでにタイムマシンに乗り込んだ彼は僕を急かしていた。僕はその光景がなぜか無性に怖かった。
「その翌日、君は何を発見した?」
- 警察と野次馬
- 秘密基地の痕跡
- 彼の首吊り死体
- 何もない原っぱ
正解!
不正解!
何もない原っぱ
あれは、何かの幻だったのだろうか。
「秘密基地に入るために、はずれものの僕らがつくった符牒とは、どんなものだった?」
- すべての質問に対して、正しい答えを返すこと
- すべての質問に対して、正しくない答えを返すこと
- すべての質問に対して、同じ単語を返すこと
- すべての質問に対して、無回答を貫くこと
正解!
不正解!
すべての質問に対して、正しくない答えを返すこと
だから、僕はまだ入れない。