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ワープスペース顧問インタビュー vol.3 小澤秀司氏

世の中の役に立つような宇宙の活用が広がって人工衛星の利用が個人レベルまで普及してほしい。

小澤秀司氏は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)において宇宙ステーション計画の総括や、理事として経営企画、国際協力、産業連携などを担当した後に退職。2014年には宇宙利用コンサルタント事務所「オフィスK」を設立したという、まさに宇宙開発を知り尽くした人物です。
そんな、日本の宇宙開発創成期から活躍してきた小澤氏には、ワープスペースのアドバイザリーに参画していただいています。宇宙に育ててもらった。宇宙が世の中の役に立つように尽力したいという小澤氏にお話しを伺いました。

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小澤秀司(こざわひでし)
元宇宙航空研究開発機構(JAXA)理事。1971年より宇宙開発事業団(NASDA)にて衛星の追跡管制システムの開発や宇宙ステーションの運用システムの開発等に従事。2000年から宇宙環境利用推進部長として宇宙ステーション計画を総括。2003年10月の宇宙航空研究開発機構(JAXA)の発足に伴い初代経営企画 部長に就任後、執行役、理事を歴任し、主に経営企画、国際協力、産業連携分野を担当。
JAXA退職後2014年に宇宙利用コンサルタント事務所「オフィスK」を設立し代表に就任。2017年からは高精度測位情報サービスを目指すグローバル測位サービス株式会社(GPAS)の社長も兼任。
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『宇宙大作戦(スタートレック)』がきっかけで宇宙に興味を持つ


─1969年にアポロ11号が人類ではじめて月面着陸を成し遂げました。この出来事によって日本人の眼もようやく現実味を帯びて宇宙に注がれるようになったと言えると思います。でも、小澤さんはそれからわずか数年後の1971年には宇宙開発事業団(NASDA)で、人工衛星の追跡管制システムの開発や宇宙ステーションの運用システムの開発等に着手されている。率直に凄いと思いました。
小澤:
アメリカが世界に先駆けて月面に立った1969年に、日本で宇宙開発事業団(NASDA)が設立されました。そして、日本初の人工衛星「おおすみ」の打上げが成功したのが1970年です。私がNASDAに加わった1971年は、まだまだ日本の宇宙開発創成期でした。

─小澤さんが宇宙に興味を持たれたのには理由はあるのですか?
小澤:
京都大学4年生のときに研究室への配属がありました。エンジニアだった父親の影響もあり工学部で電気工学を学んでいたんですが、無線を使った研究をやりたいと思いました。丁度、その当時、テレビでアメリカのSFドラマ『宇宙大作戦(スタートレック)』を見ていたことで宇宙船のオペレーションに興味を持ったんです。

─『宇宙大作戦(スタートレック)』が切っ掛けなんですか!
小澤:
そうなんですよ(笑)。無線と『宇宙大作戦(スタートレック)』が結びついて、人工衛星をテレビのアンテナのようなもので追跡するという研究をすることにしたんです。

─そして、大学を卒業して1971年にNASDAに入られるのですね。
小澤:
まだNASDAとしての人工衛星がなく、東大が打ち上げた人工衛星「おおすみ」などの軌道を決める部署に配属され、追跡管制システムの開発に携わっていました。NASDA初の人工衛星「きく1号」が打ちあがったのは1975年です。日本が開発していた人工衛星はアメリカと比べるとそんなに大きくもなく、今考えると難しいこともやっていませんでした。でも、当時の日本の目標は「人工衛星を打ち上げる技術を獲得すること」だったんです。

─それが今では日本でも民間企業がロケットを打ち上げる時代になりました。
小澤:
私が宇宙に関わるようになってから今までの40数年は、「いかにすれば衛星を宇宙に確実に打ち上げられるか」の長い道のりでした。現代では打ち上げより、宇宙をどう活用するかにシフトしています。

─日本がここまで来るのは早かったですか? それとももっと時間がかかると思っていましたか?
小澤:
1971年当時、宇宙開発は国家プロジェクトで、民間にスピンアウトするなんて思っていなかったですね。こんな時代が来るだろうと思ったのは、1996年からワシントン駐在員として3~4年アメリカで仕事をしていた頃です。米国では既に宇宙の商業化の波が起こっていました。その波は日本にも来るだろうと思っていたら、NASDAが2003年に宇宙航空研究開発機構(JAXA)に統合され、2008年には宇宙基本法が制定され、宇宙の活用や産業振興が叫ばれるようになったんです。その頃は人工衛星からの画像データを利用したビジネスが中心でしたが、そこからどんどん進んでロケットを打ち上げようとする会社や月面探査をする会社まで出てきた。この10年のスピードは目覚ましいものがあると感じます。

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ワープスペースは朴訥していて地味なのが気に入った


─小澤さんはJAXA退職後2014年に宇宙利用コンサルタント事務所「オフィスK」を設立されています。「オフィスK」ではどのようなお仕事をされているのですか?
小澤:今の宇宙開発はある意味、転換期を迎えています。それまでは国やJAXA主導で宇宙開発が行われていましたが、先ほど言ったように、民間企業も参画してきました。新しい形態の宇宙開発が動き出す時代に来ていると見ています。私自身、JAXAを退職する数年前頃から産業連携の仕事を担当していたこともあり、企業の皆さんの相談に乗っていました。それで、退職後に宇宙利用コンサルタント事務所「オフィスK」を立ち上げ宇宙関連企業向けのコンサルタント業を始めたのです。クライアントは古くから宇宙に参入している企業から、新規参入を計画している中小企業やベンチャー企業まで様々ですが幅広い相談を受けています。

─中小企業もあるのですね。
小澤:
昔は宇宙開発に参入しているのは主に大企業でした。それが今では特殊な技術を持っている中小企業やベンチャー企業が積極的に取り組もうとしています。私はこれらの中小企業を大企業やJAXAに紹介することもやっています。

─そんな宇宙のスペシャリストである小澤さんが、ワープスペースのアドバイザリーに参加されたのはどうしてですか?
小澤:
2016年の7月に筑波でシンポジウムがあり、私やJAXA、ロケット関係者など4名が呼ばれました。そのときにワープスペースの代表取締役会長 亀田敏弘さんと初めてお会いしました。確か、ワープスペースが設立される直前だったと思います。

─そこで知り合ったのですね。
小澤:
後日、亀田さんから「手伝ってもらえないないでしょうか」といったお話しがありましたが、最初は断ったんですよ。でも、話を聞いていると「資金も少なくて」というので、「じゃ、私が出せる範囲で」ということで資金参加させてもらうことしました。

─そうだったんですね。
小澤:
でもね、資金援助だけで口を出せないのは面白くないでしょ。それに私の経験が役に立つのではないかと思い、「私を顧問にしてください」と提案したんです。

─なぜ、ワープスペースを手伝う気になったのですか?
小澤:
それは、亀田さんが地味だったからです(笑)。

─というと?
小澤:
当時宇宙分野に進出したいと考えるベンチャーと話をする機会がたくさんあったんですが、多くは派手な話題先行のところがありました。でも、ワープスペースは小型の人工衛星を50万円というローコストで作ってインフラとして広めたいんだという説明でした。私自身、衛星の小規模な追跡管制システムの開発がキャリアのスタートだったので、そういうローコスト衛星ができると面白いだろうと思いましたし、一生懸命説明する亀田さんの真面目で朴訥としたところも非常に気に入りました。それで手伝ってみようかなと思うようになったんです。

─地味なのが良かったのですね。
小澤:
そうです。当時ワープスペースがやっていることは、大学の研究室の延長線上みたいなことで、ビジネスなんか横に置いて、技術をどう作って行くかに一生懸命でした。最初にビジネスプランを説明してもらいましたが「こんなのはダメだ」と言いました。

─プロの眼から見たら通用しないと。
小澤:
とはいえ、そもそもビジネス的には期待はしていませんでした。ロングレンジで見るつもりでしたから。ここから大きく育ってくれればいいと思いました。

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宇宙をいかに活用するかを具体的に考える時代になった


─宇宙開発に取り組んでいるベンチャーはいかがでしょうか?
小澤:
ベンチャーは最初「技術だけ」という感じがしていましたが、ようやく実際に世の中に役立つことと結びつきだしたように感じます。例えばSpaceXの高速インターネット用衛星コンステレーション構想「Starlink」もビジネスプランが確立されてきましたし、日本でもスペースデブリ(宇宙ごみ)対策に取り組んでいるベンチャーもいる。又、日本の安全保障分野での宇宙利用も進むと思いますので、今後ベンチャーの参入機会も増えて投資額も増えていくように思います。

─ワープスペースのこれからはいかがでしょうか?
小澤:
低軌道衛星向け通信インフラという、衛星事業者向けの小型の人工衛星を利用した通信インフラに眼を付けたのは良いと思いますし、これはベンチャーのなかでも面白い取り組みです。ただ、需要をどう作るかが課題でしょうね。というのは、宇宙開発の初期のころは「こんなものを作りました。さあ使ってください」で良かったのですが、今ではエンドユーザーの事まで考えないと事業は成立しません。

─確かに、需要のないところにビジネスはあり得ませんからね。
小澤:
今まで政府の資金に頼って構築されていたインフラが、民間によってローコストで出来るとなったら、需要が増え事業として成り立って行くでしょう。私は最終的にはワープスペースの技術は世の中に広く役立っていくものだと考えています。とはいえ、この分野には古くから着手している企業もあるので、できれば相乗効果でお互いが得意なところを上手に組み合わることも必要かもしれません。そして国際的な競争力のある技術に仕上げていくことが大事だと考えます。
社会のインフラとして役立つためには1基や2基の衛星打ち上げ成功だけではなくて、必要な数の衛星打ち上げに成功し地上も含めた全体システムとして完成させ、更にそのシステムを持続させて行く必要があります。そのためにはすぐに壊れるようなものではダメで十分な信頼性や安定性を持ったシステムを構築していく事が大事です。幸いワープスペースには地上から衛星までカバーする総合的な技術力がありますので心配はしていませんが、事業として成功するためにはシステムの構築、システムの維持、システムの更新と言ったライフサイクル全体をスコープに入れた考え方が必要だと思っています。

─小澤さんのアドバイスは支えにもなりそうですね。
小澤:
支えになるかはわかりませんが、私は宇宙開発の世界に関わって40数年。その中で育ててもらった恩返しの意味で、少しでも宇宙が世の中の役に立つように、より宇宙の活用が広がって行く事に貢献して行きたいというのが私の想いです。放送衛星や気象衛星のように私たちの生活になくてはならない宇宙システムがありますが、もっと一人ひとりの個人レベルにまで普及する宇宙システムの利用が実現する事を望んでいます。
関連して、国が進めている日本版GPSとも言える「みちびき計画」に関して、私が社長を務めている高精度測位情報サービスを目指している「グローバル測位サービス株式会社GPAS)」について少しお話したいと思います。

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─GPASとは、どのような会社なのですか?
小澤:
分かりやすく例で説明しましょう。皆さんの自動車にGPSのナビが付いていますよね。でも、目的地まで来ると近くで「目的地付近に到着しました。運転お疲れ様でした。」とアナウンスがあってナビが終わってしまうでしょ。それは車の位置に最大10mほどの誤差が含まれるからです。目的地の玄関のドアの前でピタリと止めるためにはこの誤差を小さくする必要があります。GPASはこの誤差を補正するサービスを提供する会社です。GPASが提供するサービスを皆さんの自動車に繋げて頂くことで目的地の玄関までいく事ができます。

─それは嬉しいですね。
小澤:
2020年からサービスを開始する予定ですが、自動車やトラクターなどの自動運転での利用、建設機械やドローンなどでの活用が考えられます。またバスやタクシーのロケーションサービス、ライドシェア・カーシェアなどへの利用も考えられます。将来的にはスマホにGPASのサービスを繋げてマンナビやゲーム、また介護サービスなど個人レベルの活用までサービス範囲を広げたいと思っています。
GPASでは市場分析をして、どれくらいの収益を上げられるかも試算もしています。でなければ出資企業は支援してくれません。その点、ワープスペースは楽です。まだ、夢を語っていればいいんですから。大変なのはこれからです。(笑)。


また将来GPASとのコラボが出来ると良いと思ってます。頑張って下さい。

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