二千年前から君と


メニュー

お気に入り

しおり
作:NIRA NI
▼ページ最下部へ


2/4 

episode.2


 

 

 

 

光るムカデが分離して俺とユミルちゃんに近づいてきたのを最後に意識が飛んだ。

 

 

 

 

次に目を覚ました時、俺は巨人になっていた。

全身は骨のような硬い物で覆われ、背骨が横に伸びて翼のように背中から飛び出している。

身長は200m近くもあって、森全体が見渡せるほどデカい。

隣には同じく巨人になったユミルちゃんが、何が起こったのか分からない様子で呆然としてた。

 

…ぃ…じょ…ぶ?

 

大丈夫?そう聞こうとしたのに全然声が出ない。巨人になった影響か?

 

「!」

コクリと頷くユミルちゃん。巨人になっても可愛さは健在やな!顔が骸骨みたいでちょっと怖いけど!まあそれも怖可愛いってもんよ!

てかユミルちゃん裸だし助骨も飛び出てるし痛くないの?大丈夫?

 

そう思ってユミルちゃんの胸部を見ていると、ユミルちゃんが凄い速さでしゃがみ込んだ。

 

どぅ…しあ?

 

え、本当にどうしたのユミルちゃん。

お腹痛いとか?それともこの巨人化は人を選ぶ!とかそういう展開!?そんなのバッドエンド確定じゃねぇか!やめろぉ!

 

「……しぃ」

「え?」

 

しぃ?ユミルちゃんも上手く喋れないみたい。どうにか言おうとしてる事を考えるが検討もつかないな。

ちょっと待つか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_______________Now Loading

 

 

 

 

 

「あー、いーーうーー。おっけおっけ」

 

はい15分くらい経ちました。俺も段々慣れてきたし人間の時みたいに話すのは難しいけど、多少はマシになったでしょ!

 

「そんじゃ、ユミルちゃん!しゃべれそう?」

 

この15分間、ずっとしゃがみ込んで不向いてしまったユミルちゃんに話しかける。

 

「だいじょぅぶ?」

「…………」

 

いや何か言って欲しい。めちゃくちゃ心配になってくる。まさか光るムカデに精神乗っ取られてるとか無いよな!?

 

「……はずか、しかった、から」

「……!」

 

何だこの可愛い生物!?

見た目は大きくても中身は小さいユミルちゃんのまんまとか可愛すぎない?………ちょっと顔怖いけど。

 

しかし、なるほど!恥ずかしかったか!

こんな超常的な事にビックリし過ぎて恥かしさを忘れてたよ。

女の子からすれば裸見られるなんて恥ずかしいよな!配慮が足りなかった!ごめんユミルちゃん。

 

しかし参ったな。

俺もユミルちゃんも身長200mある巨人になっちまったし、服なんて無いよなぁ。どうするかな。

 

「まず人間の体に戻れるのか、それが問題だね」

「……ぅん」

 

変身系の主人公は強い意志があれば元に戻れる。っていうお約束があるけど、俺に強い意志を期待しないでもらいたい。

生まれてすぐ決めた覚悟を即捨てる男やぞ。

 

「うおっ!」

 

すると突然、景色が暗転したと思ったら目の前にでかい頭があった。

 

「これ俺の頭か?」

 

周りを確認すると俺は巨人のうなじ部分から人間の体が生えている様で体が2つという奇妙な状態になった。

ていうかコレってガン○ムみたいに乗り降り自由なモノなの!?

 

「なんか何でもアリになってきた気がする。」

 

考えるのが嫌になってきたな。元々なんも考えてないけど。

てかユミルちゃんに乗り降り自由って伝えて安心させてあげよう。凄い暗い顔してるからね。

 

「これ乗り降り自由みたいだよー!」

「!?」

 

 

うなじから生えたままユミルちゃんに叫ぶ。すげー驚いてる。

するとすぐにユミルちゃんもうなじから生えたきた。

巨人になった影響か労働で傷付き汚れていたユミルちゃんの体は綺麗になってて、久しぶりに健康的なユミルちゃんだ。やったね。

 

そんなこんなで人間の姿に戻ると、俺たちは森に降りた。え?クソ目立つ巨人の身体はどうしたって?

俺たちが抜け出た瞬間に煙?蒸気?を立ち上げて一瞬で消滅したよ。わけがわからないよ。

降り立った森はさっき巨人化で動いた所為か滅茶苦茶になってたけどまあしょうがないね。森は犠牲になったのだよ、犠牲の犠牲にな……。

 

「ユミルちゃんあそこに隠れよう!」

 

降りるとすぐに俺達は草むらに隠れる。あんな派手な事をしたんだから絶対にあの畜生共が来る。

いくら巨人になれる様になったと言っても、なり方や持続時間、どれだけの副作用があるのかがまだ分かってない。

 

俺は警戒して息を潜める。

 

「…………ひょっ!?」

 

ユミルちゃんが急に腕を触ってきた。なんです!?こんな所でお誘いなんて大胆ね!?って違う!なんか気になることでもあったのか?

 

「ど、どうしたの?」

「腕、矢が刺さってたから……」

「ああ!もう全然大丈夫だよ!」

 

そういえば逃げてる時に矢を2本も頂きましたね。

巨人の効果か分からないけど治ってたからすっかり忘れてたよ。

 

「良かった……!」

 

ユミルちゃんが抱きついてきた。

まあ矢が二本も刺さって出血も酷かったからかなり危なかったもんね。心配かけてごめんよ。

ユミルちゃんの背中に手を回して、抱きしめようとした時だった。

 

 

 

 

「ユミルちゃん!」

 

『バヴッッ!!!』

「いッッ!」

 

いつの間にか居た糞犬が俺の腕に噛み付いて来やがった!!

せっかくユミルちゃんといい所だったのにッッ!!!!!!

 

「離せ糞犬!!!!!!」

 

ぶん殴って引き剥がそうとするがさすがは猟犬、全く離れない。てか噛む力強すぎて腕折れそう!!!

 

「や、やめて!!」

 

ユミルちゃんが落ちてた木片で犬の頭をぶっ叩いた。意外にパワフルだよねユミルちゃん!!?

てか犬が離れた!逃げるチャンス!

 

「走ろうユミルちゃん!」

「うんっ!」

 

『いたぞ!!!貴様ら何をやった!!』

 

犬の次いでに兵士も来やがった!クソ、もう包囲されちまった。

ホントこいつら人の嫌がる事には才がありますね!畜生共が!今度という今度は許さんぞ!!!!

 

 

「お前らに教える義理はねぇよ!」

『先程の巨大な人間!アレはなんだ!!』

「だから教えねぇよ!くたばれ畜生共!」

『貴様ァ!!その首叩き斬ってくれる!!!』

「斬れるもんなら斬ってみろ!!テメェらなんか叩き潰してやる!」

 

 

 

 

俺の体を稲妻が走る。

巨人になれる方法はよく分からないが、多分意志の強さだ。

でも俺は俺のために強くなろうとするのは無理だ。

 

 

なら、俺は!!!

 

 

 

 

ユミルちゃんのために強くなる!!!

 

 

 

稲妻が俺に降り注ぎ、爆風が吹き荒れる。骨が形成されて肉を生み出す。

理由は分からないが上半身だけしか作れなかった。それでもこいつらを殺すには十分だ!

 

 

 

ガァァァァァア!!!!!

 

 

形成された巨大な腕を振り下ろした。まずは一人。

巨人になった俺に恐れた兵士達は馬で逃げようとするが、馬はとっくに逃げ出していた。

 

『やめ、やめろ!俺達が死んだら王様が………ガビュッ』

 

一人、また一人と拳を叩きつけ腕で薙ぎ払い握りつぶした。

 

 

「ざまぁみろ……!ッ!」

 

 

全員を殺したあと、俺はうなじからズルりと落ちた。

ユミルちゃんを守る事にめいっぱいで力を使ったけど明らかに無理しすぎた。上半身しか巨人を作れなかったのがいい証拠だ。

体が鉛のように重い。

ユミルちゃんの安否を確認しようにも指一本動かせない。

 

「ゅ…るちゃん……」

 

声もまともに出ない。

今の騒ぎで増援が来たら非常にまずい。俺はもう対処できない。どうする!?

ユミルちゃんが巨人になって俺を持って逃げるか?

いや無理だ。全身が作れると決まってるわけじゃない!俺みたいに上半身だけ作ってしまうと体力の無駄だ。

 

「に、げて」

 

最後の力を振り絞ってユミルちゃんの方に向く。体が悲鳴を上げて今にも爆発しそうだ。

 

「ぁぁ……くそ」

 

遅かった。

そこには増援の兵士と糞王様がユミルちゃんを捕らえていた。

 

『貴様……!!よくも我が兵士達を!』

 

糞王は俺の傍に来ると腹に蹴りを入れ、頭を踏んずけて怒鳴り始めた。うるせぇよ唾飛ばすな。

 

『……ふん。まあいい貴様はこの娘の前で処刑してやる。後悔して死ぬがいい』

 

首筋に剣先を当てられ、血が流れていくのがわかる。流石に巨人の力でも首チョンパは死ぬだろうなぁ。

 

「ヤマ!!」

 

その様子を見ていたユミルちゃんが兵士の拘束を振りほどいて俺に走り寄る。

 

『黙って見ていろ!!我が奴隷ユミル!

 

「ッ!!」

 

ユミルちゃんの足が止まった。

 

村を襲撃された時、両親が目の前殺されていつも親切にしてくれた婆さんも嬲り殺されたユミルちゃんは糞王にずっと恐怖してた。そのせいで、ユミルちゃんは動けないんだ。

 

そこで大人しくこの男が殺されるのを待っていろ!奴隷は奴隷らしく、王の命令に従っていれば良いんだ!自由などあると思うな!!!

 

「………」

 

ユミルちゃんがヨロヨロと地面に膝をつき顔をふ向かせてしまった。

この野郎なんて酷いことを言いやがる。ユミルちゃんが奴隷だって?違う、違ぇよクソ野郎。

ユミルちゃんは、ユミルちゃんは_______________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユミルちゃんは自由だ!

「!!」

『なっ!?』

 

ユミルちゃんが奴隷?自由なんて無い?

 

テメェが決めるんじゃねぇよ糞野郎!ユミルちゃんは奴隷じゃない!!

 

『黙れ!!!!』

 

腕を剣でぶっ刺されたけど知ったことか。

 

こんな糞野郎に従わなくていい!自分で選んで、自分で決めていいんだユミルちゃん!!

「ヤマ……!!」

 

 

 

貴様ァァァァ!!

 

限界がきた糞王が剣を振るって俺の首に迫る。あと数センチのところで糞王が倒れ込んだ。

なんとユミルちゃんが糞王に体当たりして俺の処刑を止めてくれた。

 

『ぐぁ!?』

「ユミルちゃん!?」

 

するとユミルちゃんは不意打ちでよろけた糞王から剣を奪うと、それを自分の手に突き刺した。

 

 

「ヤマ」

「!」

 

糞王が退いたことで何とか起き上がれた俺は呼ばれて顔を向けた。

そこには、何時もの暗い表情ではなく、目に光が灯り何かを決めた様子のユミルちゃんがいた。

 

 

 

 

「ありがとう、私を救ってくれて」

 

 

 

 

瞬間、ユミルちゃんの体が光に包まれ、轟音と共に巨大な稲妻が降り注いだ。

 

 

 





ユミルちゃんが幸せになるために多少(?)のご都合主義はしょうがないね!なおハードモードな模様。


評価感想お待ちしております。

2/4 



メニュー

お気に入り

しおり

▲ページ最上部へ
Xで読了報告
この作品に感想を書く
この作品を評価する