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「100円玉5枚を500円玉に」→即拒否→「後味悪い」投稿が炎上! 飲食店が両替を断る“切実な理由”

東龍グルメジャーナリスト
ChatGPTが生成した画像

飲食店での両替

「率直な意見聞かせてください」と始まる、あるSNSの投稿が注目を集めました。

投稿者は、11人でランチを楽しんだあと、会計3万1700円を支払います。

そして「100円玉5枚を500円玉に替えてもらえますか?」と飲食店にお願いしたところ、「両替は受け付けていません」と即答で断られたエピソードを紹介。「最後に最後に後味悪いな、、、と思った私が浅はかですか?」と問いかけました。「両替無理」と締め、その無念さが伝わる投稿になっています。

多数の反響

この投稿には「レビューに書いてやったら良いよ!」と共感する声もありますが、以下の通り、反対意見のほうが多いです。

「たぶんうちなら対応しますが。一回その対応すると希望する方には皆、対応しなくてはならない」

「細かくするのならお釣りを分ける意味は分かりますが、大きくするのは本当にただの都合ですよね?」

「11人もいたら誰か500円玉持ってませんでしたか?」

「PayPayを使って割り勘してみて下さい」

「飲食店は両替店では無い」

「ランチの忙しい時なら仕方ないかな?」

※いずれの投稿も原文ママ

今回の事案は、日常ではあまり意識されていない「両替」にまつわる事情や、飲食店の裏側の苦労を考えるきっかけになります。

以下の観点から考察していきましょう。

・飲食店の負担

・銀行での手数料

・断る側の言い方

・頼む側の想像力

飲食店にとって両替は負担

飲食店で働いたことがない人にとって、「100円玉5枚と500円玉1枚を交換する」だけの行為が、なぜそんなに問題になるのかは、少し分かりづらいかもしれません。

しかし、飲食店にとって「小銭」は非常に重要な“営業資源”の一つ。とくにランチタイムや週末など、多くの現金会計が発生する時間帯には、お釣りが足りなくならないよう細心の注意を払っています。

例えば、1日に数百人規模の来客がある飲食店では、朝の仕込みや開店準備と並行して、スタッフがお釣りの確認や準備を行います。しかし、想定よりも500円玉が出なかったり、小銭が不足したりすると、営業中に銀行やコンビニに走らなければならなくなることも。その間、会計業務が滞ったり、営業そのものに支障が出ることもあります。

両替すること自体にサービスリソースが割かれることも忘れてはなりません。さらには、両替では、偽札と交換されるリスクにさらされることも留意するべきです。

銀行の両替には手数料がかかる

飲食店が銀行で両替する際にはコストがかかります。

かつては銀行での両替は無料、もしくは、安価で行うことができましたが、現在はそうではありません。メガバンクでは、硬貨の枚数に応じて手数料がかかります。

たとえば、両替機で11枚以上の両替では、みずほ銀行は500円、三井住友銀行は770円、三菱UFJ銀行は400円の手数料が必要です。

つまり、飲食店は「お釣り用の小銭を確保するだけ」で、日々コストを負担しています。そのため、ゲストから「ちょっと両替して」と気軽にお願いされると、断りたくなるのも無理はありません。

“断り方”が気持ちの分かれ道に

今回の投稿で注目されたのは、両替を断ったこと自体よりも、その“言い方”にありそうです。

「両替は受け付けていません」という返答は、ルールとしては正しいものの、表情や語調によっては突き放された印象を与えてしまうことがあります。投稿者が「後味が悪い」と感じたのは、この応対のニュアンスによるものでしょう。

たとえば、「申し訳ありません。お釣りが不足すると営業に支障が出てしまうので、ご遠慮いただいています」といった言い回しであれば、印象はまったく違ったものになったはずです。

両替を「頼む側」も、少し想像力を

ゲストも、少しだけ想像力を働かせてみるとよいかもしれません。

キャッシュレス決済も進んでいますが、飲食店は日々、多くの現金会計に対応し、釣銭不足によるトラブルを防ぐために神経を使っています。そのなかで「ちょっとのお願い」が、実は店にとっては大きなリスクや負担になることもあるのです。

「ゲストだから何を要求してもいい」という発想ではなく、「もしかしたら難しい理由があるのかも」「飲食店にとっては負担かもしれない」と想像するだけで、お互いの関係性はずいぶん変わってくるはずです。

飲食店とゲストの相互理解が大切

今回の投稿は、瞬く間にSNSで広まり、コメント欄は感情的なやり取りであふれました。しかし、こうした事案こそ、店側の事情や仕組みを知る機会として活かしたいものです。

「たかが両替」では済まされませんが、「そんなことで怒るな」とも言い切れません。こうしたグレーゾーンのやりとりこそが、むしろ相互理解のチャンスとなります。

少しの知識と少しの思いやりだけで、飲食店とゲストの関係は、より建設的で良好なものになるはずです。

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ありがとうございます。
グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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