元ゴールドマン・サックスの田中渓に密着。午前3時45分からのマラソン、効率を上げるAI活用術など、成功のために大事にする「5つの掟」とは。
チャプター
元ゴールドマンサックス田中渓が語る、3時45分起床、超人的トレーニング、そして時間と人生の管理術
脳のオートパイロットという考え方を実践している。朝3時45分に起きる生活を約6年続けている。起床後は25km走る、70km自転車を漕ぐ、9000m泳ぐ、のいずれかを行う。
この習慣によって、朝起きた瞬間に溜まったメールやチャットを斜め読みして予定を確認し、運動中に脳が勝手にそれらについて考えてくれる。メールへの返信内容や会議の段取りなどを自動的に整理してくれるのだ。
これは「インキュベーションエフェクト」という脳科学的な効果で、運動中に脳が無意識にタスクを処理してくれる。2〜3時間の運動が終わる頃には1日の段取りが出来上がり、午前中の仕事がスムーズに進められる。
運動習慣のきっかけは健康管理だった。激務の会社で座りっぱなしで高カロリーな食事を続け、体重が80kgを超えてしまったことから始めた。その後、「どんなに食べても飲んでもなかったことにできる」ほどの運動量に発展していった。
早起きの習慣は、深夜まで働く生活の持続不可能性を感じたことから。時間の使い方を見直し、緊急度と重要度に基づいて整理した結果、朝にタスクを集中させることで、後の時間を有効に使えるようになった。
自分の限界を知りたいという好奇心が一番の理由だった。これはナミビアの砂漠で行われた極限のレース。7日間かけて257kmを走るだけでなく、生きるために必要な装備や食料を全て背負って15kgの重りを背負いながら挑戦するものだ。
昼間は50°C近くまで気温が上がり、夜は氷点下になる過酷な環境。このレースに参加するために、3週間近く会社を休み、参加費と装備で150万円ほどかけた。
自分を見つめ直す「自己探し」の旅、デジタルデトックスの機会として価値があった。また、チーム戦で世界一になれたこと。これは参加者が少ない競技だからこそ可能だったが、世界一になることへの憧れを叶えられた。
死を意識するような瞬間を経験したことで、物欲や他者との比較に対して無頓着になった。「あと1歩で終わりだった」という体験から、自分の好きなように生きることの大切さを学んだ。
このような極限の身体活動は精神面でも大きな効果があり、ポジティブな思考になりやすい。血流が良くなることで心理的にも前向きになり、自分で決めたことを達成する自己効力感も得られる。
習慣化は環境のデザインだと考えている。人間の意思の力は当てにならないので、環境を整えることが重要。
具体的には次のような方法を実践している:
1. 環境の準備:朝のランニングに必要な服や靴、サプリメントなどを前の晩にベッドの横に置いておく。言い訳の余地をなくすことが重要。
2. ハードルを下げる:最初は1kmから始めるなど、小さな目標から始め、達成感を積み重ねる。負荷を上げるのは習慣が定着してから。
3. 他人の力を借りる:SNSなどで「朝3時45分に起きる人」というレッテルを貼られるようにする。自分への約束だけでなく、世間への約束にすることで継続しやすくなる。
特に運動習慣の定着には約3ヶ月かかると言われている。その間に急に負荷を上げると挫折するリスクが高まる。最初は簡単すぎると感じるくらいのレベルから始め、徐々に上げていくのが効果的だ。
一度、朝5時45分まで寝坊してしまった経験がある。通常より2時間も遅れたが、7時半から重要な朝食ミーティングが入っていた。
運動は絶対にやるという強い意志があるため、自転車トレーニングを分割することにした。まず1時間だけ自転車に乗り、通常よりも速いペース(時速35km以上)で進める。その後、急いでシャワーを浴びて朝食ミーティングに参加し、終了後に残りの1時間を消化した。
この体験をSNSでシェアしたところ、「サイコパスではなく人間だった」というリアクションもあった。習慣が歯磨きのようになっており、一部しかできなくても、後で残りを完了させる必要性を感じるほどになっている。
習慣が自分のアイデンティティの一部になると、それを逸脱することは「自分でなくなる」という不安を感じるようになる。これはポジティブな依存症とも言える状態だ。
「時間こそが人類最大の資本」という考えに基づいて行動している。時間は誰にでも平等に与えられている貴重な資源だ。
効率的な時間管理のために実践していること:
1. AIの活用:文字起こしや文章整理などにAIを使い、作業時間を大幅に削減。メールや執筆活動が体感的に1/10の時間で完了できるようになった。
2. タスクの複数同時進行:マルチタスクではなく、AIなどのツールを使って並行して作業を進める。自分が集中している間に、AIにリサーチをさせるなど。
3. 80-20の法則:80%完成したら先に進む。完璧を求めるよりもスピードを重視し、必要に応じて軌道修正する方が効率的。
4. 移動時間の有効活用:タクシー内での時間も無駄にせず、文字起こしや語学学習など、その環境でしかできないことに活用する。
これらの方法で、限られた時間を最大限に活用し、仕事の効率と生活の質を高めている。
体と心の状態を整えることを重視している。健康は人間の3大悩み(お金、健康、人間関係)の一つだが、若いうちは疎かになりがち。しかし40歳くらいになると、良い健康習慣をしてきた人としていない人の差が明確に現れる。
具体的な取り組み:
1. 睡眠の質の向上:睡眠スコアなどを測定し、自分の睡眠状態を把握した上で改善する。ただし、スコアに執着しすぎないよう注意する。
2. 食事管理:特に腸内環境を整えることを重視している。玄米と卵を主体とした食事で、食物繊維をしっかり摂取。糖質制限やタンパク質摂取だけでなく、食物繊維による血糖値コントロールを意識している。
3. サプリメントの活用:南消化性デキストリンという食物繊維を毎食前に摂取。トウモロコシ由来の粉で、血糖値のコントロールに役立つ。
4. 定期的な整体:何も症状がなくても予防的に2週間に1回は整体に通っている。怪我を未然に防ぐためのメンテナンスが大切。
これらの習慣は、体だけでなく心の状態にも良い影響を与える。体調が良いとポジティブな思考になりやすく、メンタルヘルスの維持にも役立っている。
17年間のゴールドマンサックス勤務を経て、自分の人生の主導権を握りたいと考えるようになった。高い給料で恵まれた環境だったが、未来が予定調和的に見え、自分の人生を自分で生きている実感が薄れていた。
思春期の頃からラジオパーソナリティになりたいという夢があったが、忘れていた。40歳近くになって、その夢を思い出し、叶える行動を始めた。
まず本を出版し、メディア出演を重ねて知名度を上げた。それをきっかけにYouTubeなどの番組に呼ばれるようになり、さらにSNSでの発信も始めた。そして実際にラジオ局に飛び込み、パーソナリティの仕事を獲得した。
現在は東京のインターFMと福岡のクロスFMで番組を持ち、金融リテラシー、習慣術、時間の使い方などのテーマでトークし、音楽も紹介している。
この経験を通じて、「財力」「人脈」「発信力」という3つの力を組み合わせることの重要性に気づいた。これらを活用して自分の思いを伝えたり、応援したい人を支えたりすることが、真の豊かさだと感じている。
まず、夢を見つけることから始める必要がある。毎日同じことをしていては新しい発見は生まれない。昨日と違う環境に身を置き、新しいことに挑戦することで、自分の好きなことややりがいを感じることが見えてくる。
夢が見つかったら、ゴールと現在地を明確にし、その間に足りないものを言語化して要素分解する。それぞれの課題を一つずつ克服していくことが大切だ。
例えばラジオパーソナリティになるためには、自分の経験や知識を言語化し(本の出版)、知名度を上げる(メディア出演)という具体的なステップを踏んだ。
成功した人はみな同じように目標を細分化し、一つずつクリアしている。これは筋トレのように地道な積み重ねが必要だが、確実な方法だ。