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歩きながら考える

最近ちょっとお疲れ気味

超硬工具の業界構造

2009-05-31 22:44:59 | ものづくり・素形材
 世界の機械工業を牽引している国といえばどこでしょう。かつては間違いなく米国でしたが、現在は日本とドイツの2カ国を挙げて差し支えないでしょう。成長著しい中国は、生産力は巨大ですが、自動車、工作機械など高度な技術を必要とする製品では独自の開発力に劣り、世界の牽引役としてはまだまだ役不足です。

 特に「マザーマシン」の工作機械については、日本とドイツの独壇場と言っても過言ではないと思います。しかし、優れた切削工具を取り付けなければ、いかに高性能な工作機械であっても意味がありません。先日、超硬工具協会の方とお話しする機会があり、切削工具について意外なことを知りました。私は、「工作機械といえば日本とドイツなのだから、工作機械に取り付ける切削工具も日本とドイツなんでしょ」、と思っていましたが、これは大きな間違いでした。

 超硬工具メーカーの世界ランキングの上位3社は、1位がスウェーデンのサンドビック(Sandvik)、2位が米国のケナメタル(Kennametal)、3位がイスラエルのイスカル(Iscal、同社は自ら業界2位と標榜していますが、超硬工具協会の方によるとあくまでも自称に過ぎないのだそうです)、そして4位にようやく日本の三菱マテリアルがランクインします。ちなみに、サンドビックはグループ全体で従業員5万人を擁する巨大企業で、同社1社で日本の超硬工具業界全体を凌駕する規模を有しています。
 さらに、日本と並ぶ工作機械大国であるドイツに至っては、超硬工具メーカーは存在しません。これは非常に意外でした。ドイツは超硬工具の発祥の地であり、世界で初めて超硬工具を製品化したウィデア(Widea)というメーカーがあったのですが、この会社は前述のサンドビックに買収されてしまったとのことでした。
 
 スウェーデン、米国、イスラエルの3カ国のメーカーが上位を占める背景は何でしょうか。超硬工具に使用する合金の主成分である「タングステン」はもともとスウェーデン語だそうで研究の伝統があるからスウェーデン。米国はやはり20世紀の機械工業を牽引してきた伝統がありますし、なんといっても巨大な軍需産業があるから。そしてユダヤ人はダイヤモンドを研磨、カッティングすることに長けているからイスラエルは超硬合金に強い、と想像します。面白い業界だと思いました。

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11 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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サンドビック (KADOTA)
2009-05-31 23:41:39
こんにちは。昨年の工作機械展ではじめてサンドビックを知りました。黄色いカバンに大きなカタログを持ち帰り、そのときもらった黄色いボールペンはちょうど今も使っています。

日本では大工の刃物も最近は使い捨てのようですから、工具づくりにも国柄があるのかもしません。数千万円もする工作機械の先端部分の刃物を別の会社がつくていることは考えて見れば不思議なことだと思います。
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コメントありがとうございます (kunihiko_ouchi)
2009-06-01 23:12:30
KADOTAさんコメントありがとうございます。
>数千万円もする工作機械の先端部分の刃物を別の会社がつくていることは考えて見れば不思議なことだと思います。
コピー機メーカーはコピー機本体ではなく消耗品のトナーで儲けていると聞きます。同じようなビジネスモデルが工作機械でも成立しないのかと工作機械業界の方に聞いたところ、工具は独特のノウハウがあって難しいとのことでした。これができれば工作機械メーカーの経営もかなり安定すると思うのですが、そうはいかないようです。
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Unknown (デハボ1000)
2009-06-02 08:46:39
サンドビックは宮城県にある工場を見学したことがあります。ただし工具メーカーという色もありますが、特殊鋼メーカーとしての存在が大きいですね。ヤスキハガネと似ているといったほうがいいでしょう。今でも弁用特殊鋼材はメーカー指定をするとき「サンドビックNo・・相当品」「ヤスキハガネNo・・・相当品」とか、書きます。
イスカルは日本でもたまにありますが、ケナメタルは私は使ってるのを見たことがないですねえ。
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昔聞いた話。 (まっどだいまる)
2009-06-02 19:40:40
なぜスウェーデン、アメリカ、イスラエルのメーカーが超硬工具に強いのかですが、やはり軍需があるところが特に3国とも自国で武器(飛行機、ミサイル、戦車など)を開発しているため開発していく上で特殊な材質を切削することが多いので強くなってしまったという話は昔聞いたことがあります。やはり戦争が進化させていくのでしょうか、、
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コメントありがとうございます (kunihiko_ouchi)
2009-06-03 06:16:03
>ただし工具メーカーという色もありますが、特殊鋼メーカーとしての存在が大きいですね。
なるほど。工具だけで5万人というのはいかにも多すぎますからね。
>やはり戦争が進化させていくのでしょうか、、
これは真実でしょう。しかし、軍需に頼らず様々な分野で高度な技術を発展させてきた日本はすごい国だと思います。
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イスカルの説明会で (はっく)
2009-06-17 23:04:04
はじめまして。
昨日、イスカルの工具の説明会に行ってきた時に聞いた話です。
イスカルはオランダIMCグループの一員であって、他にインガソル、テグテック等傘下に収めていると。
2008年にはタンガロイも買収したと。
それらを含めたシェアでは世界2位であると言ってました。
シェアの比率のグラフも出てきて、サンドビックに迫る感じでした。
サンドビック、IMCグループ、ケナメタルが3強という印象を持ちました。
また、IMCグループは世界第一位の資産家ウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・
ハザウェイの傘下にあるそうです。
今まで、何気なくイスカルの工具を使ってましたが、ちょっと驚きでした。
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コメントありがとうございます (kunihiko_ouchi)
2009-06-18 01:20:48
こんばんは。はじめまして。
超硬工具業界についての情報、ありがとうございます。日本勢は世界の潮流から取り残されているようですね。
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4度ビックリ (ビックマック)
2011-08-24 21:41:33
 でも日本には不二越がいる。サンドビックリなどとほざいていないでもっと高性能な工具を作らないとサンドビックは生きてゆけないよ。だいたい、カミソリ替え刃で日立に負けて、悔しくて韓国となにやら画策しているローテク企業だから。
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超硬金属 (日進)
2012-02-11 22:35:48
 ビックサンドのほうしかしらないな。マックはやっぱり旨いね。
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かわいそう (ポット)
2012-03-11 17:30:28
 日立金属さんに、カミソリ替刃のシェアー牛耳られて、超硬に比重を置く戦略をとってきたけど、株価あんまり好調じゃないみたい。
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