三菱商事と中部電力が、千葉県沖と秋田県沖の3海域で進めていた洋上風力発電計画からの撤退を発表した。政府が初めて大型洋上風力の開発案件を公募し、三菱商事や中部電力子会社などの企業連合が2021年12月に落札した。インフレに伴う建設費の高騰で採算が合わなくなったのが要因といえる。
三菱商事という日本の代表的企業が、洋上風力から撤退せざるを得ないことにより、日本の洋上風力導入が遅れる。自給率100%の再生可能エネルギーを主力電源に据える政府のエネルギー基本計画にも打撃となるだろう。
三菱商事の中西勝也社長の記者会見によれば、「応札した当時、見通せる事業環境や金利、インフレなども含めて採算を確保できると判断し、売電価格を決めた。経済情勢の激変でコストが2倍以上に膨らんだ」ということらしい。
さらに「(補助金で)落札価格の2倍以上の水準で30年間電気を販売できたとしても、投資を回収できない。何千億円も投資するのにリターンがマイナスとなる案件では、民間企業ではそのリスクを取れない」とも説明している。
民間企業である以上、見通しの誤りもあり得るし、その結果、撤退もある。第三者的に見れば、三菱商事としては洋上風力の採算が合わなかったということに尽きるのだろう。3海域そのものの立地や風況はよく、三菱商事が撤退しても他の企業が応じる可能性がないわけではない。
洋上風力は、安定した風力によって電力が確保でき、騒音問題などが起きにくいことが長所といわれてきた。政府は今年2月に策定したエネルギー基本計画で、再生可能エネルギーの割合を40年度までに、4~5割程度まで引き上げる考えで、洋上風力はその鍵とされてきた。
その意味で、大企業である三菱商事の撤退は政府にとって大きな誤算だろう。実際、武藤容治経済産業相は「まだ信じられない気持ちだ。3海域すべてからの撤退は日本の洋上風力導入に遅れをもたらす。非常に遺憾だ」と話している。
三菱商事などの企業連合は政府の公募ルールでおよそ200億円の保証金を積み立てていた。撤退によりそれが国に没収されてもやむなしというほどの判断なのだろう。
打撃を受けたエネルギー基本計画で、原子力は40年度に2割程度とされているが、それにはまだ伸びしろがあり3割に引き上げるのも一案だと筆者は考える。SMR(小型原子炉)は安全でエネルギーの地産地消に向いている。
(たかはし・よういち=嘉悦大教授)
