元消防設備士からみた精神科閉鎖病棟からの脱出方法
※おことわり。本稿はあくまで消防設備士の視線からみたときの精神科の脱走可能性について評価しています。あくまで消防法や関連規則に基づき脱走の可能性を検討したものであり、それらの方法を教唆もしくは促すものではありません。
◇ 特定防火対象物認定について
多くの病院については消防法(昭和二十三年法第百八十六号)に基づき、特定防火対象物に指定されています(消防法施行令別表第一より)。特に通常の精神科病棟においては、別表六項に該当する可能性が高く、スプリンクラー、自動火災報知設備(以下「自火報」という)、誘導灯、排煙設備などの設置が厳格に行われています。特に閉鎖病棟を併設する精神科閉鎖病棟については、その性質上、ほぼ必ず「避難が困難な人」が存在する為、建物ごと特定防火対象物に指定されているでしょう。
◇ 精神科における施錠とその限界
精神科の閉鎖病棟においては、その性質上、多くの開口部(窓、避難口、一部病室等)が施錠されています。これは都道府県知事若しくは市区町村の長が命じたもので、措置若しくは医療保護で入院する患者が脱走しないよう、もしくは任意で入院する患者で、その患者が脱走しないようにする為です。そのため、多くの病院においては簡単な方法での脱出はできません。
しかしながら、非常時の報知設備が使用された場合はどうでしょうか。
いわゆる自火報の発信器を押下すると、火災が発生された旨がその施設の防災管理室などに伝わり、ベルが鳴動します。それと同時に、パニックオープンといわれる機能が作動します。
◇ パニックオープン作動による解錠可能性
上記仮定を元にすると、パニックオープンが作動することで、
(一)施錠された居室や開口部の解錠
(二)避難経路の確保
(三)解錠
が行われます。すると、自火報の押下により、火災報知器の鳴動だけでなく、解錠まで同時になされることになります。
すなわち、精神科病棟においても、パニックオープンからは逃れることができません。
◇ では、出たあとは?
当然ながら、通常脱走しただけではすぐに取り押さえられるでしょう。事前に弁護士や労働団体、もしくは報道関係などの支援者を集め、決死の覚悟で行うことが必要となります。
そのため、避難経路の確認。可能であれば、スマートフォンなど通信手段を用いて外部と連携を図るなどの手立てをとる必要があります。
・本稿は、報徳会宇都宮病院事件をみて考えたものです。


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