アナウンスとホスピタリティ
d47落語会で、島根県の松江に行った。
会場は松江城内にある興雲閣。
タクシーの運転手さんが「城内には入れないので、お城の下まで」と言うので、そこまで連れて行ってもらった。
「そこの階段を上がれば、すぐです」
と言われて歩いたのだが、いや、階段を上がる上がる…。上がるというか、登る。ま、お城なんてのはどこも高い場所にあるから当然なのだが。
真夏で汗だくになりながら、膝をガクガクさせて、ようやくたどり着いた。
会場にいっぱいのお客さんを見て、最初に思ったのは、
(この方たちは全員、あの階段を登ってきたのか!)
という驚きだった。
健脚で落語好きの方々のおかげで、会は大変盛り上がった。
***
松江は宍道湖に面している。あちこちに水路が通じた情緒のある街だ。観光地をぐるっと回るレイクラインバスというのがある。翌日、名物の出雲そばを食べたあと、それに乗った。
乗客は数人しかいなかった。観光ルートを回るので、車内ではバス停ごとに録音された観光案内音声が流れる。が、それとは別に、女性の運転手さんがナマで簡単なミニ情報を伝えてくれるのだ。このアナウンスが素晴らしかった。
当然、観光ネタを仕込んでいて、ルートごとにそれを短く喋ってくれる。録音された観光案内はプロの方が喋っているのでうまい(途中で歌を歌ったりもする!)。一方、運転手さんは喋りのプロではない。しかし、ナマでの喋りは、より耳に入ってくるものだ。
途中、折り返し地点で長い信号待ちがあった。その時、
「現在このバスは予定時間通りに運行しています。コースの中で、ここの信号待ちが一番長いのです。もう少しお待ちください」
という内容のアナウンスがあったのだ。
私は、(これぞホスピタリティ!)と思った。
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オモテもウラも藤井青銅
基本は毎週1本掲載です。内容は、 「書き下ろしエッセイ」 「これまでに書いたドラマ脚本、落語、腹話術などの脚本、番組台本」 「単行本未収録…
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