今年のプリキュアは肌の露出が多い!? 東映「イベント撮影禁止令」は大人ファンの迷惑行為ゆえか
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プリキュアショーで最前列が大人に
幼稚園児ママさんたちの会話で、こんなやりとりを聞きました。
「プリキュアショーにいったら前に男の人たちがいて……」
「えっ? それでどうしたの?」
「……距離とって見てた」
つまり、連れていった女の子は最前列で見られなかった、ということです。「えーっ」と思いました。わたしも女の子ふたりの親なのですが、子ども向けイベントで大人が前にいたら、ぶつかるとあぶないですし(力負けしてこちらが倒れます)、子ども向けイベントで前にくる大人の方に対しては、やはり念のため気をつけようという気持ちが湧きますので、同じように離れるでしょう。
ママさんの愚痴を聞いたのとほぼ同時期に、プリキュアショーを実施するあるレジャーランドから、このような投稿がありました。そしてこれがSNSでは「幼児向け作品で大人ファンが前に出過ぎるのはよくない」「公式が禁止するほどだからよほどのことがあったのでは?」と議論を呼びました。
版権元の方針により、今後実施するプリキュアショーでは、ショー中の撮影・録音・録画を禁止とさせていただきます。
プリキュア映画では、大人ファンは静か
子どもを連れて行楽地に出かけ、キャラクターショーを見せるというのはかなり大変なことです。そもそも支度させる、時間通りに電車に乗せる、お昼ごはんの用意、ショーの時間まで子どものテンションや機嫌を保つ、人混みでおりこうにさせる、熱中症対策……きっと夏休みの思い出づくりにいったのでしょうに、そのママさんには同情してしまいました。
子どもたちと2年前にプリキュア映画を観にいったときも、たしかに大人のファン(大きいお姉さん、お兄さん)はたくさんいましたが、みんな子どもに対して遠慮というか、配慮はしてくれているな、と感じました。そういう大人ファンもいてこそ映画が成立しているというのも、親としてはわかっていますから、棲み分けできていれば何の問題もない、むしろ共利共生関係なのだとわたしは思っています。
サンリオは、オタクにも子どもにも優しい
また、多摩のサンリオピューロランドにも我が家はよくいくのですが、サンリオはアミューズメントパークにおいてはこの10年以上、「カワイイ」を軸にマーケティング面では「オタク」や「声優コラボ」を強く打ち出していて(コロナ前は2.5次元ミュージカルにも力を入れていました)、世界各地からのインバウンド客も多いですし、流行っていたときには病みメイクの子も多かったり、ゴシックのペアドレスで決めている女の子2人組がいたり、かなり大人ファン(男性や単身の高齢者もよく見ると結構います)が多い場所です。しかし、子どもに対してはあぶなくないように、距離をとってくれる方ばかりで、安心して親子連れで出かけられます。
ですので、お母さんがちょっと引いてしまって娘を後ろに下げてプリキュアショーを見る、それをあとからママ友に愚痴るというのは、想像がつきませんし、結構治安が悪い状態だったのではないか、と思います。
忍たま映画でも、平和に棲み分けが
ですので、筆者は大人も楽しむ子どもコンテンツのイベントに出かけ(忍たま乱太郎の映画 ドクタけ最強の軍師などもそうです。この本を読んでから観にいきました。
映画館では公開から半年近く経ったというのに、リピーターの大きいお姉さんたちでほぼ満席でしたが、それで嫌な思いをすることはありませんでした。だからこそ、大人ファンの多い子ども向けコンテンツで迷惑をこうむったことというのはなく、「プリキュアショーで……」というママさんの愚痴に驚いたのでした。
今年のプリキュアがそもそも方針転換した?
ここからはわたしの想像に過ぎないのですが、これは「年々、大人ファンのふるまいが悪化してきて……」というよりも(昨年まで6年間観てきて、そういうことを感じたことがなかったので)、「今年のプリキュアの特性ゆえ」もあるのではないか、とも考えています。
プリキュアは毎年、2月が更新月(入れ替え月)と決まっています。大人にとっては残酷な話ですが、買い集めたステッキやぬいぐるみも買い直すことに……。それゆえに昨年度あんなに子どもが欲しがったおもちゃも、このように価格が暴落することになります。
アイドルという新シリーズ発表時の驚き!
新シリーズが始まるよりしばらく前に、次年度のプリキュアのテーマが発表されるので、子どもたちは毎年楽しみにしていました。2025年度のプリキュアのテーマは「アイドル」。それを聞いたときの娘たちの驚きようはかなりのものでした。
「えっ? プリキュア自体がアイドルみたいなものなのに、どうしてさらにアイドルにならないといけないの?」
「アイカツとかアイマスとかプリチャンとかラブライブとか、もう他にたくさんあるのに! プリキュアはプリキュアなのに」
わたしもそう思いました。
プリキュアは東映,テレ朝,ADKの巨大プロジェクト
なお、わたしは雑誌に連載されている上北ふたご先生のプリキュアのマンガが好きで、今年も連載終了後に『わんだふるぷりきゅあ!』のコミックを購入しました。
プリキュアは巨大プロジェクトなので、当然、今年の方針変更も、東映、テレビ朝日、ADKなどのプロデューサーおよび製作陣によって決定されたものだとわたしは理解しています。
プリキュア× ◯◯の掛け合わせテーマ設定の妙
プリキュアは毎年「プリキュア × ◯◯」という掛け合わせが変わり、舞台となる街も変わります。しかし、それぞれ年度ごとの世界はゆるくつながっていて、プリキュアという概念はどの世界の住人のあいだでも共有されています。
主人公は基本的に14歳の中学2年生が中心であることが多く、そして、映画となると歴代のプリキュアたちが(全員ではないですが)集結して、力をあわせて敵と戦います。
プリキュアは「女の子だって暴れたい」がシリーズの原点だといわれていますが、敵と戦うときも「完膚なきまでに倒す」ことは目指しません。勝つことではなく「ぜったいに負けない」こと、仲間を大切にすること、あきらめないことが重要なのです。
絶版のようですが、わたしも持っているこの『プリキュア名言集 わたしたちはぜったい負けない』はビジュアルも文章も綺麗で、気持ちのよい本です。
鬼滅の刃同様に、「悪役の事情」も物語のキー
プリキュアでは、相手に圧倒的に勝つことよりも、むしろ、弱い心にむしばまれ、事情があって悪に転落していた相手と宥和的になるエンディングが多いのが特徴です。この点は、『鬼滅の刃』の序盤で炭治郎が倒す敵に対してそれぞれの「やむをえない事情と鬼になるまでの物語」を読み取って同情することとも似ています。
子どもたちもプリキュアの「悪いやつにも事情がある」というお約束はすっかりわかっていて、シーズンの序盤から「うーん、この敵は夏過ぎたくらいで味方になる気がする」などといいながら観ていました。
食傷気味の「アイドル」でどう斬新さを出す?
そのように信頼して見ていたプリキュアだったのですが、今年は「アイドル」というかなり使い込まれた感のあるテーマ。さんざん秋元康の坂道シリーズを見せられてきて、『推しの子』アニメ化でアイドルのダークな部分も描かれています。とても子どもむけの内容ではないのに、2023年、幼稚園児・小学生に大人気だった推しの子と、YOASOBIの主題歌「IDOL」。
また脚のやたら細い女の子の出てくるアイカツやラブライブ等のアイドルアニメも複数作品ある中で、「戦う女の子」として20年以上の歴史を誇るプリキュアが、いったいどういうアイドルを出してくるのか? 韓国アイドルのように全米で1位というわけにはいかないでしょうし、まさかちゃんみなのノノガみたいに、決められた美醜の概念なんてぶちやぶって、ウチらにしか歌えない歌うたっていこうぜ!という感じでくる? どうするの? と思って放送初回を迎えたのです。
初回視聴後に脱落した子どもたち
で、視聴してみて、子どもたちの落胆はかなりのものでした。「お話が変」「もっといつものプリキュアの第1回ってギュッといろんな情報が入ってるよね? あの桃太郎の部分って必要だった? ギャグなのかな? でも初回にギャグってあんなにあったかな」「歌が好きなのはわかるけど、アイドルになってどうするの? 何がしたいのかわからない」「喫茶店のお仕事がよくわからない」それで、この6年間見続けてきたプリキュアだったのに「もう見ない」といったのです。
単に年齢がきたから卒業したのでは?と思う方もいるかもしれませんが、意外と、小学校高学年になっても同級生には隠して、プリキュアの世界観が好きでこっそりと見ている子というのもいます。それくらい、プリキュアにはエンパワメントの力があるのです(自分の観察している範囲内の話ですが、5歳くらいで早めにプリキュアを卒業する子は、ちいかわのアニメにハマる確率が高かったです。逆にうちの子はちいかわには無関心でした)。
親としては日曜の朝8時半に子どもたちを起こす理由になるのでありがたくもあったプリキュアが、こんなにもあっさりと卒業してしまうとは。少なくとも仲のよいママ友の家4軒で、計6名の女児のプリキュアの卒業が観察されました。それも「キミとアイドルプリキュア!」の初回視聴後にです。
ママ友と緊急LINEで問題点の洗い出し
ゆゆしき事態なので、うち一人のママ友とはLINEでこの件について2月に話し合ったのを憶えています。そのときに共有した問題意識としては主に次の3点があります。
「歌が好き」以外の動機が弱い
「アイドル」という「人に見られる」職業。主体ではなく客体
スパッツ、ブーツ、ロングスカート、ロングソックスなどの足を守るものが少なく、脚(特にふともも、ふくらはぎ)が出過ぎている。脚のふくらみも例年より強調されている
プリキュアの主人公は基本的に14歳ですが、胸はぺたんこと決まっています。なぜなら、このアニメ作品のメインターゲットは5歳くらいの女児ですから、胸のふくらみという第二次性徴を意識させるシルエットをしていてはいけません。変に自分の身体に対して否定的なイメージを持たないためにも、ボンキュッボンみたいな子が出てきてはいけないのです。
女児にとって脚を出さないというのは、防犯上とても重要なことです(冷え対策としても)。20周年記念作品だった「ひろがるスカイ!プリキュア」では初の18歳という成人のプリキュアが登場しましたが、彼女の場合は脇もしっかりと隠れるデザインのコスチュームになっていました。プリキュアたちは、大人から見ても、扇情的ではなく、なおかつ女児が見てかわいいウェアを毎年着ていたのです。
しかし2025年度のキミとアイドルプリキュア!は太ももが露出していて、例年に比べるとかなりムチムチでした。
少子化=市場シュリンクで、ターゲット変更?
わたしは「アイドル=見られる」(他者の視線に晒されてジャッジされる職業)であることが引っかかっていたのですが、ママ友はむしろアイドルプリキュア!の主人公が、かなり脚にくびれと膨らみのある体型であり、私服も変身後も露出が多いことに違和感を覚えたようでした。
肌の露出を比べてください。こちらが2024年度のプリキュア衣装です。
そして、こちらが2025年度のプリキュア衣装です。
明らかに脚・腕・デコルテの露出が増えています。このように方針転換していれば、ファンイベントにくる大人の振る舞い方が変わってもしかたないかもしれません。公式から「今年のプリキュアはこういう感じでいくから」といわれているのに等しいのですから。だから、プリキュアはこれまで通りなのに、大人ファンがおかしくなってついに一線をこえただけ、とはわたしは思いません。実際に、過去数年間のプリキュアと、2025年度のアイプリは明らかに毛色が異なるのです。
新シリーズ放送開始直後のママ友とのLINEはしばらく続きました。
「うーーーむ」
「もしかしてこれ、大きいお友達狙い?」
「あー。少子化が急激に進んでるから(きょうだいを持つ者同士、上の子と下の子でもかなり状況が変わっていることを育てていて実感します)何もしなければたしかにマーケットはシュリンクしていくよね」
「それで大きいお友達にお金落としてもらおうとしてる?」
「でも、プリキュアがそうなるのは嫌だなぁ」
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