ADHD児の脳の体積に関する研究成果を発表する水野准教授(左)と寿特命助教=9月5日、福井県福井市の福井大学文京キャンパス

 福井大学などの研究グループは、発達障害の一つ「注意欠如多動症(ADHD)」の子どもの脳について、MRI画像を基に、一部の体積が障害のない子どもに比べて小さいことを明らかにした。MRI機器による新手法を確立し、信頼性が高い分析を可能にした。現在は症状や保護者らへの聞き取りでADHDを診断しており、関係者は「研究を進めて画像診断で早期治療につなげ、併発しやすいとされるうつ病などの発症を防ぎたい」としている。

 ADHDは「集中が続かない」「落ち着きがない」「我慢が苦手」などの特徴がある発達障害。研究グループによると、子どもの約7%にみられる。

 福井大学子どものこころの発達研究センターの寿秋露特命助教(31)と水野賀史准教授(45)が9月5日、福井県福井市の同大文京キャンパスで会見して説明した。

 説明によると、MRIを用いた脳構造の研究はこれまでも行われてきた。ただ機器の種類や性能の違いで、脳の大きさなどの測定結果が異なるといった課題があったという。

 そこでサンプルの成人14人が、福井大学や千葉大学など研究参加機関の4台のMRI機器でそれぞれ脳画像を撮影し、結果を踏まえて機器ごとの誤差を補正する「トラベリングサブジェクト法」を開発。対象者の脳の特徴を正確に捉えることを可能にした。

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 同法を用いて7~16歳のADHDの子ども116人と、障害のない子ども178人の脳画像を分析。この結果、脳の82ある領域のうち、ADHD児の脳では、右の側頭葉を中心とした10領域の体積が小さいことが分かった。こうした領域は注意機能や言語処理機能に関わるとされ、水野准教授は「妥当な結果が出ている。脳の画像に基づき(診断の)客観的な指標を見つけるための一歩になる」と強調する。

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 グループでは今回の研究に用いた画像を含め、既に1200人ほどの子どもの脳画像のデータベースを構築。指標の開発に向け「残る画像の分析を進めたり、遺伝子情報などほかのデータとの関連性を研究したりしたい」と述べた。