「異性に触れてはならない」アフガン、大地震の女性被災者を見殺し…「救助隊は男だけだった」
【テヘラン=吉形祐司】アフガニスタン東部で8月31日に起きた地震で、「異性の体に触れてはならない」というイスラム法の厳格な適用により、男性のみの救助隊から女性被災者が見殺しにされていたことがわかった。現地住民らが読売新聞の取材に証言した。イスラム主義勢力タリバン暫定政権の女性抑圧政策が、回避できたはずの悲劇を招いた形だ。 【写真】「アフガンでは女性より猫の方が権利がある」と訴えるハリウッド女優
暫定政権の4日の発表では、最も被害が大きい東部クナール州の死者は2205人、負傷者は3640人に上っている。救助活動が本格化する中で、女性の救助を巡る問題が浮上した。
イスラム法は「マハラム」と呼ばれる配偶者や近親者以外が、異性の体に触れてはならないと定めている。同州ヌルグル地区のモハンマド・イサさん(71)は「救助隊は男性だけだった。マハラムが死亡した女性には誰も触れられず、多くの負傷者が救出されずに亡くなった」と悔やんだ。
タリバン暫定政権が女性の救助を阻止したとの情報はないが、イスラム法の厳格な適用を徹底しており、男性医師は女性の診察や手当てができない。ヌルグル地区の別の集落に住むナザル・モハンマドさん(53)は「治療を受けられず、重傷のまま死亡した女性もいる」と訴えた。批判を受けた暫定政権は急きょ、女性の医療従事者を集めて4日までに被災地に派遣。国際援助団体の女性職員も現地に入り始めた。
タリバンの最高指導者ハイバトゥラ・アクンザダ師は、女性の就業を制限し、遠出する際にはマハラムの同伴を義務化した。昨年末には女子医学校での教育が禁止され、女性の医療の担い手がいなくなることが懸念されている。
異性の体に触れることは、隣国のイランでも宗教的な禁忌とされるが、宗教権威「大アヤトラ」や最高指導者が、緊急時には認めるとの見解を公表している。