かずえさんへ ― なが里ねぎ農業が生まれた日。
※この文章は、僕の農業に名前をくれた方への一通の手紙です。
読みながら、あなた自身の“名前の記憶”や“大切な誰かの声”を、そっと思い出してくれたら嬉しいです。
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かずえさんへ
あの日、とある病院の一室で笑いながら話してくれたこと、今でもよく覚えています。
「永里くん、あんたの話は気持ちがいいね」って、そう言ってくれたことが、僕の心を軽くしてくれました。
あのとき、「うちの亡くなったお父さんも、ゆうじって言うんだよ」って教えてくれて。
名前が同じってだけで、あなたは僕を“お父さんみたいだね”って言って、
天井を見上げながら、どこか遠くにいる大切な人に話しかけるような声で語ってくれました。
でもね、その時僕は本当に思ったんです。
きっとかずえさんのお父さん(ご主人)は、あの会話をちゃんと聞いていた。
そして、あなたの笑顔も涙も、全部そばで見ていたって。
名前をつけることに悩んでいた僕に、
「応援したいから、わかりやすい名前にしなさい」って言ってくれた。
「英語にしたら、私たち応援できんがね」って笑ってくれた。
その言葉は、ただの助言じゃなかった。
あなたの“まっすぐな愛情”だったんだと、今ならよくわかる。
かずえさん。
あなたがいたから、「なが里ねぎ農業」は生まれました。
永里という名前を、“里”と結んでくれたのは、あなたです。
その“里”には、あなたが大切にしてきた暮らし、教えてくれた祈りの言葉、
そして何よりも、やさしい魂がちゃんと込められています。
この名前と一緒に、僕はこれからも歩いていきます。
あなたの応援が、ずっとずっと届いていると信じながら。
かずえさん、本当にありがとう。
これからも、“なが里”から見える空の下で、
ネギと、笑顔と、やさしい言葉を育てていきます。
あなたの話、あなたの笑い声、ずっと覚えてます。
いつでも話しかけてください。
また一緒に、冗談言いましょう。
― ゆうじより
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かずえさんが旅立ったのは、2025年の春でした。
でも僕の中では、今もずっと笑ってくれている気がします。
“名前”には、魂が宿る。
そう信じて、これからも「なが里ねぎ農業」を耕していきます。
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