【9月5日 AFP】欧州人権裁判所は4日、上司に虐待的な関係を強要された女性に関する訴訟で、フランスの性的同意に関する法律は不十分だとの判断した。

女性は1983年生まれで現在40代。2010年に臨時契約で病院の薬剤師助手として働いていた際、薬剤部長だった15歳年上の男性とサドマゾヒズム的な性的関係を持った。

サドマゾヒズムとは通常、一方が他方に苦痛や屈辱を与える行為を指すが、役割が入れ替わることもある。

彼女は後に、職務上の地位を利用した「拷問と蛮行を伴うレイプ」に加え、「身体的・精神的暴力」と「ハラスメントと性的暴行」を受けたとして男性を告訴した。

一審は有罪判決を下したが、控訴審は2021年、両者は継続的な性的関係を持つとする契約書を交わしており、性的同意があったものとみなされると判断し、無罪判決を言い渡した。

だが女性は、パリに本部を置く「職場における女性に対する暴力反対欧州協会(AVFT)」の支援を受け、ストラスブールの欧州人権裁に提訴。

フランス当局が効果的な捜査を行う義務を怠ったため、「二次被害」を受けたと主張した。

欧州人権裁は女性の主張を支持し、フランスの現行刑法は同意のない性行為に対する十分な保護を提供していないと判断。

フランス当局が欧州人権条約の非人道的または品位を傷つける取り扱いの禁止および私生活の尊重に関する規定を尊重しなかったとして、フランス政府に対し、女性に訴訟費用と2万ユーロ(約345万円)の損害賠償の支払うよう命じた。

欧州人権裁は、継続的な性的関係を持つという約束はいかなるものであれ、いつでも撤回できると判断した。

女性の弁護士を務めるマルジョレーヌ・ビニョーラ氏は、この判決がフランス政府に「女性をもっと保護する」法律の制定を促すことを期待していると述べた。

フランス議会は現在、レイプを「同意のないあらゆる性行為」と定義する法案を審議している。

同法案は、スペインやスウェーデンなどのように、立証責任を「被害者」ではなく「加害者」に課すもので、「加害者」が同意があったことを証明しなければならなくなる。(c)AFP