「物言う経営者」として知られる新浪剛史氏がサントリーホールディングス(HD)の会長を辞任し、3日の会見で説明に追われた。火種はサプリメント。違法性が疑われる製品の購入に絡み、警察の捜査を受けた。本人は違法性を否定するが、需要増の中で物議を醸してきたのがサプリだった。世間はサプリにどう向き合うべきか。規制と自衛の術(すべ)を考えた。(福岡範行、中根政人)
◆新浪氏「会社に傷がつく前に辞することにした」
3日午後3時すぎ。新浪氏は記者会見場に現れると硬い表情で息をはいた。
「深く反省しています」と頭を下げた後、続けたのは潔白の主張。市販のサプリを米国で購入したと述べ「日本でも同様の商品が売られていた」「適法であるという認識」と説明した。
前日にはサントリーHDの山田賢治副社長が「有罪だから辞める、無罪で何もなし、ではない。サプリを扱う会社の責任者としての資質という重大性を鑑みての判断」と発言。新浪氏も「会社に傷がつく前に辞することにした」と語った。
疑惑段階での辞任劇。同志社大の太田肇名誉教授(組織論)は「社会の安定性という点では、不安なところがある」としつつ、「こうせざるを得なかったのだろう」と受け止めた。
◆サントリー「やってみなはれ」でシェアトップに
理由の一つは、新浪氏自身の過去の言葉だ。昨年、紅こうじサプリで健康被害を起こした小林製薬を「ガバナンス(企業統治)の質を上げないと話にならない」と厳しく批判していた。
そして、もう一つ。太田氏は「(サントリーが)サプリを扱う代表的な企業であることは重い」と話す。
サントリーHDの子会社「サントリーウエルネス」(東京都港区、資本金5億円)の公式サイトによると、「100年以上の酒造技術と科学の確かな裏付け」をベースに1993年に初代「セサミン」を発売。その後も研究開発を続け、「創業者の『やってみなはれ』の言葉に込められたチャレンジ精神は、今なお引き継がれています」とうたう。
サプリの主な販売ルートは通信販売とされ、調査会社「TPCマーケティングリサーチ」(大阪市西区)の担当者は「昨年時点、サントリーウエルネスはトップシェアだった」と語る。
サプリ市場は、目を見張る状況にある。
◆コロナ禍へて1兆円市場に
別の調査会社「富士経済」(東京都中央区)に取材を進めると、「サプリメントの国内市場」は2020年から毎年、1兆円を上回り続けるという調査結果が示された。その背景としてコロナ禍での体調管理や健康意識の高まり、コロナ太り対策があったという。
財務省広報誌「ファイナンス」の2024年2月号でも、大臣官房総合政策課の調査員がサプリを含む「健康食品」に触れ、成長市場と評価。「世界の健康食品市場は、アジアを中心に目覚ましい成長を遂げている」ともつづり、18年に604億円だった「海外向けのサプリ市場」が2024年に1.8倍の1092億円になるという予測を紹介した。
ただ近年は、サプリの国内市場で伸び悩みがみられ、特に昨年の紅こうじ問題が影を落とした。富士経済は「消費マインドの低下につながっている」と言及、新浪氏も昨夏に「(サプリ)産業に迷惑をかけた」と断じていた。
では、今回のサプリにまつわる辞任劇を同業他社はどう見るか。ファンケル広報部は「他社の事案であるし、事実関係も把握できていない」、ディーエイチシー(DHC)広報室は「現段階でコメントする立場にない」と言葉少なだった。
◆紅こうじサプリを摂取した人に健康被害が相次ぎ
サプリを巡っては、物議を醸した例が少なくない。
先に触れた小林製薬の紅こうじサプリを巡っては、摂取した人に健康被害が相次ぎ、同社が昨年3...
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