竹中平蔵のポリシー・スクール
2008年4月1日 見える政策、見えない政策
経済政策を進めるうえで、経済財政諮問会議の役割は極めて大きい。このことは広く知られており、だからこそ、その在り方が問われることも多い。同会議の運営を担当していた当時、特に海外の人たちから「数ある政策ボードのなかで、なぜ諮問会議が大きな役割を果たせるのか」とよく質問を受けた。私は、会議での政策論議が国民に「見える」ことが重要なポイントだと考えてきた。
現状の政策に関しては、改革が進んでいないという批判が広がっている。確かに改革モメンタムの低下が成長期待を下げ、結果的に株価の押し下げにつながっているという構図は否定しがたい。とりわけ海外からの評価は厳しく、英エコノミスト誌は最近、「なぜ日本は失敗し続けるのか」と題する特集記事を掲載した。
政府は公務員制度改革など重要な改革にチャレンジしているが、こうした点は国民からなかなか見えず、十分に評価されない結果となっている。私は諮問会議のプレゼンスが低下していることと、公務員制度改革などが十分評価されていないことが、大きく関係していると考えている。
そもそも、経済財政諮問会議が重要な役割を果たせるのはなぜなのか。内閣府設置法によれば、同会議は重要な政策事項を「調査・審議」する場であり、それ以上の権限は与えられていない。調査・審議する場は政府内に数多くある。ただ、諮問会議は首相を議長とする常設機関であるという点において、他の政策ボードとは根本的に異なる。首相の前で議論し、トップの決断を速やかに引き出すという点に大きな力の源泉がある。これが、内閣府設置法で意図された諮問会議の役割だろう。
同時に重要なのは、諮問会議で議論された内容(議事録)が速やかに公表されることだ。つまり政策論議が「見える」という点である。どのような政策を実行すべきなのか、賛成・反対どちらの言い分に説得力があるのか。それらがメディアや国民にしっかり理解されることが可能だ。
議事録の公開は厳密な法律事項ではない。諮問会議自身が決めた運営規則で公開するとしているだけである。しかし、足して2で割るような「政治的妥協」を密室で行うのではなく、堂々と政策論議を見せるという点で大きな政策イノベーションとなった。トップの目の前で政策が議論され、それが国民からも見えるということが、経済財政諮問会議の最大の強みとなった。
そうした観点から公務員制度改革の経緯をみてみよう。今回の改革論議のきっかけとなったのは、2月5日に「公務員制度改革懇談会」(岡村正座長)が出した報告書だった。この報告はいくつか画期的な改革方針を示している。第1は、幹部人事を一元的・集約的に管理する「人事庁」を内閣に設けることだ。実現すれば、官庁が縦割りで既得権益を守ることは難しくなる。そもそも既得権益は、一部の人たちが排他的に享受できるからこそ存続しえたのである。
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(日本経済研究センター特別顧問)