「これ絶対記憶あるって」「もうエンタメだろ」との心ないコメントも…島根で発見《記憶喪失の男性》をめぐる反応に“決定的に欠けた視点”
■個人が続報をアップするリスク しかし、田中さん自身、メディア出演することで「いいこと悪いことがあるとは思う」と語っていましたが、ネットを使った公開調査はメリットばかりではありません。「個人情報がネット上で拡散され、残り続ける」「真偽不明の噂話が広がってしまう」「誹謗中傷に悩まされる」などのリスクが考えられます。 実際、今回の件を報じた動画のコメント欄には、「これ絶対記憶あるって」「ニュース番組に出演している時点でもうエンタメだろ」「記憶喪失なんてうらやましい」「どう考えてもやばい奴」「あの髪型もまともではない」「タレントになるのかな? すべて嘘だから」などの心ない声が書き込まれていました。
善意ばかりではなく悪意の声も入り乱れ、それがデジタルタトゥーとして残る怖さをあらためて感じさせられます。 田中さんが出演した番組を手がけたABCテレビは、有力情報が寄せられたことで、「ご本人の今後の生活や社会的影響を鑑み、削除しております」と記事の削除を発表。 その対応は「最低限の責任をきちんと果たしている」「メディアの手本」などと評価されているものの、顔や発言などがネット上に残り続ける「焼け石に水」の状態であることに変わりはありません。
さらに「今回の件はこれで終わりになるのか」といえば、いくらかの不安を感じさせられます。テレビが個人への配慮から続報をしなくても、個人がYouTubeやXなどのSNSに田中さんの姿をアップするリスクを完全に解消することは難しいでしょう。 なかには興味本位や再生数アップなどの「悪意はないから」という前提でSNSにアップする人も現れそうですが、それが本人を傷つけかねない行為であることは間違いありません。
ただ、あまり悪意のない行為は未然に防げるものであり、これを予防するために必要なのは、いい意味で想像力を持つこと。その後、田中さんはどんな心境で、どんな暮らしを送っているのか。もし自分ならどう感じていて、どう過ごそうとするのか。 推測でいいのでこれらを一歩掘り下げて考えることが、無用に当事者を傷つける行為の抑制につながっていくでしょう。 ではどんなことを考えていけばいいのか。 ■身元の判明と記憶の回復は別問題