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ハイウェイ・デッドヒート ⑦

「魔法陣の作成……?」


「シルヴァ、完成時に起きうる出来事は予測できますか?」


『分からぬ、こうも複雑な模様では……しかし魔術には必ず法則性があるのだ、だからこそ形状予測も出来た。 “召喚”を示すものとは思うのだが』


「召喚、ですか……」


隣のラピリスと目が合う、何を呼び出すつもりか知らないがどう考えてもいい予感はしない。

シルヴァの通信から状況が一変した、もはや悠長に追いかける時間などない。 勝負は一秒でも早く決めなければ。


「ドクター、シルヴァの予測した魔法陣が完成するまであとどれほどかかる!?」


『気安く呼ぶなよブルームスター! この速度のままなら猶予は10分も無い!』


「10分か、それまた……」


「師匠、自分はいつでも行けるっす!」


「まだだ、ライナの魔法は一度外してしまえばリスクがデカい」


ただでさえ接敵すら難しいこの状況、少ないチャンスを伺うにはあまりにも時間が短い。

俺やゴルドロスの速度ではまず不可能、可能性があるとすればラピリスか限界まで時間を圧縮したライナぐらいだ。


『だが……シルヴァは実にいい仕事をしてくれた。 敵のルートさえ読めれば素直に追いかける必要なんてないんだよ』


「そうか、先回り……ドクター? 目前は壁だぞ、曲がらないと衝突するが?」


『喋っていると舌を噛むぞ、掟破りの地元走りを見せてやる』


「……総員掴まれるもんに掴まれ! 絶対に振り下ろされるな!!」


S字カーブに差し掛かった車体は減速することなく、そのまま壁を突き破って道なき空へと飛び出した。

数m下方に見えるのは規律然と並んだ家々、このままの速度で落ちれば被害は小さくない。


「まったく、先に合図をくださいよドクター! ブルーム、羽箒!」


「お、おう!」


しかしラピリスは焦ることなく、抜き放った刀の切っ先を後方へ向け、収束させた風を撃ち出す。

風の噴出でブーストを受けた車体は空中でさらに加速、そこへ駄目押しで羽箒の浮力も追加。

ドクターの無茶振りによってコースアウトした車体はS字コーナーを大きくショートカットし、デュラハンの前まで躍り出た。


『リスクを取って得たチャンスだ、ありったけを叩きこめ。 ダメージを与えられなくとも気にするな、奴の無効化プロセスをこの1回で解析する!』


「まったく無茶しやがるなぁ!!」


心なしか、首のない魔人が少し動揺を見せた気がする。

後ろから自分を追いかけていたはずの魔法少女たちがいつの間にか目の前まで躍り出て来たんだ、驚いても無理はない。

だがこれから喰らうのは豆鉄砲などではなく、全力の殺意が籠った核弾頭だ。


「ブルーム、ライナ、合わせてください!」


「ちょっと、私もいる事忘れてないカナ!?」


「とにかく全員っすね、行くっす!!」


≪BLACK BURNING STAKE!!≫


ライナの電撃、ラピリスの斬撃、ゴルドロスの爆撃、そして俺の蹴撃、各々が干渉しない絶妙なコンビネーションと共に魔人へと放たれる。

どれもこれもが必殺の一撃、そうでなくとも致命傷は避けられないと思われる。

しかし、そのどれもこれもが魔人へ――――()()()()()


「な――――!?」


《マスター、後ろです!!》


俺たちの攻撃が命中する、視界から魔人が消え失せる。

頭上を飛び越えた訳ではない、本当に目の前から姿が“消えた”のだ。

そして振り返ると、いつの間にか俺たちをすり抜けて後方を走り去るデュラハンの姿だけが見えた。


「……ラピリス、見たか!?」


「ええ、はっきりと! あの魔人、攻撃を()()しました!」


今まで魔人は一切こちらの行動に対し、アクションを起こさなかった。

だが、今初めてこちらの攻撃を躱した――――つまり、脅威と判断したのだ。


「なんだ、何が違う? 今までの妨害と何が……」


《マスター、思案中に申し訳ありませんが……時間です》


タイマーの警告音が鳴り、纏っていた黒衣が煙と化して消える。

デュラハンは既に遥か彼方だ。 追いかけ、追い越すにしても果たして同じ手段が通じるだろうか。

ただ考えている時間はない、こうしている間にも魔法陣は完成しつつある。


「……黒で駄目なら、使うしかないか?」


虚空から呼び出したスマホ、その画面に映える赤いアイコンが妖しく輝く。

……悩むような時間は、ない。

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