作:擬人化カイオーガちゃんはいいぞ
▼ページ最下部へ
▼EP“わたしをみつけてくれた、あなた”
めのまえのおとこのこは、なにかをさけんだあと、きゅうにあわてはじめた。
「いや、その、さっきのは違くてぇ……!」
「————」
「急に叫んじゃったっていうか、そのその……!」
わたしのかお、からだをみてかおをあかくしたり、あおくしたり。すっごくはやいうごきで、てをふりまわしたり。
このこのすることぜんぶが、“わたし”にむけてしてくれたことが、なんだかうれしい。
「正気じゃなかったんだ! だからそんな目で見ないでくれ!!」
「————……。————」
なんで、だろーな、ってかんがえて。“あっ”、とくちがひらく。
このこは……このひとは、わたしをみて“こわい”っておもってない、そんなかおをしてないからだってきづいた。
それがわかったとき。
「
とくんって、きいたことのないおとがなった。
「なんで急に驚いた顔してるの……? というか何か喋ってくれぇ……!」
「————、————……! ————……?」
おとこのこにそういわれて、くちをひらくけれど、おとはでない。
……そういえば。わたしのからだ、ちいさくなってる。ひとみたいに、なってる?
「あ、え……もしかしてだけど、喋れないのか?」
「……」
「あ、頷くってことはオレの言葉は理解できるのか」
「————……」
「ああ、うん。口パクでなんとなくはわかる、かな」
それならおしえてほしい、な。ちょっとうごかしづらいけど、がんばってくちをあけてみる。
「
「んん? “あしたの、よていをつたえて”……?」
「……
「あ、その顔は違うな? えっと待ってな、もっとしっかり見るから!」
むずかしそうなかおで、こくこくしてわたしのほうにちかずいて、じーっとみつめられる。
わたしのくちをがんばってみて、きっとわかってくれようとしてる。でも、なんだか……ちかくて。
「————……!」
「ちょ、顔隠したらわからないんだけど……?」
あぅ、なんだろう、これ。あつい、へん。
だいきらいな、ねつ。でも、いまかんじてるのは、くるしいけどつらいものじゃなくて。
「あの、えっと……何、その目は……?」
「
あったかい、ものだった。
▼
ホウエン地方にある128番すいどうのとある場所。
ふかい、ふか〜い海の底にある洞窟の中。
正式名称は“かいていどうくつ”だが、そんなことを知るよしもない少し大人びた外見をもつ10歳の少年と、不思議な雰囲気を持つ12〜14歳くらいの外見年齢のポケ……少女は、ずいぶんとトンチキな出会いを果たしていた。
出会いから現在の状況は案外、架空の物語における主人公とヒロインの運命の出会いに思えるものだったが。
「————」
「えっと、えっと……」
浅いような、深いような不思議な輝く海水で出来た水溜まりの上で、オレはあぐらをかいて目の前の謎の少女と対話を試みている。
けれど、彼女はどうやら声を出せないようで手振り身振り、そして口パクでなんとか超簡単な意思疎通はできているというのが今だ。
対面、というかほぼ目の前にぺたんと座った女の子は、眠いのか寝起きだからか少しだけ瞼を落とした半眼でジーッとオレを見つめるだけ。
オレからのアクションには答えてくれるものの、向こうから大きな反応はないのだ。いや、一度だけ何かを聞いてくれたのだが、その内容が読み取れず、どこか不機嫌になってしまった。
顔を隠してふるふると顔を振られては引き下がるしかなく、なぜか元の海水の上で座った状態で話しているわけだ。だけどよぉ……。
「あはは……」
「————?」
話すことないよねって!!
いやだって、大嵐で船から放り出されて、目が覚めた先の謎の洞窟で出会った神秘的な女の子相手に何を話せばいいんだ。
チラチラと顔色を窺ってみるが、あいも変わらずその美しい黄色の瞳は、オレのことをずっと見続けるだけ。
改めて、この謎の少女を見つめつつ、ここまでのことを脳内で振り返る。そしてできるのは、出会って1時間も満たない男女が見つめ合い続ける謎の時間だ。
「……」
「————」
不思議と、本当に不思議なことに。なぜか初めて会った気がしない女の子。
どこかで見たこと……いや、聞いたことがあるような外見を持つ、とても可愛い少女。
「…………」
「————……」
彼女が目が覚めた瞬間、オレと目が合った瞬間に感じたあの不思議な感覚と、この危機的な状況にもかかわらず、落ち着いてしまっている自分。
このメンタル状況はきっと、自分がおかしくなっているからだ、と思っていたんだけれど。なんとなく、この子が近くにいてくれるから落ちつているように感じる。
なんだろうか、キナギタウンでぼんやりと海に浸かってリフレッシュしている感覚……に近いのかな。
本当に、なんでだろうか。
彼女のぼんやりとした明るい山吹色の瞳、その奥にある深海のような暗闇が広がった瞳孔を見ているだけで、穏やかな気持ちになっていく。
ずっと見ていたくなって、自然と身体が彼女の方に近づいて……
「………………」
「————、————っ!」
「あ」
ぷい、と顔を逸らされてしまい、ハッと正気に戻る。冷静に考えて、無言で初対面の女の子の顔を見続けるというのは、いかがなものかと。
頬を染め、口をすぼめて。眉を八の字にした少女は完全に目線を切ったまま、どこか気まずそうにヒラのついた右手? で、バシャバシャと海面を叩いている。
「ご、ごめんなさいっ!」
やっちゃった、と焦りが出始めて慌てて謝る。びちゃんびちゃんと海水を跳ねさせながら、何度も頭を下げて謝る。
どう考えても女の子に対して男がやっていいことではない。不快にさせてしまったと慌てていると。
ぽふっ……ぽん、ぽん……。
ふわっとしていて柔らかなものが、下げた自分の頭の上を優しく慰めるように叩かれて。それから、壊れ物でも触るようにおっかなびっくり撫でられているのがわかる。
ゆっくりと頭を上げて見れば視界には。
「
音もなく間近まで迫っていた蒼い少女は……ちょっぴり悲しそうで、寂しそうで。そして、とても心配そうな表情で恐る恐るオレの頭を撫でていた。
さっきとは違う意味で眉を下げ、瞳を揺らし……こてんと小さく首を傾げる様子を見て、何度か大きく瞬きをしてしまう。
そして、不思議と彼女が伝えたい音のない言葉が伝わってきた。
息の吐くほんのわずかな音だけ、大きく鼓膜を揺らすものはない……のに。自分のことを心配する想いがダイレクトに心に響いてくる。
動揺して、心は水面の波紋に揺れていたのに、今では静かになっている。
見つめられた彼女の瞳に映る自分の顔は、なんとも間抜けな顔になっていて。
「ッ……!」
その先にある、あの暗闇にまた引き込まれそうになって、正気に戻るために顔をふる。彼女を見つめると頭に靄がかかるような、魅了されてしまうような感覚に陥る。
「うん、うん……大丈夫、だよ」
「————? ———————」
「んと、ごめん。はっきりとはわからないけど、ありがと」
「————♪」
不安そうな顔から無に近い表情になったように見えて、わずかに細めた目と少しだけ上がった口角から、きっと安心してくれたとわかる。あと、ちょっとだけ機嫌も良くなった、のかな。
数センチの距離感となった彼女とオレ。耳に入るのは小さな水の流動する音と、彼女の息遣いだけ。
言葉を発せない彼女はもちろん、オレも言葉はない。静寂に包まれた空間のはずなのに気まずさはなく、あるのは穏やかな空気と潮の匂い。
それを数分ほど過ごしてから、“ああ、そういえば”と場に流されてまだしていないことを思い出した。
右手を彼女の方に伸ばして。塩水で乾いた喉で掠れた声のまま、忘れていたことを今やり直す。
「オレ、カイトって言うんだ。遅くなったけど、よろしく」
その言葉を聞いて、一瞬だけ目を見開いたあとでこくりと頷き、オレの手を見て難しそうな顔になる。
握手はいやなのかな、と思ったけどどうやら差し出された手の意味がよくわかっていないようで、自分の手とオレの手を見比べている。
なら、とその手を取って握る。触れた彼女の温度は冷たい、とまでは言わないけれど体温は低めで柔らかく、しっかりと“女性”を感じる柔さを兼ね備えていた。
「こうやって手を握り合って、“よろしくね”ってするんだ」
「——、————……」
彼女の手に付いているように見えるヒラは、どうやら本当に身体の一部だったようで、触ったことのない感触がふにふにとオレの手をにぎにぎと確かめているのが伝わってくる。
詳しい事情はわからないけれど、握手も知らないような子だから、誰かと触れ合うのも初めてなのかもしれない。
ずっとオレの手の感触を確かめている彼女に苦笑いして、視線を上に戻せば。
「——————」
小さな口がちょっぴりと開き、目を見開きながら頬を染めて、考え深そうにする少女が目に映る。
すごく興味深そうに何度も何度も手に力を入れたり、抜いたりして。数回それを繰り返した後に、オレと目線がぶつかる。
「——————っ!」
「んお、なに? え、なんで興奮してるんだ……?」
きゅっとした顔、目を丸くしてからぶんぶんと繋いだ手を振り回すようにして何かを伝えようとしてくれるが、楽しそうだなぁとか、喜んでるなぁ、くらいしかわからない。
っと、それより。
「なぁ、キミの名前ってなんて言うんだ? その、口パクでもいいから教えて欲しい」
「……」
名前、それを出した瞬間にちょっとだけ悲しそうな顔になる女の子に、聞かない方が良かったのかな、と後悔しかけて。
緊張した面持ちでゆっくりと小さな口を大きく開けて。一文字ずつ、動きだけで文字を伝えてくる。
見逃しちゃいけないと彼女の口元を注視して、おそらくそうであろう文字をオレの声で確認していく。
「―」
「“あ”?」
ふるふると首を振る少女。どうやら違うらしい。
「なら……“か”?」
「————!!」
「あ、正解だな!」
目を細めて少しだけ上がった口角、それから大きく頷く姿にこちらまで嬉しくなってしまう。一見すれば無表情な少女だが、一個一個の動き、身振りが活発で少なくとも感情自体は読み取りやすい子だとわかる。
そして彼女は次の文字を口にする。
「―」
「えっと、“い”?」
「!」
「よしよし」
読唇術とかしたことはないけれど、これだけゆっくりなら……なんとか読み取れる。そして三文字目、両手をギュッとして胸元に持ってきて、どこか気合を入れたようにきゅっとした顔で口を開く。
「―!」
「うーん……“お”?」
「—〜〜!」
「う、ん? 合ってるけど違う……? あ、“おー”?」
「!!」
「やっぱり?」
ぶんぶんと笑顔で頷く少女に、“なるほど”とこちらも同意するように頷き返す。気合を入れて同じような文字を伸ばしていたから、“おー”ってことね。
「―」
「あ、これはさっきと同じで“か”?」
「―っ」
「む」
「―ッ!」
「うーん……? ……“が”?」
「!!」
思わずこっちの方から繋いだままの手をぶんぶんと振って喜んでしまう。だんだんと彼女の伝えたい言葉がわかってきているようで、なぜかすごく嬉しい。
……そういえば手を繋ぎっぱなしだったと放そうとしたのだが。
「————っ」
すっごく悲しそうな顔で首を小さく振り、力を込めて握り直されてしまう。その目は寂しさで満ちていて……そんなものを見てしまえば放すこともできず、結局そのまま話すことにした。
「えっと、なら次の文字は?」
「……」
「あ、今ので最後?」
そう聞けばこくりと頷く。つまりは、これで彼女の名前はわかったんだけども。
今頭の中に浮かんでいるものは、女の子の名前には思えない。それどころか、オレは……ホウエン地方の人なら聞いたことがあるもので、困惑している。
けど、確かにそうだと伝えてくれた目の前の少女は、緊張した面持ちの中で何かを待つように固唾を飲んでオレを見つめている。
きっと、名前を呼んで欲しいのだろうけれど、ホントにこれで合ってるのかな。
ちょっとの不安はありつつも、教えてもらった文字全部を繋ぎ合わせたものを音にして、彼女に伝えてみる。
「か、“かいおーが”……で、合ってる?」
「————!」
ペかーっと光るような笑みで大きく満足そうに頷く少女に、オレは内心では“すごい名前をつけられてるな”と呆れていた。
かいおーが……カイオーガ。それはホウエン地方の伝説で海を生み出したと伝えられているポケモンの名前。
空一面を覆う程の雨雲を作り出し、大雨を降らせて干ばつに苦しむ人々を救った……なんて神話があり、今はどこかに眠っているとかだったかな。
いつか読んだおとぎ話を思い出して、確かそんな感じだったとひとりで納得し、頷いていると。
「————……?」
先ほどまで笑顔が消えて、曇った表情になった少女がおずおずとオレの顔を下から見上げるように覗いていた。
どうしてそんな顔をしているかはわからないけれど、まずは改めて。
「よろしく、カイオーガ」
「—……。——————!」
パタパタと繋いでない方の手をはためかせて、何度も頷くカイオーガ? につい笑ってしまう。たぶん同い年かちょっとだけ上かなと予想しているけど、どこか幼い反応をするに年下の可能性もある。
生まれたばかりのポケモンのような反応をするこの子になんだか癒されつつ、見て見ぬふりをしていた問題を直視し直す。
「う〜ん……。どうやってここから出ようかなぁ……てか、どこなんだろ」
「……?」
「あ、そか。えっとな————」
“どうしたの?”と首を傾げるカイオーガに、今の自分の状況を簡単に話す。
なぜここにいるのか、どうしてこの洞窟にいるのか、どうやったら外に出られるのか。
そんなことを話しながら、ずっと心の内にある疑問も言ってしまおうかなと迷いだす。疑問はシンプルなもので、“カイオーガと名乗る少女はどうしてこんなところで寝ていたのか”。
けれど、訳アリなのはなんとなく察しているし、下手につつけばよろしくないことになる……予感がしていた。
だから、結局のところ勇気が出なかったオレはその疑問を思考の奥底にしまい込んで、それ以外を全て話してみると。
「————、———」
「えっと?」
「——————、——っ!」
白い鉤爪のような手を湖の水底に向けたあとに、目をきゅっと閉めて足をバタバタ。次に身体全体を揺らしたかと思うと“ぷはー!”みたいな顔で大きく呼吸をした。
う〜ん? オレの話を聞いて何かをジェスチャーで伝えたがっているが、なんだろうとしばらく考え込んで。
「もしかして、ここの水底から外に出られるの?」
「〜〜!」
「ホント!?」
「————」
「おお、まじか!!」
こくこく頷いて肯定してくれたカイオーガに、つい前のめりになって再度確認する。
うわ、どうにかなりそう! と思ったのも束の間で、今のオレには手持ちのポケモンがいない。
きっと遭難していた自分を助けて、ここに連れてきてくれたホエルコはもう海の方に帰ってしまっている。なら、どうにかしてみずタイプのポケモンを捕まえて、ここからの脱出手段を考えなければ。
だがまずは、この場所から帰る方法を教えてくれたカイオーガにお礼をしなければ。
「ありがと! すごい助かったよ!」
「————♪」
「それじゃ、オレはなんとかポケモンを探して捕まえてくる。ホントにありがと、またね」
そう言ってから立ち上がり、別れの言葉とともに手を離そうとすると。
「…………っ!? ——! ——!!」
「のわぁ!?」
物凄い力で手を握り直されて引っ張られる。立ち上がった身体はバランスを崩して、引かれた方向にいるカイオーガの体へダイブ。
「な、なにすんだ……よ?」
「〜〜〜!」
ぎゅ〜っとオレの体を小さな体よりも大きな手で包むように抱きしめて、イヤイヤと何度も首を振るカイオーガにポカンとしてしまう。
彼女の腕に包まれたまま顔を見上げれば、捨てられそうになったポチエナみたいに潤んだ瞳でじっと見つめられてしまう。
うわ、すごい罪悪感。
なにひとつ悪いことをしてないはずなのに、すっごく申し訳ない気持ちになってくる。
流石にこんなことをされてしまえば、カイオーガが何を言いたいのかなんてすぐにわかった。
「一緒に行きたいのか……?」
「——! ——! …………————?」
「えと、別にいいけど……」
「————っ」
「ぉうふ……ち、力強いね……?」
少しだけ怒った顔のまま、より強く抱きしめられて顔が青くなる。なんかとんでもない怪力じゃないか、この子。
とりあえず一緒に行くことが決まったものの。よっぽど不安だったのか、しばらく体を絡めとるように抱かれたまま離されず、そのままの体制で落ち着くまで“大丈夫”と伝えて。
「——……」
ジトっとした不機嫌な眼差しの状態でなんとか解放された。……手はギュッと掴まれたままだけど。
「そんなに必死に掴まなくても置いていかないって……」
「——! ——!」
頭を大きく左右に振って“いや!”と伝えてくるカイオーガに困った顔をしてしまう。まるで親から逸れた迷子のよう。
しかし、流石に仲良く手を繋いだまま野生のポケモンを捕まえるのは難しいよなぁ、と反対の手に持っているモンスターボールを見つめて悩み込む。
ぷっくりと頬を膨らませていたカイオーガがそれに気づいたのか、頭にハテナを浮かべてオレの手におさまっているモンスターボールをじっと見始めた。
「どしたのさ。これはただのモンスターボールだけど、気になるの?」
「…………??」
「……え、もしかしてモンスターボールも知らないの?」
こくりと頷くカイオーガにびっくりしてしまう。嘘だろ、モンスターボールすら知らないのか……!?
とにもかくにも。
そんな驚きは一旦置いておき、簡単にこの小型のボールについて説明をする。まぁ野生のポケモンを仲間にできるアイテムだよ、くらいの話しかしてない。
「それで、オレは今日ミシロタウンってところで最初のパートナーを貰うはずだったんだけど」
「……」
「さっき話した通り遭難してここにいるんだ。だから、ちょっと特殊だけど相棒になるポケモンはここで捕まえるしかないんだ」
「………………」
「……カイオーガ? あの、聞いてる?」
話が難しかったのか、眉間に皺を寄せて“むむ”という顔になったカイオーガ。特にオレの言葉に対する反応もなく、ジーーーっとモンスターボールを見つめるばかり。
その反応にどうしたものか、と考えつつも。今、頭にあるのはどのポケモンをどうやって捕獲するかということ。
本来はある程度、自分の手持ちポケモンを使って弱らせてから捕獲する。けれど、そんな頼れる存在はまだオレの手元にはいない。
いっそポケモンに頭を下げてお願いしてみようかな……さっきのホエルコとかいけそうじゃない? なんて考えていると、繋がれた手が引かれる。
「なに?」
「————、———?」
「?? えっと?」
小さく口を動かしてから頭をこてんと斜めにしたカイオーガ。最後は“だめ?”と聞いてきたような気がするが、何がダメなのかわからず、オレは頭に疑問符を浮かべる。
オレの反応を見て少しだけムッとした顔になったカイオーガは、モンスターボールの方を指さした後に、その指を自分自身の方へと向けた。
「えっとモンスターボールを見せろってこと……?」
とりあえず今のジェスチャーからそう読み取ったオレは、モンスターボールをカイオーガの方に向けてみると。
「———」
「あ」
彼女は、モンスターボールの先っぽにあるボタンをポチッと迷いなく押した。
いや、なんで? という言葉がオレの口から出る前に。モンスターボールはぱかりと開く。
「はい?」
そして、本来はポケモンへと投げつけて捕獲する際に起きる光が飛び出して、さも当然のようにボールの中へと吸収されていくカイオーガを見て、オレの顔はあまりにも間抜けなものになっていただろう。
「……………はい??」
きゅうん……きゅうん……という音とともに、自分の手のひらで一定のリズムとともに揺れるモンスターボールはやがて。
ガチャリ、とポケモンを捕獲したときの音を当たり前のように奏でた。
「はぁぁぁぁぁぁ!!!???」