「湖都松江の印象」です。
これは、戦時中に松江市によって発行された観光パンフレット。意外に思われる人も多いかもしれませんが、戦時中、一時帰還した兵や軍需工場勤務者の慰労や内需拡大などを目的として国内旅行が推奨されておりました。そのためこの頃、各自治体は観光パンフレットを多く発行しております。
奥付にも昭和19年とあります。
古くて珍しいからという以外に、私はこの本には大きな価値がみっつ備わっていると思っています。
まず、執筆陣の豪華さ。
すごいメンバーが並んでいます。彼らが松江という町をどう見たのか、どこに立って、どの方角を見たのか。文豪たちの足跡を詳しくたどることができます。
次に、多くの貴重な写真。
宍道湖から中海に注ぐ大橋川にかかっていたとされる木造「くの字橋」。流れる水の力を分散させる目的でわざと湾曲させてある橋です。実際なんども流れに負けて崩壊しています。
伝説的に語られることはありますが、ここまで詳細に実際の姿を捕らえた写真はほとんどありません。
そして最後に、「普通に外来語が使われていること」です。
以前、quoraにも書きましたが第二次大戦下、外来語は禁止されていませんでした。
実際に「外来語は敵性語だから、使わないようにしよう」と主張していたのは市民団体なのです。彼らは英語教育をやめるように訴えて、国はそれをつっぱねてさえいたのです。
「戦時中に国によって横文字が禁止され、サイダーは蒸気水、ストライクは良しと言い換えさせられた。従わなかったら憲兵がやってきて殴られて非国民と罵られた」というような誤ったイメージが、もはや取り返しがつかないほど定着してしまっておりますが、全く事実ではありません。
この本はそのような大変長生きなデマを暴く、動かぬ証拠です。
珍しいだけでなく、とても価値のある本だと思います。これからも細心の注意を払って扱っていきます。
横文字使って殴りにくるのは憲兵じゃなくてマスコミとか変な団体の人‥
つまり、〇〇〇隊と新聞記者と変わらない構図