ハーヴァード大への助成金凍結は違法、米連邦地裁 トランプ政権は控訴の構え

米ハーヴァード大学の建物。レンガ造りで、正面にはギリシャ様式の柱が建っている

画像提供, AFP via Getty Images

アメリカの連邦地方裁判所は3日、トランプ政権がハーヴァード大学への数十億ドル規模の助成金の差し止め命令を違法とする判決を下した。

マサチューセッツ州の連邦地裁のアリソン・バローズ判事は、政権が約20億ドル(約3000億円)相当の研究助成金を差し止めたことについて、ハーヴァード大学の言論の自由を侵害したと認定した。同大学は東部名門「アイヴィーリーグ」の一つ。

この判決はハーヴァード大学にとって大きな法的勝利となったが、ホワイトハウスは控訴する方針を示している。トランプ政権は今年4月に助成金を凍結した際、同大学について、反ユダヤ主義や「急進的な左派」思想、人種的偏向があると非難していた。

一方で、同様の主張により助成金が危機にさらされていたアイヴィーリーグのコロンビア大学、ペンシルヴェニア大学、ブラウン大学は、訴訟に踏み切ることなく、助成金を維持するためにトランプ政権と合意に達している。

バローズ判事は、この日の判決文の中で、「本裁判所は、凍結命令および契約解除通知を、憲法修正第1条に違反するものとして無効とし、取り消す」と記した。アメリカ合衆国憲法修正第1条は、言論や集会の自由を定めている。

また、マサチューセッツ州ケンブリッジに所在するハーヴァード大学への連邦助成金の今後の停止を政府に禁じ、既存の助成金に対する支払いの保留も認めないとした。

ホワイトハウスは、この「甚だしい誤判」に直ちに異議を申し立てると表明。バラク・オバマ元大統領が任命したバローズ判事を「活動家判事」と呼び、現政権に有利な判断を下すことはないと非難した。

ホワイトハウスのリズ・ヒューストン副報道官は、「ハーヴァード大学には納税者の資金を受け取る憲法上の権利はなく、今後も助成金の対象にはならない」と述べた。

一方、同大のアラン・ガーバー学長は、大学の公式ウェブサイト上で声明を発表し、「今回の判決は、ハーヴァード大学の憲法修正第1条および手続き上の権利を確認するものだ」と述べた。

さらに、「我々は今後も判決の影響を精査し、法的な動向を注視するとともに、大学の使命を果たすために変化する状況に留意していく」と付け加えた。

動画説明, 米ハーヴァード大への助成金凍結は「正しくない」、反ユダヤ主義と闘う「意欲を評価」 米学生の受け止めは

84ページに及ぶ判決文の中でバローズ判事は、ハーヴァード大学が反ユダヤ主義への対応にもっと積極的に取り組むべきだったと指摘。同大学は近年、反ユダヤ主義に「悩まされてきた」とし、「憎悪的な行為を長期間容認していたことは誤りだった」と記した。

一方で同判事は、トランプ政権が同大学を制裁した真の目的は反ユダヤ主義への対抗ではなかったとした。

そのうえで、「政府は反ユダヤ主義を、この国の一流大学に対する、標的を定めたイデオロギー的な攻撃の隠れみのとして利用した」と示唆した。

バローズ判事はこれまでにも、トランプ大統領によるハーヴァード大学への留学生受け入れ阻止の試みに対して、差し止め命令を出していた。

ガーバー学長は、「いかなる政府も、私立大学が何を教えるか、誰を入学させ雇用するか、どの分野を研究するかを指示すべきではない」と述べた。

トランプ氏はほかにも、ハーヴァード大学の非課税資格を取り消すとともに、連邦資金による研究から生まれた特許管理権を政府が掌握する可能性を示唆している。

政府は現在、ハーヴァード大学との間で連邦助成金の凍結解除に向けた合意の可能性について協議を進めている。トランプ氏は、同大学に対し少なくとも5億ドルを支払うよう求めているという。