記者クラブ外の質問者はクジ引きで決定。公務がないのに時間制限が続く斎藤元彦兵庫県知事の定例記者会見

赤澤竜也作家 編集者
8月26日の定例記者会見で受け答えする斎藤元彦知事。参加を希望するクラブ外の記者やジャーナリストが増え、この日は9人がクジを引き、上位3番までが質問の機会を得た。(筆者撮影)

会見開始15分前になると、兵庫県・広聴広報課の職員から声が掛かる。

「フリーやクラブ外の記者さんで、知事に質問を希望される方は廊下に並んでください」

兵庫県庁4階の会見場から出て整列すると、

「あらかじめ注意事項をお伝えします。クジの交換はできません。順番が来て挙手がなかった場合、次の方の指名となります」

と告げられたうえ、それぞれの参加希望者が神社仏閣でのおみくじのように竹ひごを引く。

「よっしゃー」

「あーあ」

末端部に記された番号を見て、悲喜こもごもの喚声が聞こえてくる。

兵庫県・斎藤元彦知事の定例記者会見での一幕だ。

元通りに戻す要望はフル無視

斎藤知事は2期目の就任後初の定例会見となった2024年11月27日以降、「予算編成などが多忙である」という理由で記者会見の時間を1時間前後に制限するようになった。

予算編成にメドが立ったあと、何度となくクラブ側が会見時間を元に戻すよう申し入れているのだが、知事はかたくなに拒絶し続けている。

なぜ会見時間を制限しなくてはならないのか。

その理由について知事は、

「内外との会議や行事など公務がかなり立て込んできており、公務を入れるということが大事になってきていますので、これまでと同様の1時間程度ということで、私どもとしては今考えさせていただいております」

と答えている。(2025年2月5日 定例記者会見)

25回中、17回は会見後に公務がなかった

上脇教授に対し送られてきた「公文書公開決定通知書」。ちなみに同時に請求した「今年1月8日から今月9日までの定例会見が行われた日において、知事が実際に従事した公務内容・時刻などが明記された文書」は「公文書の不存在」として非公開決定がなされている。
上脇教授に対し送られてきた「公文書公開決定通知書」。ちなみに同時に請求した「今年1月8日から今月9日までの定例会見が行われた日において、知事が実際に従事した公務内容・時刻などが明記された文書」は「公文書の不存在」として非公開決定がなされている。

本当に斎藤知事の公務は立て込んでいるのだろうか。

神戸学院大学の上脇博之教授は、

「2025年1月8日から7月9日までの間で、定例記者会見が行われた日における知事の公務の予定内容・時刻などがわかる文書(知事の公務予定表など)」

の公開請求を行ったところ、その日程が開示された。

読ませてもらうと、この期間に斎藤知事の定例会見は25回行われていた。

確かに1月8日、1月22日、3月19日、5月8日などは引き続き予定が入っており、時間の記入はなかったものの3月27日や6月17日にも会合の記載がある。

しかし、残りの17回については会見のあと公務の予定が記されていない。

知事は「公務を入れることが大事」と言っていたが、実際には入っていなかったのである。

打合せが立て込んでいるから延長できない!?

筆者はこの件について尋ねようと前々回と前回の会見にも参加したのだが、ともに6番クジだったため、質問の機会を得ることはできなかった。

悔しかったものの、知事と記者との間で板挟みになっている兵庫県・広聴広報課がクジ引きという方法を採用せざるを得なかった難しい立場もわかるので、怒りをぶつける先が見当たらない。

9月3日の会見でようやく2番クジを引き当てた。

自分の番がまわってきた際、上脇教授に対して公開された知事の公務予定の文書について触れたうえ、

「公務が入っていないときは会見を延長するつもりはないのか?」

と尋ねたのだが、知事は、

「行事もあればですね、庁内での重要な案件のですね、 まあ、打ち合わせなどもありますので、まあ、あの公務の都合で、現在1時間というふうにさせていただいております」

と言う。

知事がこれまでの会見では主に「行事予定」という意味で使っていた「公務」という言葉を「知事の仕事全般」と置き換え、庁内でも多忙だから1時間で区切っているという。

到底納得することはできず、さらに、

「2022年にこの場で知事は、『会見については、基本的にあとを区切らず、公務があとにない限り、皆さんの質問が終わるまで続けたいなと思ってます』というふうにおっしゃられました。以前は3時間くらい時間を取っていたときもあったのですが、方針を変えられた理由を教えてください」

と問うたのだが、正面からは答えてもらえず、

「大切な公務打ち合わせというものが、やはり立て込んでおりますので、そういった理由からですねえ、記者会見については、1時間ということでさせていただいております」

と話すにとどまる。

2期目になって急に打ち合わせが激増したとでもいうのだろうか。

「知事は説明責任を果たすべき公人」

兵庫県在住の上脇博之教授は文書問題に端を発した県政の混乱を憂慮し、刑事告発や情報公開を求める訴訟を提起している。(筆者撮影)
兵庫県在住の上脇博之教授は文書問題に端を発した県政の混乱を憂慮し、刑事告発や情報公開を求める訴訟を提起している。(筆者撮影)

斎藤知事の定例記者会見に関する情報公開請求を行った上脇教授は、

「知事は説明責任を果たすべき立場にある公人です。定例の記者会見は、その責任を果たす貴重な場です。にもかかわらず会見時間を1時間に限定するのは責任放棄です。知事は『会見後の公務』を理由にしていたので私は公務予定のわかる文書を情報公開請求しました。公開された文書を見ると、25回のうち17回は会見後の公務は予定されていませんでした。知事は嘘の理由で会見時間を1時間に限定していたのです」

と語る。

兵庫県知事の定例会見には毎回、東京から足を運んでいるジャーナリストも少なくない。時間をかけ、交通費を払って駆けつけているにもかかわらず、クジに外れる姿は見るに忍びない。

斎藤知事はこれまでの会見の際、何度も「言論の自由」という言葉を口にしている。それならば、言論の自由を担保する存在である記者への対応も誠実に行っていただきたいものである。

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作家 編集者

大阪府出身。慶應義塾大学文学部卒業後、公益法人勤務、進学塾講師、信用金庫営業マン、飲食店経営、トラック運転手、週刊誌記者などに従事。著書としてノンフィクションに「国策不捜査『森友事件』の全貌」(文藝春秋・籠池泰典氏との共著)「銀行員だった父と偽装請負だった僕」(ダイヤモンド社)、「内川家。」(飛鳥新社)、「サッカー日本代表の少年時代」(PHP研究所・共著)、小説では「吹部!」「白球ガールズ」「まぁちんぐ! 吹部!#2」(KADOKAWA)など。編集者として山岸忍氏の「負けへんで! 東証一部上場企業社長VS地検特捜部」(文藝春秋)の企画・構成を担当。日本文藝家協会会員。

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