放送内容
- 小中高生の自殺が増加している
- 子どもが出すSOSを家族や周囲の大人が「気づき」「受け止め」「声かけ」する
- 増えるネットいじめ
- 家族や周囲の人の受け止めと声かけ
- 親だけで悩まず 相談を
- 新学期・長期休暇明け どうすればよい?
- 子どもの回復力を上げる
小中高生の自殺が増加している
警察庁自殺統計・原票データより厚生労働省作成(2024年は暫定値)
厚生労働省が発表した2024年の自殺者の「総数」は暫定値で20,268人。前の年から1,569人減少し、1978年の統計開始以来、2番目に少なくなりました。一方で、「小中高生」の自殺は527人にのぼり、これまでで最も多かった2022年を上回り「過去最多」となりました。
小中高生など10代の自殺が増えている一因として考えられているのが、「子どもを取り巻く環境の変化」があります。特に、「新型コロナウイルスの拡大」による影響が指摘されており、ふれあいやコミュニケーション不足をもたらしました。また、「貧困家庭が増加」していることも大きな理由です。家族関係への影響も大きく、子どもにかかわる時間が作れない親が増えたことや、地域のコミュニティーも疎遠になったことで、子どもが頼れる大人が少なくなったのです。
一方で、子どもが頼るようになったのが「インターネット」です。10代のネット利用時間はコロナ以前よりもさらに増え、SNSなどによる「ネットいじめ」も増加しています。
子どもが出すSOSを家族や周囲の大人が「気づき」「受け止め」「声かけ」する
子どもの自殺は、時として「理由も予兆もなく突発的に起こった」と語られることもあります。学校の問題、家庭の問題、友人の問題など、さまざまな問題が複数重なっており、原因を断定できないことがあるからです。ただ、どれだけ突発的に起こったとしても、何らかのシグナルやSOSが出されていることが多く、それに家族や周囲の大人が気づいていないのです。
さらに、自殺の原因が「いじめ」とされてニュースになることもありますが、実は友人とのささいな日常的な関わりが蓄積して起きることが多いのです。実際、学校の先生・スクールカウンセラー・親が気づいて、不調をきたした子どもが河邉さんの外来を受診します。その多くが「生きづらさ」を感じていると言います。
生きづらさを感じるのは、友人との関係だけではありません。親と子どもを別々に面談すると、親が子どものために良かれと思って言った言葉やおこなった行動で、子どもがつらさを感じ、苦しんでいるケースも多いそうです。
家族や周囲の大人は、子どもの気持ちに寄り添った対応が必要です。まずは子どもが出すSOSのサインに気づき、見逃さないこと。そして、受け止めて、声かけすることが大事です。
心配な子どもが出すSOSのサインとしては、主に以下のようなものがあります。
睡眠のリズムが変わった
身だしなみを気にしなくなった
食事の量が減った
見るからに気持ちが沈んでいる
イライラしていることが増えた
頭痛や腹痛が頻繁に起きる
部屋から出てこなくなった
登校をしぶることがある
子どもは大人に比べて自分の気持ちを「言葉にする」ことは苦手ですが、気持ちが睡眠・行動・食欲・感情・身体面にあらわれます。それら、外から見える情報を見逃さないことが重要です。
子どもは本来、生活のサイクルが整っているため、「睡眠サイクル」は一定です。眠れなくなったり、逆に寝過ぎたりしているのは、注意が必要となります。登校がギリギリになったり、遅刻したりすると、親は「だらしない」「やる気がない」と考えがちですが、ストレスやうつ気分が原因のこともあります。
また、髪型や服装の乱れ、お風呂に入らなくなったなどの「行動の変化」も、子どもの心に不調があるときの重大なサインの1つです。また、「部屋から出てこなくなった」「登校をしぶることがある」ときは、何かしらの悩みをかかえていることが多く、学校でのいじめや仲間外れ、友人間でのトラブルなど抱えている可能性があります。
「食欲」とストレスには大きな関係があります。心がしんどいと食欲が出ないことは大人でもよくあります。子どもが食事をきちんと食べているかどうか確認することは大事です。
「感情」面では、気持ちが沈むときだけではなく、逆にイライラして感情をむき出しにするときにも注意が必要です。
心の不調が、頭痛や腹痛など、「身体」の不調として現れることも多くあります。
増えるネットいじめ
令和5年 文部科学省 「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」
SNSは、友達やさまざまな人たちと関わりを持てる便利なコミュニケーションツールですが、最近はこれを不適切に使った「ネットいじめ」が問題化しています。文部科学省が毎年発表するネットいじめの件数は増加の一途をたどっています。
ネットいじめとは、SNSなどで悪口を書いたり、仲間はずれにしたり、個人情報を投稿したりすることです。通常のいじめと違い、いじめの認識がなくおこなってしまう子どもも多く、また、プライバシーの問題もあり、SNSの中の出来事は、家族や周囲の大人には気づかれにくいという側面があります。
子どもの不自然な変化に気づいたら、相談しやすい態度で向き合います。また、SNSは悪く言われることもありますが、孤独な子どもにとっては大事な人とのつながりとなります。親は、「子どものSNSを全否定しない」ことも大事です。
家族や周囲の人の受け止めと声かけ
子どもが心配なサインを出しているときは、家族や周囲の人が受け止め、声かけすることが重要です。
特に、子どもが「死にたい」と言ったときの対応は重要です。死にたいというのは、「すぐに死ぬ」というサインではありません。死にたいは「助けてほしい」というSOSであり、「死にたいくらいつらい」という思いを訴えているのです。
この「死にたい」というメッセージを放っておくと、絶望して死を選んでしまうこともあります。きちんとその言葉を受け止めて、態度にあらわすことが大事です。
まずは、子どもが「告白してくれたことに感謝する」こと、そして「聴く態度を示して接する」こと。この2つで、子どもは「大人側の向き合う姿勢」を感じ取れます。
この2つのポイントを意識した対応例としては、「『死にたい』なんて言葉がでてくるとは思わなかった。ちょっとびっくりしているけど、簡単に出てくる言葉じゃないと思う。伝えてくれてありがとう。しっかり聴きたいからもう少し教えてくれるかな」と、感謝と聞く態度を言葉にします。
そして、子どもが抱えていることを聴いていきます。子どもが話してくれたら「どうしてそう思うの?」「いつからそんなことを考えていたの?」「いつもそう感じてしまうの?」とその気持ちについて聴き、置かれている状況を把握することが大事です。
このとき気をつけたいのは、「心配している」という気持ちは伝えつつ、子どもが話してくるまで寄り添って「待つ」ことです。急かしてはいけません。
「死ぬのはだめだ」と言うと、子どもは「なんで死んだらだめなの?」と考えますし、「家族や残された人が悲しむよ」と言うと、子どもは「家族より先に自分の心配をしてほしい」と思ってしまいます。
「命を粗末にしている」「自殺は怖いし痛いし苦しいよ」と言っても、子どもはそんなことは分かった上で話しています。
また、「いつもそんなこと言って。勝手にすれば」と言ってしまうと、親が自分に興味をなくしていると感じてしまいます。
子どもとの会話の中で大切なことは、話が尽きるまでじっくり聴き、「死にたい」や「話してくれた内容」を「否定しない」こと。話を聴くときは「叱責や冗談交じりの声かけはしない」こと。家事をしていたり、テレビやスマホなどを見たりする、“ながら行為”をしがちですが、それをやめてしっかり子どもの様子を観察しながら会話することが大事です。
さらに、そのときの「視線の使い方」に注意が必要です。しっかりと本人に注目する必要はありますが、感情が視線に乗ることも多いので、話を聴くときは「対面」ではなく「横並び」にしたほうがよいでしょう。
子ども自身が理由を言いたくないことや、理由がたくさん考えられることもあります。すぐに言葉にできないこともあります。「問いただすような話し方」では、子どもが答えにくくなるだけです。
また、「結論づける話し方」では、子どもはさらに悩みが深くなったり落ち込んだりしてしまいます。「元気なさそうだけど大丈夫?」「話したくなったらいつでも声をかけてね」など、気にしている、心配しているというメッセージを伝えるとよいでしょう。
子どもは友人との関係で悩んだり、推しのタレントが亡くなったときなど、大人が思わないようなことで死にたい気持ちが出てきたりすることがあります。こうした喪失体験から自殺につながってしまうこともあります。子どもの悲しい気持ちを共有し、孤独にしないことが大切です。家族や周囲の大人が気持ちに寄り添い、悲しみ・喪失感を一人で体験させないようにします。
そんなときには、話に共感して会話を繰り返します。「そんなことがあったの。大変だったね」「しんどくなったんだね。わかるよ」と、子どもの気持ちに寄り添って受けとめることが大事です。また、「実は悩んでるんだ」と言われたら「悩んでるんだね」のように、会話を繰り返して理解しようとする態度をあらわすことが大事です。
アドバイスは、本人が「どうしたらいい?」と意見を求めてきたときだけにします。話を聴いたあとは、一人で解決しようとせずに医師・心理士・学校などに相談するようにしましょう。
親だけで悩まず 相談を
子どもに原因不明の心身の不良が2週間続いたら、うつ病など心の病の可能性があります。思春期外来など、子どもの心を専門的に診療している医療機関を受診して医師に相談してください。
また、厚生労働省のホームページには、電話・ネット・SNSで相談できるところが掲載されています。
お住いの市区町村にある保健所や保健センターなどでも相談可能です。
新学期・長期休暇明け どうすればよい?
3月4月の春休み、9月の夏休み明けに児童・生徒の自殺が増えます。新学期・長期休暇明けは、新しいクラスメイトや新しい先生、学習内容の変化、そして親の期待が、子どもたちにとって時に大きなプレッシャーとなり、不登校になる子どももいます。頑張り過ぎて無理していないか、上手な声かけが重要です。
子どもが学校に行きたくないと言うときに、無理やり学校につれていくのはよくありません。同様に、「勉強どうするの?」というのは親として心配するのは当然ですが、子どもにとってプレッシャーになることもあるので避けます。「行ったらなんとかなるよ」「大人になったら困るよ」というのも、大人の考えを押し付けているように感じます。「どうして?なんで?」「いつから行くの?」と理由などを聞くことも、子どもにとっては圧力に感じます。「行かないなら○○しなさい」というのは、行っていないことの懲罰のように感じます。そして、「こっち(親)もしんどい」と言うのも、つい出てしまうことがあるかもしれませんが、よくありません。
君(子ども)が一番大事。休んでていいよ。君(子ども)ならできるよ。親は味方だよ。いつでも話を聞くよ。と言ってほしいです。親の立場からすると、不登校がいつまで続くのかと心配になります。また、学校に戻ったときに学業や友達関係が回復できるか不安です。親の心構えとしては、「次のステップを踏み出せるパワーがたまるまで、じっと子どもを信じて待つ」ことです。
子どもの回復力を上げる
傷ついた子どもや自殺願望があるような子どもでは、「回復力を上げる」ことが必要だと考えられています。それは、「本人にとって良い経験をすること」です。特別なことではありません。例えば、できていること、おこなったことを褒めることや、「ありがとう」「役に立ったよ」の言葉が「成功体験」となります。人と人とのつながりの中で認められ、感謝されることが、心身の回復力につながります。