その上で「社会の無関心と偏見の解消が必要」と訴える。
羽馬さん自身、虐待の後遺症を誰からも理解されず生きてきた。精神科医にすら自身の成育歴や症状を伝えても、「異常行動」と言われ、再トラウマ化が頻繁に起きた。誰にも本音を話せず、安全な居場所もなく、孤独感を抱えやすいと話す。
「大人になっても、子どもの時に受けた虐待の後遺症に苦しんでいる人はたくさんいます。そのことをもっと多くの人に知ってほしいです」
虐待の背景に社会の歪み、人権があり守られる存在
大阪大学大学院の三谷准教授は、ACEサバイバーが被る多大な不利益は、その事実を見ようとせず対応をしてこなかった「社会の怠慢の産物」と批判する。
「ACEの背景には、現代社会のストレスの多さ、不安定雇用の増加、核家族の孤立、母親への家事・育児負担の偏りといった諸々の社会的要因があります。ある種、社会構造の歪みによる被害者ともいえるACEサバイバーが抱える生きづらさは、社会的に解決されるべきものです」
その上で、その事実から目を背けず、ACEサバイバーが生きやすい社会を実現させるための方策が求められると語る。
「まず、大人期におけるトラウマケアの充実が必要です。トラウマインフォームドケア(TIC)と言い、全ての人が逆境体験やトラウマを抱えているかもしれないという視点に立ち、他者と関わるアプローチです」
ACEスコアが高い人の中には、社会との接点を避けていたりする人もいるため、一見「付き合いにくい」と感じられる人もいる。だが、そのような人々を排除したり偏見の目で見るのではなく、その背景にある逆境体験やトラウマに思いを馳せ、安全な環境と信頼関係の中で回復を支えることを目指す。そして、「ACEそのものを未然に防ぐための子ども期における予防の徹底が重要」と説く。
「子どもの時から、『自分には人権があり守られるべき存在だ』と子ども自身が理解する関わりや教育が必要。そして第三者が介入する形での子育て支援を徹底し、虐待やネグレクトが発生しないよう社会全体で取り組むことが重要です」(三谷准教授)
(編集部・野村昌二)
※AERA 2025年9月8日号より抜粋
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