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山中龍宏「子どもを守る」

医療・健康・介護のコラム

5分でも死に至る「窒息」 食べながら走ったり、笑ったり…が危ない

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 保育の場で、細心の注意を払っていても窒息は起こります。

 3歳児。 咀嚼(そしゃく) する力が弱く、口の中で食物を押しつぶすようにして飲み込んでいた。そのため、食事の際は必ず保育士が付き添い、食物を適当な大きさにして提供するなど細心の注意を払っていた。

 午後3時12分頃、おやつとして背割りにしたパンに、油でいためたウィンナーとキャベツにケチャップやカレー粉で味付けしたものを挟んだホットドッグと、牛乳が出た。この子には、食べやすい大きさになるよう手でちぎって与えていた。4口目を与えた数秒後、急にいすから立ち上がり、息苦しそうにした。保育士は、すぐに窒息を疑って背中をたたき、同17分に救急隊を要請した。

 5分後に救急車が到着。救急隊員がドクターヘリを要請し、同48分にヘリコプターに収容された。一時は心肺停止の状態であったが、同52分に心拍が再開した。病院で治療を受け、約8か月半入院。退院後は自宅療養となった。

 子どもの事故の中で重症度が高いのが窒息です。乳幼児、障害児では窒息が起きやすいので、危険な状況や食べ物、そして処置について知っておく必要があります。

5分でも死に至る「窒息」 食べながら走ったり、笑ったり…が危ない

イラスト:高橋まや

食道に入ると「誤飲」、気道に入ると「誤嚥」

 気道とは、空気が通る道のことで、口から、咽頭、喉頭、気管、気管支、細気管支の順に細くなり、最後の袋状になっている部分を肺胞と言います。ここで空気中の酸素を取り込み、炭酸ガスを排出しています。

 異物が口を経て食道に入るのが「誤飲」ですが、気道のほうにモノが入ってしまうこともあります。これを「 誤嚥(ごえん) 」と言います。「気道異物」「気管支異物」とも呼ばれます。「誤嚥して窒息した」「誤嚥して気管支異物になった」という言い方をします。

 「窒息」は、そのように気道の一部に食べ物や異物が入ったり、あるいは外部から圧迫されたりして気道が完全に閉ざされ、酸素が不足する状態を指す言葉です。これに対し、「気道異物」「気管支異物」と言う時は、気道のどこかに異物が存在しても、空気がある程度通過できる状態を指します。

 窒息には、「鼻や口の 閉塞(へいそく) 」「気道の圧迫閉塞」「気道内異物による閉塞」「胸郭部の圧迫による呼吸運動障害」などのケースがあります。

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山中 龍宏(やまなか・たつひろ)

 小児科医歴45年。1985年9月、プールの排水口に吸い込まれた中学2年女児を看取みとったことから事故予防に取り組み始めた。現在、緑園こどもクリニック(横浜市泉区)院長。NPO法人Safe Kids Japan理事長。キッズデザイン賞副審査委員長、こども家庭庁教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議委員も務める。

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