専蔵

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今日は亡くなった大正生まれの父親専蔵の誕生日です。
散々迷惑を掛ける息子でしたが、真面目な公務員でよく働く人だった父親は自分みたいな破天荒な少年が羨ましかったのではと思ったりもします。

よく働く父親をみながら
「自分はこの人のような大人にはなれない」
そう思いながら育ちました。

専蔵が五十代半ばぐらいの時に中学の運動会に出て来て、50m走に出たのですが転倒してしまい手に結構な怪我をしてしまいました。

一人っ子だった父親は母親の自慢の息子だったらしく
「頭が良かった」
「運動神経が良かった」 
ということを祖母からよく聞いていました。

それを六男の自分に見せたかったのではと後々思うようになりました。

癌で入院した時に長男に連絡をして
「葬式に行った方がいいか、生きてるうちに顔を見せにいった方がいいか」
と聞いたら
「息子が葬式に来ないなんてのは喪主に不都合なだけだから、顔を見せに来い」
そう言うので5人の子供を連れて見舞いに生きました。
病院に向かう車の中で長男が親父が
「俺はもう死ぬのか」 
というのを聞きたくないと言うので顔を見るなり
「親父、死ぬの怖がってるらしいじゃないか、大した人生じゃなかったな」 
そう言うとニヤリと笑ったのです。

その時にやはり親父は自分みたいな小僧が羨ましかったのだと思いました。
ドラマでは癌の人も役者ですからそんなに痩せはしませんが本当に骨と皮だけになった親父に
「じゃあ帰るからな、みんな爺ちゃんチューしてあげな」
と言うと管だらけの親父にみんな嫌がらずに四方からチューをしてくれました、その時に親父は照れた表情をしたのです。
「親孝行をしたな」
と思う瞬間でした。

入院して二十七日目、ベッドから起きたことのなかった専蔵が
「座って見送る」
と座って手を振ってくれたのです。

その8時間後に静岡に着いた我々に姉から
「たった今亡くなったからね」
と連絡がありました。

自分とタイプの違う生き方をしている男を見て羨ましく思うことがありますが、真面目だった専蔵は自分みたいな小僧の生き方を
「あれも在り」
と思ってくれていたのだろうと思います。
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