米政府は8月29日、小包など800ドル(約12万円)以下の少額輸入品に対する関税免除を撤廃した。この制度は「デミニミス・ルール」として知られ、中国に対して先行して適用を停止していたが、全ての国に拡大された。ただし、手紙や100ドル(約1万5千円)以下の個人的な贈り物などは引き続き免税対象となる。
ナバロ大統領上級顧問は、免税撤廃を「数千人もの米国民の命を救う上、関税収入が年間最大100億ドル(約1兆5千億円)まで増え、数千もの雇用創出のきっかけとなる」としている。
デミニミス・ルールは1930年、関税法321条に基づき設けられていた。今回の措置は、トランプ大統領が7月30日に発表したもので、8月29日から実施された。今後6カ月は一定の経過措置があるが、本格的に実施されると、物価が上昇する可能性がある。
中国が先行してデミニミス・ルールの適用から外されたのは、中国製原料などを使った合成麻薬「フェンタニル」の流入阻止のためである。それを全世界に広げたのは、フェンタニルが別の国で積み替えられて米国に入ることを防ぐという理由だけでなく、関税収入を増やす狙いがあるとみられる。
しかも、このデミニミス・ルールをうまく利用して米国市場でのシェアを拡大してきたのは、中国系のオンライン通販「Temu(テム)」「SHEIN(シーイン)」などである。
これらのサイトを運営する企業は、関税を価格に転嫁する動きを見せており、それが結果として輸入物価を押し上げるかもしれない。小包などでは日本を含めて各国の郵便会社で取引の一時停止があった。
筆者の私事ではあるが、8月に訪米した。デミニミス・ルール撤廃直前であったが、通関係官はやたらと細かく持ち込み品を聞いてきた。デミニミス・ルールなら800ドルまで免税なので個人が引っ掛かることはまずなく、これまでそうしたことはなかった。
しかし、ルール撤廃に備え、いろいろな質問を米国に入国しようとする筆者にしたのだろう。これからは筆者が経験した些細(ささい)なことも含め、いろいろと各方面で問題になるかもしれない。
前述した中国系企業のほか、取扱量が減る日本国内の物流業界は業績悪化が懸念され、ルールを利用していたアパレル業界も悪影響を被ることが想定される。
(たかはし・よういち=嘉悦大教授)