ネクタイのマナー投稿で大炎上

一方で、炎上も経験した。

Xを始めたばかりでフォロワーも少なく、「炎上は、自分とは関係ない」と思っていた2021年。

笏本さんは、当時をふりかえる。

「知ってほしい、伝えたいが先行してしまって。少し刺激的に伝えるほうが覚えてもらえると思い、強めの言葉で投稿していた時期だったんです」

その日も、いつものようにネクタイに関する豆知識を発信した。

“実は、エリートと呼ばれる人の中にもこれを知らない人も多いのですが、ネクタイは「ディンプル」という「くぼみ」をつくって結べばオシャレさが増します。でも葬儀や謝罪の時にディンプルはNGです。なぜならその場に必要なのはオシャレさではないからです。学校では教えてくれない、大人のマナーです。”
(@shakunone 2021年9月13日、X投稿より)

大炎上した。

「商売のための炎上商法」「マナーを押しつけるな」等の声がコメント欄に積み上がる。上皇陛下や英国王室の方が葬儀に列席されている画像を貼り付けられた引用ツイートが、「ネクタイにディンプルがある」「こいつは皇室、王室をマナー違反と言っている」と、拡散された。

批判の声は雪だるま式に増え、過激な誹謗中傷に変化していった。

「死ね」「こういうやつは家族ごと苦しめばいい」「叩かれて草」

面と向かって言われているわけではないのに、恐怖が襲ってくる。通知をミュートにしても、やはり気になる。あまりに過激な投稿をしてくる人をブロックした。すると、「ブロックされた」とさらされる。「これ以上広がらないように」と投稿を削除したら、「ツイ消し逃亡者カス」。

SNSでなにを言われても、自分はちょっと叩かれたくらいではへこまない人間だと思っていた。テレビでSNSの誹謗中傷の事件を見ても、どこかひとごとに感じていた。けれど、当事者になり、こんなにも追い詰められる自分がいた。消えてしまいたい、とも思った。

「マナーより大切なのは優しさ」

ただ、届いたコメントには良識のある意見もあった。

「マナーよりも大切なのは、故人や残されたご家族への弔意と配慮で、一緒に弔って差し上げる優しさではないでしょうか?」

一方的に意見を押し付けるような発信をしてしまったことを反省した。これを機に、「自由にネクタイを結んでほしい」と願う職人として、より丁寧に発信することを心がけているという。

笏本縫製社長の笏本達宏さん
撮影=メリイ潤
笏本縫製社長の笏本達宏さん