埼玉県鶴ケ島市議会が4日、女性市議に肩書を使用した発信の自粛を求める異例の決議を可決した。市役所に爆破予告が届くなど、業務に影響しているためという。ただ市議はクルド人への差別を批判する交流サイト(SNS)への投稿などをし、自身も殺害予告を受けていた。議会が真っ先に行うべきは卑劣な犯罪への抗議ではないか。責任を転嫁させる市議会の対応と、女性議員への攻撃が横行する現状を問う。(山田雄之、中根政人)
◆「個人的な意見で行政・議会の業務に重大な影響」?
4日午後、市議会の開会を控えた鶴ケ島市役所前。「議会は殺害予告を受けた議員を守れ」「犯罪行為に加担するな」。約20人が集まり、思いを記したプラカードを掲げた後、議会傍聴に向かった。
市民たちが問題視したのは、この日提案された無会派の福島恵美市議(44)に対する「『鶴ケ島市議会議員』の肩書を使って発信することの自粛を求める決議」案。福島市議が市議の肩書を使い、個人的な意見を発信したことで「市民の安全と行政・議会の業務に重大な影響」が生じているとして、肩書使用の発信自粛を求める内容だ。
臨時会が始まり、決議案の審議に移ると福島市議は退席。質疑も討論もなく採決に入り15人中14人が起立し、賛成多数で可決した。40人ほどの傍聴席からは「討論しろよ」とやじが飛んだ。
◆クルド人差別に反対したら、批判が強まって
福島市議によると、2023年の初当選後、クルド人差別に反対し、外国人犯罪のデマを正すなどSNSに積極的に投稿する中で、今年3月ごろから他の議員やジャーナリストからの批判が強まっていたという。
6月下旬には戸田市の河合悠祐市議がX(旧ツイッター)で「我々の演説への妨害活動に加担」「みんなで(役所に)抗議の電話をかけよう」と投稿。市や議会事務局によると、5月末〜7月末、福島市議に関する問い合わせは計約100件あり、大半が議員辞職を求めるなどの抗議だった。
こうした状況を受け、鶴ケ島市の内野嘉広議長は6月下旬から複数回、事態が落ち着くまでのSNS自粛や、非公開にしている連絡先の公開など「何らかの対応」を福島市議に求めたが、応じなかったという。7月22日夜には市ホームページに「7月中に鶴ケ島市議会議員福島めぐみを誘拐して包丁で刺し殺す。また7月25日13時に鶴ケ島市役所を爆破する」などと脅す問い合わせが届いた。現時点で被害は起きていない。
◆川崎市議会は殺害予告に毅然と対応したのに
閉会後、提出者の山中基充市議は、報道陣の取材に「お願いベースの決議。個人の政治活動や発言の自由に制約をかけるものではない」と強調した上で「議会としても(福島市議の発信を)野放しにしているとなってはいけない。線を引かなければならないとの議論があった」と説明した。
ただ同時期、神奈川県でも類似の事件が起きていた。共産党県委員会は川崎市の女性市議の殺害や県委員会事務所の爆破を予告するメッセージが7月22日に届き、警察に被害届を出したと29日に発表。同市議会は翌30日、議長名で「言論活動に対する身体的・物理的な攻撃は示唆するだけでも萎縮効果を招くおそれ」「議会制民主主義の前提を壊す行為で断じて許されない」とコメントを出した。
この日の閉会後、正副議長と面会した福島市議は「川崎との対応の違いにがっかりしたと伝えた。攻撃を受けないために『口をつぐむべきだ』と言われたが、応じられない。これからも闘う」と宣言。「私が抗議電話をかけたり、爆破予告をしたりしたわけではない。敵を見誤っている。『迷惑かけた罪』を誰かに押し付ける相手が今回、私だった。それは女で無会派だからだ」と訴えた。
◆「加害者を批判しなければならないのに」
鶴ケ島市や議会事務局によると、福島市議がSNSで今回の決議に向けた動きを伝えて以降、議会の判断を疑問視する問い合わせも増えているという。
福島市議の代理人を務める神原...
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