福井女子中学生殺人事件で浮き彫りになった「裁判官ガチャ」の恐怖。元裁判官が告発する“司法の闇”
無罪放免を阻止するという厄介な正義感
だが、当然のことながら、すべての刑事裁判官が彼のような仕事ぶりであるとは限らない。前川さんの裁判では一審の無罪判決は控訴され、名古屋高裁金沢支部でまさかの逆転有罪となった。刑事裁判官の中には、罪を犯した人間を無罪放免にすることを極度に嫌うタイプがいる。何が何でもそれだけは阻止する──それがその裁判官なりの正義感だから実に厄介なのだ。 不運にも前川さんにはシンナー吸引での少年院歴があった。そして、福井女子中学生殺人事件の裁判でもシンナー事件が併合審理されており、これが不利に働いたのだ。 あってはならないことだが、裁判官の中には供述者がどういう人間かを信用性の有力な判断要素にしてしまう者が少なからずいる。供述の中身ではなく、どういう人間が供述したかに重きを置き、前歴があるとそれだけで「そんな人間の供述は信用できない」となってしまうのだ。 しかも、高裁支部は所属裁判官が少ないため、刑事経験がほとんどない民事裁判官が刑事を担当することがある。実際、二審で前川さんを有罪にした3人の裁判官のうち、田中敦裁判官はバリバリの民事裁判官だ。こんな刑事素人裁判官も加わって、林さんらの正しい事実認定をいとも簡単に覆してしまったのだ。 今回、本欄で取り上げた冤罪事件は、「裁判官ガチャ」の怖さを思い知らされるケースと言えよう。だが、警察や検察批判はあっても、不思議なことに裁判所に対して懐疑的な目が向けられることはそうない。なぜ、裁判官は判断を間違えたのか? 研究者やマスコミには、そんな視点も持ってもらいたい。 <文/岡口基一> ―[その判決に異議あり!]― 【岡口基一】 おかぐち・きいち◎元裁判官 1966年生まれ、東大法学部卒。1991年に司法試験合格。大阪・東京・仙台高裁などで判事を務める。旧Twitterを通じて実名で情報発信を続けていたが、「これからも、エ ロ エ ロ ツイートがんばるね」といった発言や上半身裸に白ブリーフ一丁の自身の画像を投稿し物議を醸す。その後、あるツイートを巡って弾劾裁判にかけられ、制度開始以来8人目の罷免となった。著書『要件事実マニュアル』は法曹界のロングセラー
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