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熱中症対策の落とし穴 肝臓があぶない? 7つの食材で対策を

“熱中症対策のために取り入れた「あるもの」が、肝臓にダメージを与えている…”

脂肪肝と診断された50代の男性は、医師からこのように指摘されました。

大腸がんや心筋梗塞などのリスクが高まるといわれる脂肪肝が増加。暑い時期は特に注意が必要です。

その原因や、改善を促す7つの食材についてお伝えします。

(首都圏局ディレクター申奎鎬)

【NHKプラスで配信】「首都圏情報ネタドリ!」猛暑に注意 肝臓があぶない!?
配信期限 9/5(金) 午後7:57 まで ↓↓こちらで見られます↓↓

猛暑で脂肪肝続出!?

会社員の中山大さん(51)。ことし6月の健康診断でショッキングな結果が出てしまいました。

中山大さん

肝機能の指標となるALTの数値は「60」。正常とされる「30以下」の基準を大きく超えていました。

専門の医療機関で「精密検査」を受けなくてはならない事態になっていました。

数値の悪化には、思い当たる節がありました。

学生時代からラグビーを30年以上続けている中山さん。

社会人ラグビーで活躍する中山さん

最近は仕事に追われているうえに、暑さでトレーニングの量も減っています。体重は、3年前に比べて8キロ増えました。

暑さや忙しさで運動する時間がとれない中、この夏は週に2回ほどのペースで飲み会の予定が入っていました。

この日は同僚の慰労会。2時間の宴席でビール3杯とハイボール2杯を飲みました。

中山大さん
「暑いので、ビール飲みたくなりますよね。トレーニング量と飲んでいる量が明らかにバランスが崩れているので、食べる量とか意識しているんですけどね」

トレーニングできない一方で飲み会の回数は増えていることを自覚する中山さん。健康診断でALTの数値が上がったのは、アルコールの摂取量が増えているからだと思っていました。

しかし、精密検査で意外なことを知らされることになります。

翌週、都内のクリニックを受診した中山さん。

肝臓の精密検査を受けたところ、「脂肪肝」と診断されました。エコー画像で、うっすら白く見えている部分が脂肪です。

「脂肪肝」とは、肝臓の細胞の5%以上に脂肪がたまった状態です。主な原因は、「食べ過ぎによる肥満」や「アルコールのとりすぎ」と考えられてきました。

中山さんは、脂肪肝になったのはアルコールの飲みすぎや運動不足が原因だと思っていました。

医師からは、思わぬことを聞かれました。

診察した佐々木洋医師
「中山さん、甘い飲み物とか飲みますか?」
中山さん
「缶コーヒーとか。最近砂糖入りのちょっと甘いのとか。走ったあとにスポーツドリンクとか、アミノ酸の入ったものとかは飲むかな」
佐々木医師
「液体の甘いものというのに一番要注意で。特にこの果糖は体の中にぐっと入ると一気に吸収されるんです。糖分が全部肝臓に持っていかれて、そこで脂肪になっちゃんですよね」

意外なことに、熱中症予防のために飲んでいたスポーツドリンクや甘い飲み物が、肝臓に大きなダメージを与えると告げられたのです。

果糖や砂糖が含まれる甘い飲み物は、固形の食べ物よりも、一度に多くの糖分が肝臓に届きます。

そのため、処理が追いつかず、肝臓への負担が大きくなるというのです。

吉祥寺みどり内科・消化器内科クリニック 佐々木洋院長
「脂肪肝になりやすい人は、甘い飲み物を飲んでいる人が多いです。若い方で運動もしているのに脂肪肝というパターンは多くて、いわゆる清涼飲料水をペットボトル500ミリリットルで、1日に必ず1本飲んでいる。スポーツドリンクとかエナジードリンクとか乳酸飲料に含まれる果糖やブドウ糖が、脂肪肝の原因になることがわかっています」

脂肪肝の診断を受けた中山さん。甘い飲み物をとる時間帯やタイミング、食べる量を見直して生活習慣を改善していくことにしました。

中山さん
「思ったよりショック、若干あったかな。頑張って痩せたいと思います」

“沈黙の臓器”とも言われる肝臓。痛みを感じる神経がなく、脂肪肝になっても自覚症状はほとんどありません。

でも、放置すると慢性肝炎や肝硬変、肝がんのリスクにつながるほか、大腸がんや乳がん、心筋梗塞などのリスクが高まるといわれています。

いま、脂肪肝になる人は成人のおよそ3人に1人といわれています。

患者数は近年、増え続けています。健康診断を受けた人のうち、脂肪肝とされた人の割合を調べた論文によると、2010年代は35.5%と、1990年代に比べて1.6倍にまで増加しています。

なぜこんなに増えているのでしょうか。

大きな要因が、生活習慣の変化です。

肝臓の重要な機能の1つが、「エネルギー貯蓄機能」。エネルギー源となる糖や脂質などを肝臓に「中性脂肪」として蓄え、必要なときにエネルギー源に変換して全身に配ります。

人類も、この肝臓の機能のおかげで飢餓との戦いを生き延びてきたと考えられます。

しかし、食生活が豊かになった現代は、肝臓にとって異常事態。食べ過ぎや飲みすぎのほか、ストレス、睡眠不足などの生活習慣の乱れも、肝臓には大きな負担を与えています。

もう1つのリスクとして考えられているのが、「暑さ」です。

熱中症予防のために、スポーツドリンクやジュースをごくごく飲む。さらには、日中の厳しい暑さを避けて屋外での活動も控えがち。

熱中症にならないために、よかれと思ってやっていたことが、知らず知らずのうちに肝臓に脂肪をためこむことにつながっていたのです。

劇的改善の秘策は7つの食材

肝臓ケアの秘けつは「食事」と「運動」。

なかでも、脂肪肝の改善効果が期待される食材があります。

阪本仁さん

長野県でレストランを経営する阪本仁さん(55)です。

ある食材を日常に取り入れ、わずか3か月でALTの数値を改善させました。

阪本さんが脂肪肝と診断されたのは去年。体重は約90キロ、ALTは110を超えていました。

この春から始めた食生活の改善で、体重は78キロになり、ALTも33まで減少しました。一体、なにを食べたのでしょうか。

阪本さんがこの4月から利用しているのが「スマート外来」です。

「スマート外来」を受診する阪本さん

佐久市内の病院で、医師の指導を受けて食生活を見直しています。

主治医の尾形哲医師は、8年前にスマート外来を開設。のべ1万人近くの脂肪肝の患者を診てきました。

尾形哲医師

科学的根拠に基づく食事療法と生活指導で減量をサポートしています。

脂肪肝を改善する秘けつとして尾形医師が阪本さんに薦めたのが、この7つの食材です。

枝豆、豆腐、納豆、ゆで卵、鶏むね肉、ツナ、しらす。

いずれも糖質が低く、たんぱく質が豊富で、肝臓から脂肪を落としやすくする食材です。

佐久市立国保浅間総合病院 スマート外来担当 尾形哲医師
「米、パン、麺、間食をゼロにするのではなくて、縮小してあげる。半分にしてあげる。多すぎるものを減らしてあげるだけで、脂肪肝というのはかなり短期間に治るということがわかっていたので、それを主軸にしたような指導を始めたということですね」

尾形医師の指導を受けて、阪本さんは食材選びから気を配るようになりました。

この日、地元の直売所で購入したのは、尾形医師にも薦められた納豆。

炒め物やギョーザ、お菓子、甘いジュースが好物の阪本さんですが、現在は野菜中心の食生活に気を配っています。

お気に入りだったジュースもドーナツも、今は意識的に控えています。

料理も工夫しています。

下処理された冷凍の枝豆を使用するなど、手軽さも続けていく大切なポイントです。

阪本仁さん
「枝を切ってとか、洗ってゆでてというのが結構大変なので。便利に使うのもダイエットのコツというか」

お鍋には塩や砂糖を使わず、カレー粉で味をととのえます。健康に気を配りながら、おいしい食事をつくる工夫を続けています。納豆は、ごはんにかけるのではなく、サラダのアクセントに。

食物繊維を多くとることで、満腹感を感じられるようになり、肝臓に優しい食事が続けられています。

阪本仁さん
「健康に気をつかうっていうことは、人生を豊かにするのかなと思って、この食卓を楽しんでいます。体は若返られないけれど、活動の幅は努力で広げられる。肝臓を通して、これから先も楽しく、いろんなことにチャレンジするっていうふうにできたらいいですね」

痩せ体質 お酒を飲まない人も要注意

放置しておくと万病のもとになりかねない脂肪肝。痩せている人やアルコールを飲まない人も注意が必要です。

日本人は遺伝的に太っていなくても脂肪肝になりやすい傾向があります。実際に脂肪肝の人の5人に1人は肥満体質ではないこともわかっています。

“沈黙の臓器”の異変に気づくためにはどうしたらよいのでしょうか? 注目されているのが、健康診断の血液検査でわかる「ALT」の数値です。

肝臓にある肝細胞は、栄養やアルコールを過剰に取りすぎたり、ウイルスに侵入されたりすると、次々と細胞を破壊します。この細胞の残骸が「ALT」。

正常なマウスの肝細胞(左)と脂肪肝のマウスの肝細胞(右)

血中に含まれるALTの量を調べることで、肝臓がどの程度ダメージを受けているのか、知ることができます。

いま、このALTの数値の見方が大きく見直されています。

従来は、厚生労働省が定める特定検診や人間ドックでは、ALTが「50」を超えた場合に医療機関の受診を推奨してきました。

2年前、日本肝臓学会はこの目安を大きく見直しました。

「30」を超えた時点で、すでに肝機能が低下しているおそれがあるとして、「かかりつけ医の受診」を提言したのです。

肝臓ケアは「ALT30超」を目安に

ALTの数値が30~50の間の人は、どの程度脂肪肝になっているのでしょうか。

ふだんから健康に気をつけているという10人の皆さんに、検査に協力してもらいました。

最近お酒を控えているという、こちらの女性。ALTは39です。

肝臓の状態を超音波検査で調べてみると…。

医師「肝臓だけ白いですよね。しっかり脂肪がついていますね」

気付かないうちに脂肪肝になっていました。

女性「脂肪、どうしよう」
医師「女性の場合、年齢とともに脂肪がたまりやすくなるんですよね」

お酒をまったく飲まないこちらの女性は、炭水化物を控えた食生活や筋トレに励んでいますが、脂肪肝と診断されました。

女性「ショックです。お酒もまったく飲まないので」
医師「お酒飲まない。じゃあ典型的に食事のバランスですね。食事療法っていうのはやっぱり偏っちゃだめなんですよね」

検査の結果、10人中3人が脂肪肝と判明。従来のALT50の基準では、見過ごされていた可能性がありました。

見た目や体重などには関係なく、甘い飲み物の飲みすぎや食生活の偏りがあれば、脂肪肝になるリスクが誰にでもあるのです。

大きい筋肉を動かして脂肪燃焼ホルモンを

肝臓ケアには「食事」とあわせて「運動」がポイントになります。

脂肪肝を防ぐ生活改善を指導している虎の門病院では、暑い夏でも室内でできるスクワットと壁押しを患者たちに薦めています。

ポイントは、大きい筋肉を使うこと。

最近の研究では、背中や太もも、お尻など大きな筋肉を鍛えることで生まれるホルモンが、脂肪の燃焼にいいこともわかってきました。

日本肝臓学会理事長 竹原徹郎医師

竹原徹郎医師
「筋肉は第2の肝臓といわれていて、糖分をためこんだり、解毒作用があったりして、肝臓の代替の役割も果たしています。脂肪肝を改善するためには、体重の7%の減量と言われていますが、肝臓の脂肪は皮下脂肪に比べて落ちやすいことがわかっています。まず最初は3%でいいですから、実際にスタートすることが大切です。1日10分の運動でいいので、無理のない範囲で続けていけば、肝臓ケアにつながります」

暑い時期こそ気をつけたい脂肪肝。まずは健康診断の結果を見直してみてください。

ALTが30を超えていたら、あなたの肝臓がSOSを出しているサインかもしれません。

(8月29日「首都圏情報ネタドリ!」で放送)

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