人類の過去と未来を巡る壮大なスケールの物語と、歴史や神話・伝承上の人物を召喚して戦う独特のバトルが楽しめる「Fate/Grand Order」(以下FGO)。多くのファンを魅了してやまない「FGO」の面白さは、広がり続ける作品世界そのものにあります。全体構成・メインシナリオ・シナリオ執筆・総監督を担当する奈須きのこさんを中心に、様々な書き手たちによって生み出される、人類の存亡をかけた数々の戦いは、じっくり腰を据えて堪能したい、深遠なストーリーで描き出されています。
そして、未来が失われた世界でマスター(プレイヤー)と出会い、様々な形で関わりを持つ英霊(サーヴァント)たちもまた、本作の楽しみの一つです。アーサー王伝説に描かれたブリテンの王、アルトリア・ペンドラゴンや、中国三国時代の名軍師と名高い諸葛孔明、英仏百年戦争で重要な役割を果たしたジャンヌ・ダルクなど、様々なサーヴァントたちが、共に戦い、ピンチを救い、時には敵対する存在として登場します。
約10年をかけて紡がれてきた、「FGO」の奥深い冒険を踏破するのには、それなりの時間を要しますが、その先に広がる世界は、何ものにも代えがたいものです。2017年末に配信された第2部プロローグ「序/2017年 12月26日」から約8年をかけて描かれてきたメインストーリー第2部が、2025年の冬に終章を迎えることが予告されています。もしこれから「FGO」のストーリーを進めようとしているなら、ここで紹介する、奈須さんがインタビューで話した第1部のみどころを頭の片隅に置いておくと、より楽しめるはずです。
歴史の転換点を巡る
グランドオーダー
「FGO」第1部のメインストーリーで描かれるのは、聖杯探索(グランドオーダー)と呼ばれる旅路です。過去の時代にさかのぼり、2016年末で絶滅することが決まった人類の未来を取り戻すことを目指します。
英仏百年戦争期のフランス、古代ローマ期のイタリア半島、大航海時代の大西洋、産業革命時代の英国、米国独立戦争期の北米、最後の十字軍が撤退した時代の中東、紀元前2655年頃のメソポタミアと、歴史の転換点となった様々な時代の様々な地域を巡り、協力してくれるサーヴァントと書き換えられてしまった歴史を修正していきましょう。
奈須さんは、第1部の位置づけを、以前インタビューでこのように話していました。
「第1部は、世界史の勉強というとすこしおこがましいですが、自分たちが今いる現代が、どんな人たちの頑張りや生活の結果こうなったものなのかを知ってほしい、という想いで描いたんです」
「『FGO』第1部のシナリオを書いていた頃は、そのあたりを軽んじる風潮があって。古代人の文明は大したことなかった、と考える人たちもいたんですね。でも、ローマなんてロストテクノロジー(失われた技術)が山ほどある時代だし、それぞれの年代で素晴らしい発想、発明があったからこそ現代があるのです。そういった過去の歴史に思いを馳せながら、『今』の娯楽を味わってほしい、と考えました」
「第1部はぜひ、人類史のキーポイントを感じながらプレイしていただきたいです」
また第1部だけでも、様々な人物やサーヴァントとの出会いと別れが、マスターであるあなたを待ち受けています。そこもしっかり味わってほしいと奈須さんは話します。
「できれば第1部に登場したサーヴァントの『幕間の物語』もプレイして、第1部にしか存在しないカルデアの、Dr. ロマン(ロマニ・アーキマン)とか、ダ・ヴィンチちゃん(レオナルド・ダ・ヴィンチ)とかときちっと交流して、第1部の終章を迎えていただけるといいんじゃないかと思います。
第1部のストーリーは、ある意味王道的な流れですし、立ちはだかる敵の考え方も、今までいろいろなエンターテインメントで語られてきたことだと言えます。人間が生きる上で普遍的なテーマです。その、『ある意味使い古されたもの』だからこそ、新しい技法で提供しようと務めました。第1部終章への流れは、この題材を『FGO』ではこう語るのか、と感じてプレイしていただければ幸いです。
……と堅苦しいことをお伝えしましたが、お気に入りのサーヴァントができたら、ぜひそのサーヴァントを集中的に強化して、共に冒険をしてください。読み物として作ってはいるけれど、ロールプレイングゲームなので、サーヴァントを育てながら世界を救っていく体験が一番楽しいと思います。
自分の好きなサーヴァントが、自分で育てたからバトルで強い、っていう体験はすごく気持ちがいいので、シナリオの中にそういうプロットを盛り込んでいきましょう、ということはすべてのライターさんにお伝えしています」
Fateシリーズの作品を
知る人も知らない人も
「FGO」のストーリーの中には、「Fate/stay night」など、奈須さんがかつて携わった作品の要素もちりばめられています。知っているとより深く味わえる部分ではありますが、もちろん、それらの作品の知識はなくても十分に楽しめます。
「ノベルゲーム『Fate/stay night』をご存じの方は、『FGO』をプレイしたら『すごくFateしてる』と感じていただけると思います。それは、根底にある設定が変わっていないからです。でも、もちろん何も知らない方でも楽しめるように作っていて、そこは徹底しています。『FGO』で、初めてFateシリーズの世界に触れる方が大多数ですから」
「FGO」をプレイして、さらにその世界の知識を深めたいと思ったら、関連するゲームや映像作品も楽しんでみるといいでしょう。また、ゲームの「マイルーム」から「マテリアル(ストーリー)」を開き、「メインストーリーでの記録」にアクセスすると、改めてストーリーを読み返すこともできます。
ひたむきに未来を取り戻す戦いを続ける主人公の旅路を、あなたもぜひ体験してください。