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FGOの異聞帯に込められた想い

奈須きのこさんが話す、「Fate/Grand Order」第2部の見どころ。

Fate/Grand Order

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2016年をもって人類の歴史は終わる。そんな現実を突き付けられる「Fate/Grand Order(以下FGO)」の第1部。主人公であるあなたは、過去の時代にさかのぼり、改ざんされてしまった歴史を修正する旅をします。

旅の結果、なんとか世界を元に戻せた主人公は、平和を取り戻したかと思いきや、2017年になると、今度は地球上が白紙化されてしまいます。その白紙化された地球には、異聞帯という「何らかの理由で、未来がなくなってしまった、発展性がなくなってしまった結果、今の世界とはまったく違う形になり、やがて終わってしまう世界」が上書きされるという事態に直面します。こうして「FGO」の第2部の旅が始まります。

約8年の歳月をかけて描かれ、2025年12月20日に終章を迎える予定の「FGO」第2部には、制作陣のどのような想いが込められているのでしょうか。全体構成・メインシナリオ・シナリオ執筆・総監督を担当する奈須きのこさんに、10周年を迎えた「FGO」について伺いました。

自分たちが生きた後に
続いていく未来

「FGO」第1部を執筆した時は、「これまでの人類史を知ってもらいたい。こういうことがあって、今の人類はこういうことの先にいるんだ、ということを知っていてもらいたい。そういう気持ちが一番大きくありました」と話す奈須さん。では第2部執筆時はどうだったのでしょうか。

「第2部に取りかかったのは、世界情勢がどんどん悪くなっていった時期でした。社会の雰囲気も、あまりいいものではありませんでした。その中でゲームとして提示できるメッセージを出すべきだと考えました。自分たちが生きた後にも、未来は続いていくんだよ、というのを示していくべきだと思ったのです。すぐに報われることはないかもしれない。今後もそれほど変わらないかもしれない。でも、腐らずにやっていこう、と」

「そうは言っても、エンターテインメントとして、最後には苦労したぶんだけのハッピーエンドをきちんと用意したい、第1部を遊び終えた後、さらに別の喜びを見付けてほしい、という想いもありました。自分たちが夢中になったもの、例えば部活だったり、仕事だったりは、いつか終わりが来ます。でも、その時に気持ちよく終われるというか、終わった後も、まだまだ先はあるんだよ、ということを示したかったんです」

様々な地域の「Ifの世界」を
膨らませた異聞帯

第2部のシナリオ執筆は、第1章と第2章を、これまでも「FGO」のシナリオを執筆してきたメインのライターさんが、第3章をニトロプラスの虚淵玄(うろぶちげん)さんが、第4章と第5章を別のメインのライターさんがそれぞれ担当しました。そして第6章と第7章を奈須さんが担当しています。

ロシア、北欧、中国、ギリシャ、インド、ブリテン(英国)、中南米の7つの地域を選んだ理由は、「いろいろな地域に焦点を当てて、『Ifの世界』を作り上げよう」と考えたからだといいます。

「まず全体構成を決めて、ライターさんにそれぞれ一つの地域を担当してもらい、アイデアを膨らませてもらいました。それを自分が監修して、全体の流れに合わせて調整させてもらう、という形で制作しています」

第2部では、異聞帯という「Ifの世界」を描いています。

「それぞれの地域で、歴史の過程で何が変わったら、どのようにして異なる進化を遂げるのかを考えるところから、ライターさんにお願いしました。これはなかなか大変な作業で、各ライターさんもFateシリーズをよく知っている人たちではありましたが、やろうとしていることや設定が込み入っていて、自分の前準備にも結構な時間を要しました」

ブリテンと中南米の
ここに注目

元々は、第6章以降も奈須さん以外のライターさんが執筆する予定だったそうですが、「いろいろな偶然が重なって、いいキャラが集まり」、奈須さんが第6章で改めてブリテンの物語を描くことになったのだといいます。

「過去の作品で、いろいろなアーサー王(アルトリア・ペンドラゴン)の話を書いてきました。『FGO』で、これまでのアーサー王とは違う、英雄的行為に否定的なアルトリアを出して、それがどういう結末を迎えるかを描くとしたら、やっぱり自分しかいないな、と思ったのです」

異聞帯のアルトリア・ペンドラゴンは、物語のカギを握る「予言の子」として登場します。

そんな第6章を、これからプレイするなら、あるいは改めて見返してみるなら注目してほしい点を、奈須さんはこう話します。

「第6章では、アルトリア・キャスターに注目していただきたいです。元気いっぱいで明るい人物に見えますが、彼女の内面を知った後にもう一度プレイすると、発言の裏側が見えるように書いていますので、その辺りに注目してください」

改めて第2部 第6章を見返してみると、アルトリア・キャスターの発言の裏側が見えるかもしれません。

「第6章では『オズの魔法使い』のようなことをやろうと考えていました。物語の主人公であるドロシーには、臆病なライオン、心臓のないブリキの木こり、賢くなりたいかかしという、3人のお供がいましたが、そういう『オズの魔法使い』の『FGO』版として読んでいただくと、少し読み方が変わるかもしれません」

「妖精國という、人間の世界を模倣して作った仮初めの国ではあるんですが、妖精國の妖精たちのモデルは今の人類で、その辺りを見てもらえると、(妖精たちも)いい方にも悪い方にも流れていく生き物で、美しい部分もある、ということがわかってくると思います。例えば自分の住んでいる国に不満があっても、ふと散歩に出て、公園で遊んでいる親子を見て美しいと思ったりするかもしれません。今の国がどうなっているかとは別に、そこに住んでいる人たち、その営みを無視することはできません。どんなに悪い国でも、そこに暮らす人たちの幸せな日常を否定してはいけないよ、という、そんな気持ちを込めて書いています」

そして第7章では、「FGO」のこれまでの話を総括するものとして、今の人類と異聞帯の人類との違いを描きました。

「人間には限界はないんだよ、間違ってもいいんだよ、人生は“たられば”の連続だけれども、それをネガティブに捉えるのではなくて、力強く受け止め、受け入れて頑張ってきたから今があるんだよ、ということがテーマになっています。それから、ゲームとして面白いことを全部やろうという想いもありました。ものすごく強い敵を前に総力戦に挑み、プレイする人に達成感を持ってほしいと思っていました」

人類の前に立ちはだかる強大な敵、ORT(オルト)との戦いは、これまで育成したサーヴァントでの総力戦です。

第7章について奈須さんは「純粋に魔境探検を楽しんでほしいですね」と笑います。「自分の中には重いテーマもあったのですが、それはさておき、ジュール・ヴェルヌのSF小説のような冒険を楽しんでください。ナウイ・ミクトランという空洞世界の中を、下へ下へと向かっていきます。途中でいろいろ面白い展開があって、ドタバタしながらも、物語のクライマックスへ突き進むという感じです」

第2部 第7章の舞台となるナウイ・ミクトランは、空洞世界の中をたどる冒険です。

リアルタイムで迎えてほしい
第2部 終章

2016年末に開催された、「FGO」第1部の「終章 終局特異点 ソロモン」は、当時プレイヤーが同時期に戦いに参加する形式を取り、一体感と大きな盛り上がりを生み出しました。12月20日の開幕が予告されている第2部の「終章」でも、また同じような盛り上がりを生み出すことを目指していると奈須さんは話します。

第2部 終章は、人生の彩りとして思い出になるくらいのものを目指しています

奈須きのこさん

「2025年の今、改めてプレイヤー同士の一体感を味わっていただきたいと考えています。言ってしまえば、第2部の長いシナリオは、すべてそのための導線です。楽しんだら楽しんだだけ、終章の喜びは大きいと思います。唯一無二の体験になると思いますので、もしまだ奏章Ⅳまで終わっていない方は、この言葉に騙されたと思って、12月までに追いついていただきたいです」

「第2部の結末を見届け、一員としてそこに“携わった”という気持ちを体感していただけると、きっと後日、2025年のラストは頑張ったな、今でも覚えているな、というような思い出になると思います。大げさかもしれませんが、人生の彩りになるくらいのものを目指しています」

第2部の終章では、何が主人公を待ち受けているのでしょうか。10周年を迎えた「FGO」では、第2部の物語の結末へ向けて、ラストスパートに入っています。メインシナリオをまだ終わりまでプレイしていない人は、様々な特典や報酬も用意されていますので、ぜひ終章に備えてプレイを進めてください。