仮想シナリオ考【信長の野望新生PKCE発売記念】
2025年6月、NintendoSwitch 2が発売となる。そのローンチタイトルの一つに「信長の野望 新生withパワーアップキット Complete Edition」がある。コーエーテクモの昨今の歴史ゲームに対するスタンスはあまり好きではなく、もともとコーエー時代からの完全版商法についても否定的な意見である。だが、今回のアップデートの中で目を引くものがあった。シナリオのアップデートである。今回、新たに6シナリオが解禁されるが、そのうちの3つ、実に半分が仮想シナリオだったのだ。そしてその設定がどれも興味深いものだったのである。そこで、過去の信長の野望シリーズの仮想シナリオを交えて、徒然と思うところを語ろうと思う。
信長の野望・天翔記
シリーズ第6作・天翔記のパワーアップキットにおいて初の仮想シナリオ「信玄上洛」が実装された。後に度々リメイクされることになる仮想シナリオだが、三方ヶ原の戦い後に信玄が死亡しなかった場合の仮想シナリオだ。今作ではどのような経路を辿ったのかは不明だが美濃・三河・尾張・近江・山城を抑え巨大勢力と化した武田家と伊勢に追いやられた織田家、遠江で生き残る徳川家という状況。マジでどうやって生き残っているんだ徳川家。正直粗さは残るものの、歴史のロマンを追求した挑戦として面白い。この試みがなければ後のシリーズには続かないのだが、残念ながらこれ以降しばらくこのテイストのシナリオは登場しない。
信長の野望・烈風伝
シリーズ第8作・烈風伝のパワーアップキットにおいて登場したのが「諸王の戦い」である。当時歴史シミュレーションゲームで一時代を築いていたKOEIのオールスターと言わんばかりに各時代からレジェンド君主・武将が集まったKOEI版聖杯戦争である。このメンバーの中に放り込まれる今川氏真家(部下は劉禅とジョン王)、もはやただのいじめである。歴史ロマンというよりもお祭りシナリオである。
信長の野望・嵐世記
シリーズ第9作・嵐世記はシリーズの大きな転換点となり、賛否両論となった。その作品でも前作に続き「諸王の戦い」が実装された。
信長の野望・蒼天録
シリーズ第10作・蒼天録も家臣プレイなど斬新な挑戦(あるいは迷走)が見られた作品である。こちらでは「群雄関ケ原」が実装された。こちらは諸王の戦いと異なり、戦国オールスターと日本史オールスターが混在する。一方で前田家が長尾家に、今川義元が織田家に併合されるなどのツッコミどころ満載の連合軍が結成されている。
信長の野望・天下創世
天下創世において久々に歴史ifな仮想シナリオが復活した。「信玄上洛」、そしてパワーアップキットの「政宗反攻」である。前者は美濃・尾張を領有している、というところまでしか情報が入手できなかった。おそらく現在は新規プレイ不可能なシナリオである。後者は公式HPにも情報が残っていた。北条征伐の隙に諸大名と同盟を結び、豊臣秀吉との敵対を選ぶ伊達政宗、というシナリオである。どうやら徳川家、島津家、上杉家あたりが同調しているらしい…。いや、この時点の徳川家、上杉家が反逆するとは思えない。せめて秀吉が急死するくらいの事件が起きないと。ということで、かなり無理やりなイベントでアラが大きい気がする。さらに調べると「浪人革命」なるシナリオが出てきたが、これは大名の家臣がほぼすべて浪人になっている謎時空であり、歴史ロマンもへったくれもない手抜きシナリオと言えよう。
信長の野望・革新
まず、「群雄集結」は単なる戦国オールスターである。次に「応仁大転封」は応仁の乱の総大将が死の直前に和睦、大転封を行ったというシナリオ。織田家が四国に、九州の大名である島津家や大友家が東北に、四国の雄、長宗我部家が北陸に、武田家が畿内にいる、固定観念を崩したシナリオ。なお、一条家や足利家など位置の変わっていない大名家も存在する。島津家が東北にとか死んでもいかんやろ。というこれも単なるシャッフルしたかったシナリオといえる。「六文銭戦記」は1560年4月の仮想シナリオ。大阪城に真田幸村と愉快な仲間たちが降臨して、小田原城に拠って立つ徳川家を倒そうとする。北条家?三河に飛ばしましたが?という糞シナリオ。せめて大阪の陣くらいの世界線にするとかさぁ。「太閤の恩」は関ヶ原の戦い後、豊臣家に圧力をかけたら旧豊臣だったみんなにそっぽ向かれました(ぴえん)、というシナリオ。宇喜多、長宗我部、九鬼、石田、大谷、織田あたりの領土がまるっと徳川方になっている一方で、加藤、蜂須賀、福島、池田あたりがまるっと豊臣家に合流している上、毛利、上杉、前田、島津は豊臣家と同盟状態。なお黒田、細川は独立状態(細川はともかく黒田ェ)。これもなんか雑。この辺りの時期は個人的に見て歴史ロマン欠乏期だと感じた。
信長の野望・天道
「群雄集結」、「次代を継ぐ者」、「慶長大転封」 、「100万人の信長の野望」というロマンのかけらもない糞シャッフルシナリオが乱立。唯一期待できるのが「上洛の夢」。足利義晴を擁し再上洛した大内氏が中国地方を制圧、一大勢力となった世界線。細川氏、六角氏との京を巡る、そして足利家の家督争いが勃発する。一見良さそうだが、義晴の生年は1511年4月、このシナリオは1511年8月。おおん?なぜこの時期に義輝だの義秋が家督争いに絡むのだ?やっぱりまともじゃなかった。生後間もない義晴を擁して上洛したとしても赤松家は同盟もしくは従属として残すべきだし、細川家はそのまま義稙、六角家は義維を推戴すべきだろう。結局、歴史への理解の薄い開発陣のおもちゃにされているだけだった。天道の発売は2009年。戦国無双3が2009年、真・三國無双6が2011年。個人的にはこの頃からKOEIの歴史へのリスペクトが失われ始めたと感じているが、その見解は悲しくもここでも裏打ちされてしまった。
信長の野望・創造
「群雄集結」、「天下三十将」は言及する価値もない。久しぶりに復活した「信玄上洛」も武田が三河を領有しただけで追加のイベントもなく、完全な手抜き。作品自体は面白かっただけに、残念である。
信長の野望・大志
「群雄集結」「大志繚乱」「戦国百花繚乱」「大志燃ゆ」。どうして同じようなランダム配置で4シナリオも作るのか。手抜きと言われても仕方がない。一方でやや歴史ロマンへかじを切ったと思しきシナリオも存在する。「龍虎血盟」は信玄と謙信が手を組み、信長に対抗するシナリオ。上杉家に対し関東でバチバチの北条家と同時に同盟を維持する離れ業はどうやったのか全く不明な武田家と、能登を制圧しても織田家にあまりプレッシャーを掛けているとは言えない上杉家(浅井・朝倉家は未だ健在である)。完全に「謙信・信玄のドリームタッグが見たい」という歴オタの妄想乙、である。だがそれがいい。「豊臣の逆襲」は大阪冬の陣で豊臣秀頼が出陣、逆転勝利の上、近江を制圧し大名家としての威光が復活。その結果、豊臣恩顧の大名が一斉になびき、前田家、上杉家、伊達家がそれぞれ勢力を拡大。徳川家は水戸、尾張、宗家に加え、各地の譜代大名陣でこれを迎え撃つ。正直終盤すぎるので伸びしろは少なめだが、やっぱり豊臣家ファン、真田幸村と愉快な仲間たちのファンは見てみたいだろう。
信長の野望・新生
そして本作、新生では「群雄繚乱」以外に「天正猿芝居」が仮想シナリオとして登場した。別所、荒木の離反で孤立した羽柴秀吉はここで織田家に反旗を翻す。すると明智光秀もこれに応じて独立。徳川家では織田を見限った信康が家康を隠居に追い込み武田と同盟。一方、御館の乱では上杉景虎が勝利。織田家と同盟を結ぶというなかなかにカオスな状況である。だが、窮地で離反する秀吉、三河のクーデターが成功した信康、家督を継承した景虎という絶妙に有り得そうなシチュエーションは魅力的。パワーアップキットではこれに加えて「天下無事ならず」が追加。北条征伐のさなか急死する豊臣秀吉。跡を継いだ秀次には求心力がなく、多数の大名家が独立してしまう。このタイミングでの急死。暗殺、ですかね…?巨星を失ってもなお強大な豊臣家にどう立ち向かうか。また、汚名返上なるか、殺生関白・秀次、とこちらもロマンがてんこ盛りだ。
信長の野望・新生 with パワーアップキット COMPLETE EDITION
そして最新作ではなんと3つの仮想シナリオ(しかも糞シャッフルなし!)が発表された。「大乱なかりせば」は応仁の乱が発生しない、という大胆すぎる設定のシナリオ。大乱が怒らず80年が経過した日本。細川家が中国地方にも一部食い込み、山名・赤松・大内あたりが大勢力に。京極家、富樫家、土岐家あたりが活躍している様子。一方で織田家、朝倉家は独立しており残念ながら斯波家は没落したらしい。「天文風雲録」は3シナリオの中で一番荒唐無稽。斎藤道三が織田信長に家督を譲ってしまい、それにより織田信勝と斎藤義龍が結託。これにより全国各地で家中対立が…というシナリオ。「天文の乱」を全国規模にしてみた、みたいな感じか。兄弟対立が大量発生する糞シナリオの予感。「威加海内」はみんなのポンコツ・織田信雄が主人公。家康に感化されたのか、ぐっとこらえて尾張からの転封を受諾。そのまま豊臣家の大老格として発言力を持ち続け、秀吉亡き後に遂に再び天下を目指す、というシナリオ。成長した信雄など信雄ではない(極言)のだが、全国の三介ファンが熱望したロマンあふれる織田信雄プレイである。なお織田秀信の岐阜織田家は別に存在する模様。なんでや。youtubeに先行プレイ動画が上がっていたが、徳川家からは不信な一方で豊臣家との外交関係は普通。まぁ親父の元上司の息子でグループの最大手企業の社長だし、頼りにしたい気持ちもわからんでもない。信雄はお前のこと嫌いみたいだけど。他の勢力はわりとそのまんまなので織田信雄専用シナリオといっても過言ではない。後はもう1枚壁が増えた徳川家康シナリオ。
おわりに
事あるごとに述べているが、昨今のコーエーテクモには歴史に対するリスペクトが足りないと思っていた。戦国無双では意味不明なPC選定をするかと思いきや、これまで築き上げたキャラクターを一気にぶち壊し、なおかつ感情移入もできないストーリーを作り上げシリーズを終焉に向かわせ、信長の野望ではIPを切り売りし安易なソシャゲ化。気骨のある作品よりもコラボやキャラ人気に媚びる作品が多くなっていた。
そんな流れが変わりつつあるように見える。もはや新作はないと思われた『太閤立志伝V』に追加要素を加えた移植(これは過去のIPの切り売りという見方もできるが)、戦国無双の反省を踏まえた再構築『真・三國無双ORIGIN』、そして本作である。まだまだ気骨のあるスタッフが残っている、ということなのだろうか。
個人的な仮想シナリオ希望を最後にダラダラと書き殴って終わりたい。
「越奥騒乱」1565年7月
婚姻政策により南奥州に一大勢力を築いた伊達稙宗。彼は長男・晴宗の反対を押し切り、上杉定実の養子に三男・実元を送り込み同盟関係となった。しかし、晴宗の不満は募っていった。そして1565年、稙宗の死去に伴い家督を継いだ晴宗はこれまでの縁戚関係を無視して大崎・葛西らを攻撃。これに反発した留守氏・最上氏などは上杉実元と結び、晴宗と対立。兄との不和を憂う実元の傍らには義将・長尾景虎の姿があった…。
「義信謀反」1565年10月
今川義元の死後、駿河への侵攻を企てた信玄。今川義元の娘を妻に持つ義信はこれに反対し、両者の関係は一触即発であった。父・信玄が自身を幽閉しようとしていると察した義信は機先を制し信玄を襲撃、殺害。家督を継承した。これに対し勝頼が反発、織田家と同盟を結び、高遠城を拠点に独立。甲斐・信濃は再び混乱に落ちていく。
「奇妙躍動」1570年5月
越前の朝倉義景を征伐するべく出陣した織田・徳川連合軍であったが盟友・浅井長政の裏切りに遭い、絶体絶命の危機に陥る。脱出を試みた信長であったが、朽木越えの最中、兇弾に斃れる。悲報に接した木下秀吉は金ヶ崎城を包囲され、朝倉家に降伏した。一方、織田家の家督を継承したのはわずか13歳の信忠。父の仇を討つため、若き当主が乱世に立つ。
「信玄上洛」1573年1月
足利義昭からの命を受け上洛を開始した武田信玄。三方ヶ原の戦いで家康を打ち破った信玄だったが、野田城攻めでその進軍が鈍る。「信玄、病死。」その報に接した織田・徳川軍は逆転攻勢を図るがこれは信玄の張り巡らせた罠であった。三河を失陥した徳川家は武田信玄に従属。一方三河に加え美濃を制圧した武田軍はこれを機に信長の息の根を止めるべく、歩みを進めようとしていた。
やはり前半シナリオが中心で後半にロマンを感じられない…。関ヶ原はifシナリオあるしね。



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