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子どもは臓器か?母と息子の物語が崩れるとき ──女というテンプレートの呪縛

Kくんが泣いた朝

Kくんは、今朝も泣いた。

プログラミング教室で、スクラッチの「リスト」がうまく動かず、大泣きしてしまった。過去にも、検定模試で間違えるたびに怒り、パニックになり、最後まで受けきれなかったことがある。

私の教室には、「完璧主義」などという概念は存在しない。

やりたくなければ、やらなくていい。 次にいけばいい。

寝ていてもかまわない。 教科書を無視してもかまわない。

規律ある自由と、主体性だけがここにある。

だからこそ、彼の「完璧であろうとする苦しさ」は、明らかに彼の家庭環境、特に母親からの影響だと感じられた。

完璧な母親

彼の母親はモデル体型の美人であり、よくSNSにヨガやピラティスのような動画を上げている印象がある。 恐らく、彼女は都会に出て孤独に子育てをしてきた地方出身の母親だ。

一人っ子であるKくんは、非常に気が利く。 トイレの戸を閉めたり、他人への配慮が行き届いている。

完璧な母親の教育が、細部にまで染み込んでいるようだった。

父親は有名学校出身で、コンピューターにも明るいが身体が弱く、病院に通っている。

一見、健康的な母親と病弱な父親というアンバランスな構図もまた、家庭内に見えないテンションを生んでいるように思う。

完璧な息子

さらにKくんは水泳を習っている。 水泳は「進級」というゴールが明確に設計されており、頑張れば次の級へと進める。 そこに自由意思はない。 「通えば、進める」。

だがプログラミングには明確な答えはない。 私は80%の時間、なにも教えない。 質問されたときだけ、答える。

それがこの教室のあり方だ。

だがKくんは、エラーに遭遇するたび、感情的に爆発し、話も聞けなくなる。干渉しても受け取れない。泣いて、怒って、拒絶する。

そこに私は、現代の子どもたちが背負っている“完璧であろうとする呪い”を見た。

母というテンプレートの呪縛

この問題は、Kくん一人の話ではない。 これは、「母」というテンプレートに閉じ込められた、無数の女性たちの話だ。

私の経験では、現代の母親たちは、もはや“母性”として子どもを育てていない。

SNSの中で構築された「理想的な母親像」をなぞり、 その理想を子どもに投影し、 正解通りに育てようとしている。

だが、それは“共感”ではなく“操作”だ。

そして、この構造の背景には、女性という生き方そのものが、 あるテンプレートに組み込まれてしまったという現実がある。

女性のテンプレート化された人生

  1. 10代後半〜20代:性を商売にする(風俗、ガールズバー、キャバクラ、ラウンジなど)

  2. 30代前半〜中盤:結婚する or しない、子どもを持つ or 持たない

  3. 30代後半:母親とはこうあるべき論、子育て論

  4. 40代後半〜:教育とはこうあるべき論

このテンプレートがすでに社会の標準となっている。

キラキラを“なかったことにする”リセット構造

女性は、ある年齢で「別の人格」に生まれ変わるように設計されている。

  • ギャルだった過去を消して、「ママ」になる。

  • 恋愛体質だった自分を消して、「教育ママ」になる。

  • 自分自身の物語を、世間に合わせて書き換える。

この構造は、戦後の日本の姿にも似ている。

かつて「天皇は神」と信じていた国民が、 戦後、今度はアメリカを崇拝するようになった。

“それまでの価値観を、強制的に捨てさせられる”という点で、同じなのだ。

二重人格としての“女性性”

だからこそ、多くの女性の中には“二重人格”が生まれる。

  • 表面上は、教育熱心な「正しい母」。

  • だが内面には、20代に築き上げた“自己演出の達人”が今も棲んでいる。

その乖離が、加齢への恐怖と、SNSでの演出強化に繋がっていく。

「もう若くない」 「でもまだ、承認されたい」 「私には、子どもという証明がある」

こうして、“子どもを使って自己承認を得る”という歪んだループが始まる。

SNSと「あるべき論」

30代以降、女性たちは「あるべき論」へと突入する。

  • 結婚するべき

  • 子どもを持つべき

  • オーガニックな教育がいい

  • 中学受験をさせるべき

この“べき論”の背景には、SNSがある。

インフルエンサーと自分の違いに絶望しながらも、 なんとか「正解」に近づこうとする。

だがその努力は、“自由な選択”ではなく“同調の強制”だ。

これが、女性たちの無意識の消耗と孤独を生み出している。

その疲弊が、子どもへの「教育」に向かう。

完璧に、優秀に、社会的に有利に。

それが「母」というテンプレートの呪縛である。

「若さ」を売った代償は、その後で支払うことになる。

このテンプレートの最大の歪みは、 「若さ」でもっとも経済的な自由を得てしまうことだ。

本来、年齢を重ねるごとにスキルや収入が上がっていくのが自然だ。

だが多くの女性は、10代〜20代で最大値を経験し、 それ以降は我慢の連続になる。

  • 配偶者の選択も我慢

  • 子ども中心の生活も我慢

  • 自由な生き方を諦める我慢

そのテンプレートに疑問を持たず、むしろ誇りを持っている。

それが最終的に、“子どもの成功 = 自分の成功”となり、 子どもに過剰な期待を投影してしまう。

そして、40代をすぎると、若さの賞味期限は切れ、すると、今度は子どもに自己を映し出そうとする。

子どもは、自分の“再生装置”になっていないか?

特に息子を持つ母親たちに多いのは、 子どもを“内なる臓器”のように捉えているという感覚だ。

  • 子どもは、自分の体の一部。

  • 子どもは、自分がコントロールできる存在。

  • 子どもは、自分の失った若さや夢の回収装置。

若いころに「男を利用して得た経済的優位性」を体験している女性ほど、 自分の息子にも、同じ“男の役割”を求めるようになる。

息子を守るふりをしながら、搾取する母性。

それが、子どもからの断絶を生み出し、 やがて“母の物語”を崩壊させるのだ。

これは私自身の実体験でもある。
私の母は、私を“自分の夢の延長線”として生きようとした。
そして今、私は静かに、それを手放しはじめている。

過去の輝きを生きた代償は、未来の自我の重荷となる。

誰もが加害者ではなく、全員が被害者

だからこそ、私はこの構造を責めるのではなく、 「理解」の対象として描きたい。

母というテンプレートに従うしかなかった母親たち。

そのテンプレートから、誰も逃れる術を持たず、 ただ“正しさ”を信じて、孤独に戦っている母親たち。

Kくんの涙は、そうした母親たちの悲鳴かもしれない。

そして私たちがいま問うべきは、 **本当にそのテンプレートのままでいいのか?**ということだ。

それを問い直すことこそが、教育の再起動であり、 母というテンプレートの呪縛からの脱出なのだ。

Kくんに戻ろう

子どもは初期に、2タイプに分かれる。

  1. 母親の言うことを聞く子(性善説型)

  2. 母親の言うことを聞かない子(性悪説型)

Kくんは、1に該当する。 そのため、彼の母親は「いい子に育っている」と満足しているはずだ。

だが、これから来るのはそのカウンターだ。

Kくんは思春期あたりで、自分が母親の物語の中で生きていたことに気づく。 そして、静かに母を避けるようになり、やがて距離を置くようになる。

そのとき、もっとも影響を受けるのは、子どもではなく母親のほうだ。

彼女にとって、すでに性は賞味期限をすぎ、 子どもへの自己反映だけが“未来”だった。

その子どもからの断裂は、彼女のアイデンティティを根底から揺るがす。

母は、かつて男に裏切られた。
そして今度は、息子に裏切られる。
だが本当は、自分自身の“物語”に裏切られているのだ。

Kくんの涙は、母親の悲鳴であり、 その物語の終わりを予告する“はじまりのサイン”なのかもしれない。


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