欧米の政財界の有力者を巻き込み、世界に衝撃を与えた性的スキャンダル「エプスタイン事件」。この事件の未公開資料、通称「エプスタイン・ファイル」を巡る問題が、米トランプ政権を揺るがす騒動に発展している。
資産家のジェフリー・エプスタイン元被告(2019年に逮捕・起訴され、同年66歳で死亡)が、未成年の少女達に金銭を払い、性行為の相手をさせていたとして、児童買春で起訴されたこの事件。そもそも、一体何があったのか? 在米ライターの堂本かおる氏が寄稿した。(全4回の2回目/続きを読む)
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「エプスタイン事件」のカギを握る4人の人物。#1で取り上げたジェフリー・エプスタインに続く2人目は、彼の恋人・ギレーヌ・マクスウェルだ。
■ ギレーヌ・マクスウェル(Ghislaine Maxwell)
ギレーヌ・マクスウェルはジェフリー・エプスタインの恋人と呼ばれ、公の場にはカップルとして登場していた。だが、背後ではエプスタインのために少女たちをリクルート、グルーミングし、エプスタイン以外の男たちのもとにも送り出し、さらにはマクスウェル自身もエプスタインとともに少女に性加害を加えていた。
エプスタインが2度目の逮捕の直後に自殺した、その翌年の2020年にマクスウェルも逮捕され、未成年者誘拐、児童性的人身売買を含む6つの連邦犯罪で起訴された。有罪となり、今は性犯罪者として懲役20年の刑を受け、刑務所に収監されている。
「14~15歳」「若いほどいい」好みの少女を見つけては声をかけて
のちに被害を訴え出た、今は成人となっている元少女たちによると、マクスウェルはフロリダやニューヨークでエプスタインの好みの少女を見つけては声を掛け、エプスタインの邸宅に連れ込み、裸でのマッサージから始めて性交を行わせていた。さらに少女たちにエプスタインの前でどう振る舞うかコーチし、他の少女を見つけて連れてくるよう指示もしていた。その際、「14~15歳」「若いほどいい」と注文を付けていた。
マクスウェルに声をかけられた少女たちは、イギリス訛りの教養ある英語を話し、洗練された立ち居振る舞いのマクスウェルを疑うどころか、姉のようにすら感じたと言う。また、少女たちの多くは恵まれない家庭に育っており、エプスタインが支払う現金にも抗えなかった。ある被害者は、物理的に拘束されているわけでもないのにエプスタインの元を去らなかった理由を「目に見えない鎖」と説明した。