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CTO・VPoEのキャリア〜エンジニアから創業者・経営者・CTOの役割を担うまで〜 株式会社ナレッジワークCTO川中真耶氏 

CTOのキャリアでは様々な企業のCTOにインタビューを行います。
どのようなバックグラウンドがあり現在CTOとして活躍しているのか、CTOとして何に向き合っているのか、過去のキャリアから現在の仕事まで深くインタビューをします。
今回は営業やエンジニア組織向けのイネーブルメント事業を行う、株式会社ナレッジワーク CTOの川中真耶氏にインタビューを行いました。
ぜひご覧ください。

ナレッジワーク社のCTOに至るまでのキャリアについて

StartupTechLive(以下STL):早速ですが川中さんの今までのキャリアについて教えてください。

ナレッジワーク CTO 川中真耶氏(以下川中):大学院を修了し、日本IBM東京基礎研究所に研究者として入社しました。4年弱ぐらい研究者として働いた後、事業会社を一社挟んでGoogleで8年間過ごしました。GoogleではソフトウェアエンジニアとしてChrome browserの開発に関わりました。
ナレッジワークのCTOになってからは3年ぐらいですね。

実はナレッジワークのCTOになる前に一人で起業をしようとしています。2020年のはじめの頃ですね。「できなかった人ができるようにしたい」というテーマで会社を立ち上げようとしていました。登記までした頃、すぐに知人の紹介でCEOの麻野さんと出会いました。

はじめは自分の起業した会社でナレッジワークの業務を一部請け負う形で関わることも考えていたのですが、色々と話をしていく中で実現したい未来や組織のあり方に共感することが多く一緒にやっていくことでより良い未来が描けるのではないかと思いました。またフルコミットしなければ高い成果は出せないと思い、共同創業者・CTOとしてナレッジワークを立ち上げることに決めました。

Why this company?

STL:CEOの麻野さんと共感した部分が多かったとありましたが、具体的にどのようなところで意気投合し共同創業として一緒に事業を立ち上げようと思ったのでしょうか?

川中:私は元々エンジニアなのでエンジニアを対象にしようと考えていました。特に上級レベルのエンジニアが足りないという思いから、中級レベルのエンジニアを上級レベルにするための事業を何か立ち上げたいと思っていました。
そう思っている中で麻野さんに出会って色々と話しをしていく中で、対象者がエンジニアではなくセールスだけど、実現したいことは一緒だと思いました。

あとは、作りたいと思っている会社(組織)の方向が一緒でしたね。自分の考えていることがここまで合うことって珍しかったので、それなら一緒にやってもずれないよね、と思ったことが大きな理由ですね。

STL:CEO麻野さんの世界観や目指したい会社の話を聞いて、川中さんの中で気づき(ここまで合うことが珍しいと思った)があったと思うのですが具体的にはどのようなことでしたか?

川中:一番は言っていることとやっていることが合致している、嘘をつかない、「fairness」みたいな言葉が一番近いと思いますね。会社は経営者のためにあるのではなく、みんなで良くしていこうという思考があって、そこが自分としては求めていたところでしたね。

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同社CEOの麻野氏とエンジニアの三宅氏とのQuarterキックオフ時の様子

STL:なるほど。結構珍しいと思ったのが、例えば課題があってそこの課題に共感して一緒に解こうぜ!というのはよく聞くのですが、こういった会社(組織)をつくっていくという方向に共感されたんですね。

川中:そうですね。正直外側が合う(社会課題を解こうとする)人は結構いるなと思っています。そこが合うのは前提の上で内側(会社や組織)まで合うというのが稀有な経験でしたね。

二人で話をしたときに、こういった事業をやりたい。とか、こういった組織を作りたい。と話をしたのですが、言うことが二人とも一緒なんですよね。違う言葉だけど、言っていることは同じという感じだったのでお互いに珍しいと思いました。

今の価値観を生み出している原体験とは?

STL:今、川中さんが考えていることや、強く思うことは何かしらの原体験から生まれていると思うのですが、何か過去の経験上できっかけとなることってありましたか?

川中:昔から自分ができるよりも人にできてほしいという思いはありました。高校生ぐらいのときから思っています。自分だけできてもあまり意味がないんです。同じレベルで話せる相手もいなくなるし。

中学からの古い友人がいるんですが、中学から同じ高校にいって、一緒に東大に進学しました。二人でお互いにレベルアップしてきた感覚があって、どっちかが欠けていたらどちらも東大には受かっていなかったと思います。
相手の成長があって自分も成長したし、相手もそうなのではないかと思っています。

お互いにできることへの喜びを感じたことがわかりやすい原体験かもしれませんね。
ナレッジワークでも私たちは「できる喜び」をお互いに届けあえる機会が毎日訪れる社会の実現に貢献します。と発信しており、原体験が繋がっていると思います。

CTOになる前と後でどのような仕事の違いがありますか?

川中:CTOの前は、誰かが考えていることをやることが仕事でした。CTOは自分で考えないといけないということが一番違うと思います。

私は自分のパラメーター(スキル)の振り方は総合力重視で、なんでも比較的幅広くやれるような振り方をしています。Googleのような一定規模以上の会社だと何か一点非常に強いほうが評価されやすいようには感じていました。仕事はまあやれるんですが持っている能力を使いきれてない感じがありました。
今はCTOとして色々なことを総合してやっていますが、能力としては今のほうが合っているなと感じますね。

STL:マインドとしては何か変化がありましたか?

川中:Googleのときは自分で目標を決めてやりきるのですが、チームメンバーの誰かができなかったとしても自分が責任を負うことはそんなになかったです。もちろんできてほしい、達成してほしいと思いますが、できなかったとしてもそれはそのチームメンバーの責任だと思っていました。
今はメンバーができなければCTOの責任であると考えています。
なのでメンバー一人ひとりの能力を上げていきチーム(会社)としてできるようにならないといけないということですね。

STL:CTOになった後に苦労した経験や乗り越えた壁はありますか?

川中:正直大きな苦労はあまりなくて、今のほうが自分の力を発揮しやすい感覚があります。
強いて言えば、CTOになる前は自分の成果のみが評価されるので、自分が前にでていかないといけませんでした。

しかしCTOになると組織として高いパフォーマンスを発揮するために、できる人に任せていく、できる人を増やすために育成する必要があるのでここは難しいところでした。
例えば、私はどちらかというとバックエンド側のほうが強くフロントエンド側はそこまで詳しいわけではないですが、フロントエンドに強いメンバーの力をさらに引き出さないといけないので想像力が結構必要だなと思いますね。

STL:CTOという役割は2つあると思っていて、1つはいわゆるTech組織のTopであること、もう1つは経営メンバー(創業者)であること。
Tech組織のTopという役割だと先程の話のようなことだと思いますが、経営者そしてCTOとして意識していることはありますか?

川中:市場環境や物事の変化があっても動じないために、Tech側を整えておくことですね。例えば、1年後に競合が攻めてきても大丈夫なように基盤を整備しておくとかですね。
あとは採用や組織づくり(リソースの張り方)に力を入れています。
スタートアップ特有の難しさだと思うのですが、CTO自身が一番技術力に優れているケースがほとんどだと思います。短期的な開発と数年後を見据えたときの技術戦略を考えることを同時にやらないといけないですね。

私も最初1年ぐらいはプレイヤーに振っていました。2年半経ってようやく自分が開発しなくても大丈夫な体制になりつつあります。もちろん開発することはゼロではないですが、機能1つ1つを開発するところからは可能な限り抜け、全体の方向性を決める基盤作りの方に力を入れています。
数年後を見据えたプロダクトの絵を描いて、そこの基盤づくり等未来に向けたプロダクト開発部分を担っています。

STL:今までは自分が腕をまくり最前線で引っ張ってきて、ここからはスケールするためにリソースアロケーションを考える、まさにファウンディングCTOから1→10のCTOへの変化を経験されているんですね。
その変化は大変ですね。自分で手を動かしたほうが早いときもありますよね。

川中:そうですね(笑)ただそこは練習と呼んでわざと自分が抜けてみんなにやってもらいました。
自分がコードを書いているときから意識的にTechLeadっぽいことをメンバーに任せてきました。例えば設計はすぐにできるものではないのですが、あえて任せてみる。そのうちのいくつかは失敗します。後で直せなそうな失敗は可能な限り事前に摘み取るのですが、後で直せそうなものはそのままにしておくこともありました。

半年〜1年後を見据えて設計しないとうまくいかないということを体感し、学んでもらいました。こういったことを半年くらい続けると結構できるようになってきます。
創業して2年ぐらいからみんなでやってもらい半年間最後の助走期間を経て今はかなり抜けられるようになりました。

もちろん、任せられる良いエンジニアに入ってもらえたということは大きいです。採用のときに意識していることですが、他社でTechLeadを経験していた方でも自分の経験を言語化できない方は採用していません。きちんと説明ができ理解できている方を採用しています。
そうしなければ人にやり方を伝えることができないからです。

STL:コードを書かなくなった時間はどんなことに時間をつかっていますか?

川中:正直いうとコードは自分がいまだに一番書いているぐらいです。
ですのでそれにプラスしてなのですが、去年後半は採用にかなりの時間を使っていました。
そこで良い方に入ってもらうことができたので今は育成に一番時間を使っています。あとは難易度の高いプロダクト開発に向き合うことと、数年後を見据えたときのロードマップ作成や、将来を見据えたときに課題となるであろう部分を洗い出しています。

育成においてはマネージャーレイヤーとの1on1や、全体育成の両軸で行っています。ただマネージャーレイヤーのメンバーは他でマネジメントの経験があるメンバーなので心得的なところは教える必要があまりありません。前の会社とナレッジワークの違いさえすり合わせれば問題ないと思っています。
一応自分が作ってきたチームづくりの考えは伝承しますが、そのまま引き継いでもらうもよし、自分流に作ってもらうもよしと任せています。

今後2−3年で時間の使い方はまた変わると思います。育成の時間は減っていき、代わりに今までとは全然違うようなところへ時間を使っていくと思います。例えば、今までの延長線にない機能開発やエンジニアイネーブルメントの活動に時間を使う等、すぐに成果がでるところではなく中長期を見据えて投資のようなところに時間を使っていくと思います。

CEOとのコミュニケーションは?

STL:今でも変わらずCEO麻野さんとコミュニケーションはとっていますか?

川中:創業時から変わらないですね。毎週の1on1と、週に数時間ある経営会議です。実は1on1の時間が一番経営議論をしているかもしれません。経営会議だと会議体も決まっていますし、意思決定をしないといけないですが、1on1は特にアジェンダがないからこそより深い経営議論ができる時間だと思っています。
半分くらいは組織(メンバー)の話をして、あとは事業やプロダクトの話をしています。

Biz側として力をいれていきたい部分を聞いて、であればエンジニアリング観点ではここらへんに注力しておこう。エンジニア側的にこの技術使ってみたいという話をして、であればBiz側にこういったインパクトありそうだよね。みたいな短期中期的な話。数年後育成した組織を考えるとこういったリソースの張り方がいいのではないか?といった長期的な話まで色々と話をしていますね。

事業戦略のような意思決定はプロダクトオーナー的なロールも担う麻野さんが行い、それに伴うプロダクトの進化をエンジニアの世界に翻訳するのが私の役割ですね。
麻野さんの中にも私の中にもこういったものを作りたいというのがありますが、すぐにはできません。そのために準備をしないといけないし、きちんとメンバーに背景を伝えて納得してもらい開発してもらいます。
だからこそエンジニアが理解できるように翻訳するのが大事だと思っています。

STL:①CEO⇔CTOの間で長期的な未来を見据えて密にコミュニケーションを取る ②それをエンジニアの世界の言葉に翻訳してメンバーに伝達する ③その未来を実現するためにどういった開発投資をすべきなのか、この3つがきちんと密接しているからこそ事業とテクノロジーがうまく連携できているんですね。
川中さんの中でCTOを担う上で他に大事だと思うことはありますか?

川中:未来を予想しておくということは大事だと思います。
予見する力とか根拠が乏しい中で正解をあてる能力を私はエスパーと呼んでいるんですが(笑)、わりとそのエスパーが当たるという評判があります。
根拠のないことでも予見して言葉に出しています。事業でもテクノロジーのことでも割と当たってきていますね。

私は経営側の知見については時間をかけてインプットをしたわけではないですが、昔から色々予想はしていました。このプロダクトはこう成長するのではないか?といったように勝手に予想して数年後に答え合わせをするようなことをしていました。
よくわからないけど考えてみる、予想してみるというのはとても大事だと思います。CTOだけではなくマネージャー以上になると数年後の組織を考えて意思決定しないといけないので予想することが重要です。

私がマネージャーに対してできることは問いを立てることぐらいですが、そもそも考えようともしていなかったということが多いのでまず考えてみるということが第一歩だと思います。



ー編集後記ー
CEO⇔CTOの密なコミュニケーションがあるからこそ事業とテクノロジーの連携がうまくいっていると感じるインタビューでした。
また一番時間を使っていることが、人や組織(採用・育成)に関することであり会社としてのビジョン・ミッションがサービスだけではなく、会社の中にも現れていると感じました。
今回はCTO川中さんのみのインタビューでしたが、CEO麻野さんとCTO川中さん、お互いがお互いをリスペクトしていることがすごく伝わってきました。もしかするとこれがナレッジワーク社の大きな強みなのかもしれません。

ナレッジワーク社にご興味のある方はこちらをご覧ください。


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